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Photo by
morikoharu
アオバトは翔んでいく
「心霊スポットだ自殺の名所だと言われてるけど、ここは綺麗な場所だよ。そんな言葉で汚されてるのが不憫な海岸だ。」
北海道に住んでいても、この広大な土地の総てを行き尽くす事はなかなか叶わない―そう、ずっと思っていた。
婚前旅行に私達は、彼が学生時代を過ごしたという小樽に来ていた。オタモイ海岸は断崖絶壁と呼ぶに相応しい景色と言えど、眼下に広がる海の深い瑠璃色は、思わず私から言葉を失わせた。
今は、アオバトという渡り鳥がこの辺りを離れていく時期らしい。彼はアオバトを探して、双眼鏡を覗いている。
アオバトは、次の土地へ向かわんと、弥立つ事を繰り返す。強いな、と思う。一方この私は、転勤族の彼に付いてその都度知らない土地で暮らしていく事に、不安を感じるのだ。
でも、この婚前旅行で改めて思った―やっぱり彼が好きだ、と。
私も強くなろう。新たな土地に、羽を、心をふるわす勇気を持とう。
彼となら私は、どこへでも行けるはず。
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