橋川文三『歴史と体験 近代日本精神史覚書』についてのメモ⑤—「怒り」をどのように捉えるか?
橋川文三は『歴史と体験 近代日本精神史覚書』(春秋社、1964年)に収録されている「失われた怒り―神風連のことなど」で「怒り」を検討することについて興味深い見解を述べている。以下にその部分を引用してみたい。
ここで橋川は「怒り」を人びとの個体性と社会性が発現するものと考えている。以下の記事で紹介したように、橋川は「個体」と「普遍」がどのように結び付けられるかを考えており、自分の体験を個体を超えて続いていく「歴史」に結びつけ、その結び付きが適切であるかどうかを常に反省する意識である「歴史意識」の必要性を述べている。橋川は「怒り」を「個体」と「普遍性」を結び付ける「歴史意識」を生み出す契機であると考えていたため、「怒り」に注目していたと推測される。
橋川は日本浪漫派、黄禍論、1930年代の青年将校の思想などあまり取り上げられなかったテーマを検討したと言われているが、これらの個別のテーマを「歴史意識」の形成を検討する事例としても関心を持っていたのではないだろうか。
よろしければサポートをよろしくお願いいたします。サポートは、研究や調査を進める際に必要な資料、書籍、論文の購入費用にさせていただきます。