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ある蒐集家と有島武郎

 『有島武郎全集』第十~十二巻(筑摩書房, 1982年)には、有島武郎の日記が収録されており、有島の考えや交流を知る上で重要なものである。先日、第十二巻に収録されている「ポケット日記1918年」に、ある蒐集家と会っていたことが書かれていた。以下に引用してみたい。

(一九一八年)八日(金)やや晴。正倉院へ行き、そこで水木要太郎、新納忠之介、それに森鴎外に会う。どの遺物も大いに関心をそそられる。(後略)

ここで注目したいのは水木要太郎である。水木要太郎は、古瓦、中世・近世文書、絵画、文人の手紙など蒐集しており、その蒐集は子孫にも引き継がれ膨大なコレクションを形成している。(注1)何度か拙noteでも紹介した『昭和前期蒐書家リスト』によると、要太郎は集古会の会員でもあったという。その蒐集を引き継いだ要太郎の子供である水木直箭(なおや)は民俗学の研究者であり、柳田国男と深い交流があり柳田の著作目録も作成していた。個人的には、地方でも有数の蒐集家であった要太郎と有島に接点があったことが意外であった。

(注1)以下を参考にした。


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