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趣味人・伊藤喜久男が発行した『旅の趣味会会報』について

 以下の記事で趣味人・伊藤喜久男が発行していた『旅の趣味』という雑誌を紹介したが、この雑誌とは別に『旅の趣味会会報』という謄写版の雑誌も発行されていた。以前から『旅の趣味会会報』のことを知っていたが、まとまって所蔵されている図書館や研究機関がほとんどない(CiNii Booksで検索すると、関西学院大学に28~84号が所蔵されている。)ので目にする機会がなかった。結構前に79号の1冊だけ確認することができたので、以下に書誌情報を紹介していきたい。

印刷:昭和15年6月25日
発行:昭和15年7月1日
編集兼発行者:伊藤喜久男 
発行所:旅の趣味会
頁数:10頁

第328回行事 吉田東斎作絵馬頒布会
第329回行事 趣味の語の会
第330回行事 世界的切手蒐集家仏国総領事ガロア氏訪問の会
第331回行事 初夏の江戸川河口
第332回行事 大磯へ海水浴
※以上は今後の行事予定と思われる。
行事経過報告 西澤笛畝氏人形玩具研究所訪問、累の遺蹟をたづねて、お家族連で苺狩、鯨を食ふ会、大霧山ハイキング、廣瀬栄弥蒐集展覧会
會告
一、暑中見舞広告を募る
一、「会費切」の会員に懇願
加山道之助(可山)病気見舞
新刊紹介 藤浪和子『東京掃苔録』
出版だより
趣味品交換会 ※もともと山口愛次郎が主宰していた集まりを伊藤が引き継いだ。
品川蒐印行脚(2) 閑々亭主人
勢を争ふ 後藤圭司
一丁ロンドン 無記名
銀座の地質 無記名
旅信 岡村玉城 町田君代
多摩奥地に名墓を探る 森潤三郎
山だより 松本生

興味深いのは森鴎外の弟で書誌学、近世学芸史を研究していた森潤三郎がお墓巡りについての文章を投稿している点である。森は東京市内から多摩に移設されたいくつかのお墓を確認することが目的であったようだ。以下の記事で紹介したように、伊藤の編集した「東京蒐集家番附」に森が載っているが、旅の趣味会とも関りがあったようにも思われる。上記の記事で紹介した『旅の趣味』第1輯には旅の趣味会の会員名簿が掲載されているが、森の名前は載っていなかった。この文章を投稿した時点で森は旅の趣味会の会員であったのだろうか。

 ところで、この雑誌が発行された昭和15年はアメリカとの戦争が始まる1年前だが、上記に引用した目次からは戦争の影は感じられないのが逆におそろしく感じられる。


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