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【舞台感想】怪盗紳士現る!/ミュージカル・ピカレスク「LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~」博多座公演

博多座にてミュージカル・ピカレスク「LUPIN~カリオストロ伯爵夫人の秘密~」の1月22日初日と24日マチネ、そして28日千穐楽を見てきました。


豪華なキャストとスタッフによるライトなエンタメ

華やかな出演者+小池修一郎×ドーヴ・アチアによる新作ミュージカル、果たしてどのような作品になるのかと思いましたが、豪華な演者とスタッフによる遊び心満載のライトなエンタメというかんじの作品でした。
名場面やあっという仕掛けがあるという訳ではなく、演者のパフォーマンスを愉しむ趣向で面白かったです。
「純潔」連呼とか女性参政権運動の描写などは感覚が古い気がしてどう受け止めたらよいのか戸惑うところもありました。

私は古川雄大さん目当てで見に行ったのですが、私が見たかった古川君とはちょっと違ったかな。ミステリアスなゴシック・ロマンス的な雰囲気を期待していたのです。ご本人はとても楽しそうに演じられていて、だんだんと見ている私も愉しくなりました。
ほかの演者の皆さんも楽しそうで、これはそういうところを面白がって見る作品なんだなと思いました。

真彩希帆さんのクラリス最高

劇中でいちばんツボだったのは、真彩希帆さん演じるクラリスです。
3階から躊躇なく飛び降りたり、自分をめぐって美男2人が戦うのを目を皿のようにして見物してたり、特段活躍したわけでもないのに「財宝は君のものだ」と言われたら遠慮なく受け取っているのも、挙動のいちいちがツボにはまってしまって、クラリスいいわぁと思いました。
なにより彼女には未来に目的があるのがいいなと思いました。夢を叶えるにはお金が必要なのです。
ロマンスを夢見たりもするけれど恋愛依存ではなくて、自ら責任のあるポジションに就いて自分の人生を歩んでいるのが凄く好きでした。
原作とはちがってこのクラリスなら長生きしそう!きっと幸せになりそう!と見ていて楽しくなりました。
どのみちルパンはアバンチュール(冒険)をやめられないのだから、クラリスも自分がやりたいことに夢中になるのがいいよねと。
真彩希帆さんの明るい個性が活きている役でした。もちろん歌は抜群。

柚希礼音さんと真風涼帆さんのカリオストロ伯爵夫人

カリオストロ伯爵夫人ことジョジーヌ役は柚希礼音さんと真風涼帆さんのWキャスト。
柚希ジョジーヌは博多座公演は初日の1回のみの出演でチケットが手に入るかドキドキでしたが、幸運なことに見ることができました。
スワローテールを翻してルパンと踊ったり、ドレス姿でルパンにタンゴを教えたりするミステリアスな悪女で、華と存在感が半端ないちえさん(柚希さん)にピッタリの役だなぁと思いました。柚希ジョジーヌを見終わった後は、同じ役を真風さんが演じるのが想像ができないなぁと思ったのですが、真風さんは真風さんでまったくタイプの異なる色香の漂う魅惑的なジョジーヌでした。
柚希ジョジーヌはモーションが大胆でどこにいても目を惹くセレブリティなかんじで、真風ジョジーヌはどの角度から見てもエレガントなマダムな雰囲気がありました。
なにより2人ともとても大部屋俳優には見えません。ゆえによくも化けおったなぁと思いました。才能ありすぎ笑。

立石俊樹さんのボーマニャン

「世界をこの手に」と歌ういかにも小池作品の悪役らしいボーマニャンは博多座では立石俊樹さんがシングルで演じていました。
キャスト発表の時にいちばん驚いたのがこのボーマニャン役のお2人(もう1人は黒羽麻璃央さん)でした。ルパンよりずっと年上なイメージがあるボーマニャンに若手俳優さんがキャスティングされていたので。
ですが舞台を見ていたらすでにルパンは怪盗紳士として世間に名を馳せている設定だったので(20歳そこそこの若造ではない)合点がいきました。
小池作品らしく、古川ルパンの美しき敵役がボーマニャンという設定なんだなと。
立石俊樹さんは去年の「エリザベート」のナルシスティックに悩めるルドルフ役がお似合いの役者さんという認識だったので、ボーマニャン役で躊躇のない悪役を活き活きと演じられていてさいしょはびっくりしました。
さらにどこから湧いて出たのか怪しい手下たち(黒鷲団)を率いて「俺はルシファー 神に見放された・・」と歌いだしたときは、どどどうした?!と頭がついていきませんでした。いきなりそんなあなた。いったい過去に何があったのかと彼の過去が気になりすぎて初見はその後のストーリーを見失いかけました。
全編を通してかなりクラリスに執着はあるのだけど、でもそれは恋とか愛情とかではなさそうで、ではなぜ?と私なりに考えた結論としては、自分が大好きゆえにクラリスが自分を選ばない現状が受け入れられないのではと。そのクラリスが選んだ相手であるがゆえにルパンに対する敵対心も強烈なのかなとも思いました。自分をないがしろにするルパン(認知のゆがみ)を叩きのめさないと生きていられないのかなと。
エギュイーユ・クルーズでの古川ルパンとの決闘シーンはとてもカッコよくて見入ってしまいました。うん、絶対にあるべきシーンだなとしみじみ思いました。古川雄大さんと立石俊樹さんがキャスティングされている意味をしっかりと回収していたなと。
ボーマニャンが行動してくれなかったらクラリスの愛よりアバンチュール(財宝発見と伯爵夫人の誘惑)に奔った挙句にまんまとしてやられて無様を晒すところだったルパン。歪で華やかな敵役として、主人公の面目を保つ役割を果たしたボーマニャンは最後まで良い仕事をしていたと思います。

加藤清史郎さんのイジドールと小西遼生さんのホームズ

イジドール・ボードルレ役の加藤清史郎さん、非の打ち所がない良い役者さんでびっくりでした。
歌も良いし間も良いしセリフも明瞭だしすばしっこい身のこなしも・・ホームズ役の小西遼生さんとガニマール警部役の勝矢さんとの連係プレーもいつも面白くて信頼を寄せて見ることができる役者さんに出遭ったなぁと脳内メモリに記録しました。
小西遼生さん演じるシャーロック・ホームズは、ルパンシリーズに出てくるホームズ(ショルメ)よりかはドイルの原作に近い気がします。ベーカー街221Bのワトソンに電報を打っていたりしてましたしコカイン常用など本家のホームズに通じる符号が。自分を出し抜く悪女に惹かれるところも本家ホームズっぽいかなぁと思いました。
でもおマヌケなかんじは本家とは別物で、いつのまにかイジドール君とコンビとなっていて面白かったです。ルパンを永遠のライバルと見做して自らの女装についてもルパンとのクオリティの差を検証しているところとかも小西さんがいい味を付けていてくすりとさせられました。
クラリスとルパンの愛の抱擁を阻む自分勝手な決闘宣言も、クラリスといっしょに『え?』となりました笑。でもたしかに見たいルパン対ホームズ笑。本家ではボクシングにフェンシングの名手で日本武術にも通じているし、ルパンもボクシングと日本武術の使い手ですしね。
ルパンが主役だから勝利はルパンのはずと見ていたら、いいかんじに投げ飛ばされて・・大団円への布石、古に張られた仕掛けを回収という超重要な役割を果たすんですね。毎回ちゃんとあの位置に飛ばされるの凄いなぁと感心しました。

古川雄大さんのアルセーヌ・ルパン

古川雄大さんのルパン、登場は腰の曲がった考古学者のマシバン博士で声もおじいさん、デティーグ男爵家の夜会ではアメリカ帰りの実業家ヴァルメラで若干声が高めなキザ男、アジトでの本名のラウール・ダンドレジーの時はピュアな青年のよう、赤毛の新聞記者のエミールは腕まくりのあまり冴えない風貌で、カンカンダンサーのアネットの時は声もうんと高くてしぐさも可愛い女の子になりきり、そして伯爵夫人の誘惑をためらいもなく受け入れるアルセーヌ・ルパンといくつもの顔を見せていました。
母親のアンリエットのような清廉な令嬢タイプを前にした時だけ、クラリスが感じた少年のような純粋な人格が顔を出すのかも。とはいえアルセーヌ・ルパンの人格でいる時間の方が長いし、それ以外のさまざまな人格にも変貌してしまうし、ラウールでいる時間はほんのつかの間のような・・。
このルパンとクラリスが今後もおつきあいするなら、そのつかの間を愛して、それ以外の時は自分がやりたいことに夢中になっていたほうがクラリスらしくいられるよ、とおせっかいなことを思いました。
ルパンもきっとそんなクラリスが好きだよねと。アバンチュール(冒険)は絶対にやめられそうにないから。
クラリスもルパンの女装にすこぶる協力的だったり(彼が歌えないキーを舞台裏で歌ってあげてるし)、面白いことには前のめりですよね笑。ルパンの冒険譚も面白がって聞いていそう。悲劇が似合わない2人でとても素敵だなと思いました。

その他キャストと千穐楽カーテンコール

そういえば、フレンチカンカンの場面、女性参政権運動のご婦人方とフレンチカンカンのメンバーを合わせると女性キャストの人数が足りなくない??と不思議に思っていたところ、カンカンに男性キャストも混じってる??と気づいたのですが、女性参政権運動のご婦人方にも男性キャストが混じっていたんですね。いやちょっとそんな気配は感じていたのですが・・汗。
カッコイイ黒鷲団にも女性がいて、皆さんなんでもできて素敵だなと思いました。
そして20世紀騎士団は良いお声の持ち主にしかボーマニャンさんの入団許可がおりないのかなと。秘密のお話のはずなのに皆さん声が通り過ぎ・・笑。

千穐楽のカーテンコールでは最初から客席スタオベで、挨拶が長くなることを見越して古川君が着席を促したら、その横でぺたんと舞台上に座ってニコニコ古川君を見上げていた真彩希帆さんと小西遼生さんが可愛かったです笑。こんなお茶目ができる雰囲気のカンパニーなんだなぁと思いました。
そして千穐楽の1月28日はクラリスのパパ、デティーグ男爵役の宮川浩さんのお誕生日で還暦を迎えられたそうで、カーテンコールでは舞台と客席の皆でバースデーソングを歌いました。
宮川さんが帝劇の舞台に初めて立ったのが36年前、古川君が生まれた年だそうです。今年生まれた子が帝劇の舞台に立つまで自分も舞台に立ち続けると古川君が決意表明をされていました。
そんな古川君曰く『エモい』お話の流れから急に話しを振られた立石君、宮川さんへの思いをしっかりとお話されてて古川君的には苦笑だったようでした。(突然だから辞退されると予想されていたようです)
古川君のツッコミもよくわかってないようで場を『かっさらって』いた立石君、さすがだなぁと微笑ましかったです。舞台ではあんなに闇落ちしているボーマニャンを演じていた彼の素の雰囲気、そして宮川さんへの思いを知れて個人的には嬉しかったです。
こんなに和気あいあいとしたカンパニーで何か月も過ごして来られたのだなぁと思いました。

博多座の後は公演最終地で古川君の故郷でもある長野での公演が控えています。
公演日程発表時には長野公演に行く計画も立てたのですが、あれよと言う間に完売で諦めました。(真冬の公演でなければもっと真剣に計画したのに・・と思っていましたが長野公演千穐楽の配信が発表されて良かったです)
佳き大千穐楽を迎えられますように。

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