『熊野趣味研究』の編集方針について―郷土趣味と蒐集趣味の関係性
以下の記事で『熊野趣味研究』という雑誌を紹介したが、この雑誌の編集方針は編集者の上中宗太郎によって以下のように述べられている。第1巻第3号(大正15年11月)の「本誌の立場」という文章からの引用である。
上中は郷土趣味と切手や絵葉書の蒐集趣味は広い意味で同じ「蒐集趣味」であるので、同じ雑誌に載せていると述べている。第1巻第3号の正式な雑誌名が『蒐集趣味及郷土趣味の研究雑誌:熊野趣味研究』であるのも上中の上記の編集方針を反映させているのであろう。蒐集趣味と郷土趣味が本質的には同じであるという上中の理解は、当時の「蒐集趣味」がどのように考えられていたかという一例として興味深い。
参考までに第1巻第3号の書誌情報も以下に記載しておきたい。
雑誌名:蒐集趣味及郷土趣味の研究雑誌 熊野趣味研究
大きさ:約24.4cm×約14.5cm、洋装本、活版印刷 ※大きさは、私が閲覧した雑誌は合本になっていたので、第1巻第1号と同様と推測した。
印刷:大正15年11月5日
発行:大正15年11月10日
編集兼発行人:上中宗太郎 和歌山県田辺町北新町
印刷所:自治会印刷所
発行所:熊野趣味研究会
頁数:37頁
論壇 蒐集目的とその興味(一) 蒐楽
蒐集 趣味家に御相談 宕陽
海底の天才蒐集家 木下聖地路
蒐集挿話(一) 蒐楽
整理 足袋票の分類法(一) 蒐楽
研究 逓信省発行記念絵葉書私考(一) 島田謳考
新切手漫評 谷梅丘
紀念日附印使用局臨時出張所に就て 朝紅生
日本蒐集趣味品物起番付
偶感録(一) 一、蒐集趣味界の輪廻 蒐楽
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「誌友通信」では九十九豊勝からの便りが紹介されている。九十九も『熊野趣味研究』を購読していたようである。
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