憧れはどこへいった?

 敬愛する作家で写真家、編集者の都築響一さんと数年前にお会いし、事務所にもお越しいただきました。たった一人で30数年かけ、夢の宮殿を造りあげたフランス人郵便配達夫シュバルのポートレートを壁に掲げていましたが、そのことに気づき、指摘してくれたのは後にも先にも都築さん唯一人でした。
 その都築さんがゲスト出演されているYouTube動画で「ファッションは死んだか?」といったテーマで語り合っていますが、私も常々そう考えていて大変興味深いのでリンクを張っておきます。
https://youtu.be/qQ1RQw8kr74

 イタリアに11年住んでいたモデレータのHACHIYAさんがおっしゃっていましたが、毎日がおしゃれのコンペティションだと。お互いの着こなしの静かな競争が繰り広げられますが、ベースにあるのは美への憧れ。
 翻って現代日本はどうかといえば、ファッションは卓越化、差別化にこだわり過ぎるがあまり奇抜さばかりを追い求め、「ダサいのがおしゃれ」というねじれに行き着いてしまった。「おしゃれを求めること自体がかっこ悪い」を意識し過ぎて、悪趣味を纏うようになった。加えて言えば、人を見下せることが「憧れ」を押し出して、ど真ん中に居座っている。おしゃれとは程遠い、いびつな状況に陥ってしましました。これも2021年の日本の時代性なのでしょう。

 先述したHACHIYAさんと都築さんの対談では、ファッションの行方について4回シリーズで語り合っています。私はファッションの専門家ではありませんが、音楽とは隣接していてとても興味があります。ファッションや美術や音楽の行く先はどうなるんでしょうか? 
 私は「おしゃれはほどほどに」が自論です。ダサいも若さの特権で、その逸脱が愛おしいとすら思っています。本来塩梅の妙であるはずの風流がおかしな方向にねじ曲げられ、資本主義のものさしまで幅をきかせられるようになって、おしゃれも否定できる人がファッションの操縦桿を握っています。
 シャネルもイヴ・サン・ローランも、アレキサンダー・マックイーンも、あの世からファッションの現状をどう見ているか、訊いてみたいです。


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