大動脈解離と共に生きる episode5
諸法無我
生死を彷徨う事約1週間
私はようやく意識が回復した
回診してくれる先生とお話をする中で
私は
「生きている」
と実感できた
自然と涙がポロポロと溢れ出た
手術後、声が殆ど出ない状態だったが
「ありがとう」
という言葉だけが自然と心から溢れてくる。
そして、この想いを病院の皆さん、家族、
今までお世話になった方々に伝えたいと強く思った。
先生からは、
「生かされた命で、
世の中の役に立つ生き方をして下さいね」
と解釈できるような言葉を頂いた。
その言葉は私の胸に深く響いた。
仏教には「諸法無我」という言葉がある。
あらゆる存在は自己独立的に存在するのではなく、諸法によって成り立っているという考え方である。（これはスピリチュアルな話ではなく、むしろ真逆でロジカルな感覚に近い）
私の中でお医者さんの言葉と
この「諸法無我」がビビッと結びついた。
まさに、
この命は私の力で存在しているのではなく、
たくさんの人たちの支えによって
「生かされている命」
なのだと強く感じたのだ。
この気づきは、私が「生かされた命」を通じて、
この世の道理をはっきりと体感した瞬間でもあった。
人間が生死の狭間に立たされたとき、
自分で築き上げてきたと思っていた事は何の役にも立たず、あっけなく崩れ去るものだと私は感じた。つまり、わかったつもりでいるだけで、実は何にもわかっちゃいない。私という人間は、知ったかぶりで、ちっぽけな存在だと知らされた。
私は恥ずかしながら、
今まで生きてきてはじめて
「ありがとう」＝「有り難い」
の真の意味が理解できたのかもしれない。
この命をいただいた意味を胸に刻み、
人生をかけて、この命を全うしていきたいと思う。
episode6につづく
The Mayflowers
里山 理
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