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コップの水を半分だけと見るか、半分もと見るか

認知次第

アレン・カーによる書籍『禁酒セラピー』とか『禁煙セラピー』を読むだけで、どうして高い確率で依存性のあるお酒とかタバコを容易にやめることかできるのか?

自分自身も以前にタバコを吸っていた
時期があり、友人からも、「俺はタバコをやめるといって実際にやめられた知り合いを知らない。だからお前も必ずやめることはできないだろう」と断定されたものだが、書籍を読むことで、実際に過去にやめることができたのである。
それも思いのほかにすんなりと。

「しかし、なぜすんなりとやめることができたのか?」

書籍を読んだ後になぜかもうタバコは必要ないかなと思うようになるから不思議であった。
補助的に書籍を読むのと並行して、少し前から禁煙パッチを使っていたこと、直前に住む場所や職場が変わるという環境的な変化はあったが、やめることができた直接的な要因は書籍による影響か多分に大きいと思う。

ここ最近まで、その理由が腹落ちせずにいて、でもやめられたのだから、深掘りしなくてもいいたろうと思い、そのまま月日が流れていたわけである。

でも、最近になって、ようやくそのメカニズムがなんとなく見えてきたのである。
やめた後も無意識に頭のどこかで理由を解明したかったのだと思う。
ある本を読んだ時に、つながる瞬間を感じ取ったのである。
セレンディピティみたいな感じである。
アルキメデスがずっと考えていた事案についての解決策となる発見へと至る洞察を得たときに、歓喜のあまりに叫んだとされる「ユーレカ」的なものである。

思い込みは時に薬にも毒にもなる

そのある本とは、『習慣が10割』(吉井雅之/すばる舎)というタイトルのものである。

この本によると、習慣には種類があり、以下の4つの習慣の連続によって構成されているという。

受信習慣(どうインプットするか)
五感からの情報を知る、聞く、感じる、見る

言語習慣(どう言語化するか)
インプットから得たイメージを言語に置き換える

思考習慣(どう考えるか)
言語をもとに考える

行動習慣(どう行動するか)
思考を行動に移す

このうちの思考習慣の中には、「確信習慣」(確信できるか、できないか)、「錯覚習慣」(良い思い込みか、悪い思い込みか)の2つが含まれているという。

わたしは、アレン・カーのメソッドの特徴はこの思考習慣の中の「錯覚習慣」へのアプローチへの秀逸さにあると考察するのである。

書籍『禁煙セラピー』や『禁酒セラピー』を読んでみると、一貫して、文章の所々でやめるのは「簡単だ、簡単だ、簡単だ」と、繰り返して表現しているのが特徴である。
タバコを吸うことやお酒を飲むことの害を統計的な数値やエビデンスレベルで示すのではなく、とにかくやめることは「簡単」であることを強調している。
途中から、これは洗脳の類なのかなと思うほどである。

わたしたちは、物心つく前から、タバコやお酒に実際に触れる前から、これらの害とそれらが及ぼす依存性の魔力的な力について、情報の刷り込みがなされており、やめるのは困難を極めるというのが一般常識としてある。

タバコは一度吸ったらやめられない、お酒も閾値を超えたら、飲まずにはいられなくなる。
こんな思い込みを小さな頃から疑わずに持っている。
それなので、いざやめようと決意すると、やめることがストレッサーとなり、自分で禁煙や禁酒の成功のハードルを凄まじく高い所に設定してしまい、結果として失敗してしまう。

しかし、アレン・カーはそれを「簡単だ、簡単だ、簡単だ」と繰り返すことにより、思い込みの刷り込みのメッキを剥がし、簡単だという良い思い込みに変換させる手法がすさまじく秀逸なのである。

ヒトは「やめる」とか「してはいけない」、「やらなければならない」などという禁止や抑え込み、強制に関しては、反対の感情を抱きやすい。
アレン・カーはそういったネガティブな感情を抱くのではなく、「やらなくていい」、「むしろしないほうがいい」という感情に変換することで、それが行動をも変化させるということをわかっていたのだろう。

タバコもお酒も自分に禁止すると、それに抵抗する自分と戦うことになり、それは高い確率で負ける運命にあるので、禁止しないことが成功の秘訣なのである。

プラセボ効果

わたしは書籍『禁煙セラピー』と『禁酒セラピー』を用いて、枠にはまった思い込みに気づき、そして、その思い込みを新しく上書きすることで、喫煙も飲酒も自分の人生においては別段、優先順位が高くないんだ、特にあってもなくてもいいちっぽけな存在なんだと格下げすることができたが、分析すると、結局は習慣の力によるものが大きいのである。

つまりは習慣形成という〝行動デザイン〟は使い方によってはとてもなく可能性を秘めたものなのである。

医療分野で、プラセボという本物の薬と見分けがつかないが有効成分が入っていないものを用いて治験をしたりするが、そこから心理学的にプラセボ効果という、思い込みとか暗示でヒトがいかに容易に判断されうるかというものがある。

要はひとつの対象をどう見るかということは自分を俯瞰的に見る「メタ認知」力を養うことによって、コントロール可能となると推測される。
自分の思考のクセがわかれば、それを自覚することで、行動を変えることが可能である。
そのメカニズムを理解することで、習慣形成が容易となるわけである。
これは〝最強の教養〟となるのではないだろうか?


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