TEDxHamamatsuに参加して思ったこと

 浜松で開催されたTEDxHamamatsuにスピーカーの一人として参加してきました。脳出血の後遺症で右半身麻痺が残りテルミン演奏に難儀していますが、ろれつ障がいも私を悩ませていました。

 TEDxは自分の専門や考えていることについて観覧者を前に発表するプレゼンテーションのイベント。2015年にも当時のTEDxの運営担当の方が来られ、私の登壇を希望されていましたが、ロシアでのコンサートツアーがあり、ちょうど時期が重なっていたため見送りました。あれから時は流れて2022年、再び登壇の機会が巡ってきました。今回は、脳卒中後遺症で右半身に麻痺が残り、加えて、ろれつ障がいがあって演奏もおしゃべりもかつてのようにはできません。その状況の中でやるのは相当な心理的負担になり、果たして自分に務まるかと迷いがあって、心は逡巡しました。

 率直にいうと、脳出血を患ってから認知機能にも問題があり、特に物忘れが酷くなった。TEDxのイベントにおいてスピーカーの皆さんは、カンペやプロンプターといった記憶を補助するものに頼らず、話す内容もすべて記憶しています。それを思うと気が遠くなってきました。今回は大事なコンサートも12月に控えていて、演奏の練習も遅れそう。やめておけば良いものを、自分にとっての大きな挑戦であることに惹かれ、引き受けてしまいました。

 これまでTED(もしくは”TEDx”)には何人かテルミン奏者の人が登壇しお話しされているのを知っていましたが、彼等とは違う観点で喋ろうと当初から考えていました。テルミンの「珍」や、私の業績について語るのでなく、私を魅了してやまない正直なインターフェース性、身体性について、私の考えを聞いてもらおうと考えました。

 スピーカーチームの方々としゃべる内容や話し方について練っていきます。毎週のように拙宅を訪れ、話す内容やスピーチの練習に付き合ってくれます。前日がリハーサルでしたが、不安と緊張の圧力の中、話すべき内容が頭の中でフリーズして、混沌に沈んでいきます。いきなり躓いて、第一声から何もでなかったらどうしようと、不安は尽きません。
 登壇ぎりぎりまで台詞を覚えようと努めます。会場の雰囲気にのまれるなど、予期できないことに見舞われる恐れもありましたが、意を決し、登壇しました。途中思いがけないところに「つまづきの石」があって、台詞の一部が出てきませんでしたが、なんとかやりおおせました。

 今年(2022年)の年明けの、利き手の役割を入れ替えてのテルミン演奏の取り組みから始まった私の「再生計画」。武者修行ライブやTEDxでの登壇を経て、12月のコンサートで総仕上げです。

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