算数少人数指導は要らない
小学校の算数では、
一つの学級を習熟度別の二つのクラスに分けたり、二つの学級を三つに分けたりして指導する、少人数指導というものを採用している。
それは算数が、教科の中でもつまづきが多く、学習の積み重ねができないと、その後の習熟に大きな影響を与えるからだ。
算数の得意な子どもは計算などの技能面だけでなく原理原則などを考えるなどの発展的な学習に取り組み、
算数の苦手な子は、前段の学習に遡って確認しながら学習したり、技能面のみに焦点を絞って指導したりする。
クラスごとに教え方や目標とする到達点を変えるなどの工夫をして、子どもたちの充実した学習を担保する仕組みである。
しかし、現状の算数少人数指導は形骸化している。
なぜなら、教員も管理職も教育委員会も『算数少人数指導を行なっている』という外形さえ整っていれば、その内情は一切気にしないからだ。
日本では2000年代の前半から徐々に始まり、すでに20年近く続けているの算数少人数指導であるが、ハッキリ言って20年かけた進化の片鱗も少人数指導による特別な効果も実感したことはない。
むしろ単元ごとにレディネステストを実施したり、子ども同士の相性も考えてクラス編成したりする手間の方が気になる。
習熟度別に教室を分けているだけで、多くの場合、教える内容や教え方について教員間で相談することもなく、その点は各教室の先生に任されているので、蓋を開けてみたらどの教室でも同じことをやっているなどということは良くあること。
他にも、得意な子たちのクラスは教科書の内容が終わったら、後はただプリントをこなすだけのつまらない時間だったり、
苦手な子たちのクラスは、教員が一人ひとりに時間を取られてしまって授業がなかなか進まなかったりと、教員たちは疑いももたずに、なんだかよく分からないことをしている。
さらに問題なのは、算数少人数を担当する専科の先生が配置されているのだが、この者が算数に特化した人材でもなんでもないということだ。
小学校で言えば、ほとんどの場合、産休が近い教員や、産休に入った教員の代替の教員。または、学級担任をさせるには力不足の教員など、通常の子どもへの指導すらままならないような教員が担当している。
昨今の教員不足により、学級担任に欠員が出た場合、真っ先に算数少人数担当の教員が学級担任に当てられ、算数少人数指導は消滅する。
しかし、算数少人数指導が消滅しても、嘆く教員も子どももいない。
あってもなくてもどうでもいいからである。
タブレット端末が配られ、個別に課題を出すことができるようになった今、このようなあってもなくても誰も困らない仕組みが必要なのだろうか?
疑問である。