きっと最後は「ローカル」に救われる
正直、長らく「もうテレビなんて観ないしなあ」と思っていた。
一人暮らしの頃はテレビすら持っていなかった。地デジ云々って言われたって、それに対応するテレビを買う余力が無かった。テレビを持っていないと説明しているのに、N〇Kの契約の人にしつこくされたのもおっかなかった。私の携帯はワンセグもついていない機種だったから、どうやったって契約する必要性が無かったのに。
でも、ひょんなことから自分がテレビ埼玉のCMに出演してみて、私はただ「おもしろいテレビ番組」を知らなかっただけなのではないか—そんな風に感じるようになった。
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確かに、いわゆるキー局については今でもほとんど観ない。
(ちなみにキー局というのは、日本テレビ放送網・テレビ朝日・TBSテレビ・テレビ東京・フジテレビジョンのことを指しているんだとか。)
それでは何を観ているかと言えば、お察しの通りテレビ埼玉ことテレ玉だ。
自分たちがテレ玉のCMに出演させていただいているゆえ、そのCM見たさにテレ玉垂れ流し状態な我が家だけれども、
そのおかげで観るようになった番組のひとつが、埼玉の風景を流している5分番組(彩の国百科)だ。
埼玉って、案外デカい。ちなみにこの ↓ 曲で知ったのだが「市の数日本一!」だそうだ。
埼玉の、知らない景色を眺めているだけでもなんとなく心が落ち着く。
「まだ知らない場所がいくらでもあるんだな、」という感慨深さは、私が生まれ育った北海道で、たとえば水曜どうでしょうのカントリーサインの旅を観ていた時に抱いた感覚に近い。
同じ県内(道内)にすら、自分の見知らぬ土地がある。
その事実は、目の前の状況に嘆息させられてばかりの自分に「ほんの少し向こう側に、まだ知らない世界が広がっている」と、視野を広げるきっかけを与えてくれたのだ。
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さて、おもしろい記事を見つけた。
以前に「北海道のテレビ局と埼玉のテレビ局についての違い」について書いたことがあるが、
要するに北海道のHTBはテレ朝の「系列地方局」で、テレビ埼玉は「独立局」、ということなのだろう—おそらく、たぶん。
この「独立局」という立ち位置のテレビ局が、上記の読売オンラインの記事曰く「意外と元気がいい」らしい。
確かに、我々のような(客観的には)ようわからんメタルバンドにCMの仕事を与えてくれるのだもの、テレ玉は「意外と元気がいい」に違いが無い。
ちなみにテレ玉のWikipediaにもこんな記載がある。
2006年にチャンネル名を「テレ玉」としてからは、自局CMを放送するようになり、滑稽な作品が多い。
…滑稽な作品、って(Wikipediaを編集した誰かに)言われてる!!!…我々のCMとて間違いなくその一つにカウントされるだろう、と、出演した自分とてそう感じている。
ところで、先程の読売オンラインの記事を総括すると「独立局の番組の面白さに、地元の視聴者が気づいている」ということになると思うのだけれど、私も実際にTwitterで「テレ玉」というワードでエゴサーチしていたりするので(…CM見て反応してくれた人がいないかな、と思って…)、いわゆる「地元視聴者」がテレ玉の番組にどんな反応を寄せているかは、それなりに理解しているつもりだ。
最近だとテレ玉で「涼宮ハルヒの憂鬱」の放送が始まった。
言わずもがなだとは思うけれど、新作アニメでは無い。
(…あ、「再」と「最」、誤変換してたのいま気づいた…。)
このテレ玉での「涼宮ハルヒの憂鬱」の放送開始、エゴサするとかなりの人数の反応が見られた。それも、好意的というか喜びの声が多かった。地元の視聴者層から求められているものを、テレ玉の中の人がちゃんと把握しているのだな、という感想を抱いても、誤りではないはずだ。
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そういえばこんなニュースもあったのだけれど、ご存じだろうか。
「脱テレビCM、そして減(新聞の)折り込み広告でも、(ネット上の)デジタル広告だったり(Youtubeの)動画広告で売れ行きが好調だよ!」…という、埼玉企業なしまむらのニュースである。
埼玉企業なんで「あっぱれ!」と言っておきたい反面、「でも埼玉って、十万石まんじゅうのCMが県民の脳内に巣食っている土地なんだけどな、」とも思わされる。
このCM、北海道の人にしか伝わらない表現で申し訳ないのだけれど、道産子にとっての「千秋庵の山親爺」とか「木の城たいせつ」のCMと同じくらい、県民にはおなじみのローカルCMなのだ。
独立局で流すローカルCMほど「脳内に残る」CMは無い気がする。
それは、故郷を離れてだいぶ経つのに、未だに「山親爺」をついつい歌ってしまう私が既に立証している。
だからしまむらとて、(縁起でもないけれど)今後苦境に立たされることがあったとしたら、埼玉県内でのローカルCMの放送という手段を検討してみて欲しい、そう思うのだ。だって埼玉企業だもの、結局は県民に支持されてなんぼのはずだ。
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独立局を見ている人は存外に多い—そのことを、この御時勢になって実感している人がいる。だからこそ、先述の読売オンラインみたいな記事が書かれるのだろう。
これだけテレビ離れが叫ばれる昨今、それでもテレビという媒体はきっと、独立局の底力によってこれからも生き残っていくのだろう。
キー局が何やらやらかして「すわ、放送免許停止?」とも心配されていたけれど、もしもそうなったとして、独立局がキー局みたいな立ち位置になったら—それはそれで面白いかも知れない、なんて意地悪を思ってみたりする。
(実際にはキー局が独立局の株主になったりもしているっぽいので、場合によっちゃあ共倒れの危機になっちゃうのやもですが。)
さて、私のこの記事を読んで「ちょっと地元の独立局の放送でも見てみるか、」と思って貰えたら嬉しい。
CMの件でマジでテレ玉さんにお世話になったので、もうしばらくは、頼まれてもいないのにテレ玉の回し者かってくらいにテレ玉を押していくであろう私だけれど(しつこくてごめんなさい…)、最後にこれだけは伝えておきたい。
いわゆるテレビマンの態度の悪さなんかは、よくネット上で語られているけれど、少なくとも独立局で働く人たちはすごく腰が低いと思う。そして、めちゃくちゃ親切だと思う。
もちろんこの感想は私の主観でしか無いけれど、Abema TVもどうやらそんな感じで親切だと噂に聞いたので、やっぱり「テレビ」というでかい括りだけで彼らを判断すべきでは無いのだろう。
今更だけれど、独立局は地元視聴者と作り手の距離感が近い。
CMの打ち合わせ時、担当ディレクターさんがこう言っていたのをよく覚えている。
「我々は、地域密着ですから!」
—ローカルだけれど自分の知らないこと、それがまだ、足元にたくさん転がっているのだ。
(…この曲が聴きたくなりますね。うふふ。)