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「パラサイト」とBTSの快挙の後に「梨泰院」と「不時着」! 20年代最初の半年のKカルチャーの奇跡的なケミストリー
どうも。
2020年代もはじまって、今日で5ヶ月が終わりますね。半年まであと1ヶ月あるわけなんですが、6月がどんな月になろうと、こと、世界のエンターテイメントにおいて、結局、これが一番すごかったという事実が変わることはないでしょう。
もちろん、コレです!
やっぱり、韓国カルチャーの世界での大席巻ですよね。いやあ〜、まさか、こんなことが立て続けに起こるとは、夢にも思わなかったですよ。これ、仮に、アメリカ以外の国の英語圏の国、それがイギリスでもカナダでもオーストラリアでもいいんですけど、そういう国がこれを成し遂げたとしても、かなりすごいことだったと思うのに、非英語圏の、しかもアジアの国がこれを成し遂げたんだから!
だってですよ
「パラサイト」が英語じゃない映画ではじめてオスカーの作品賞を受賞した、というのだけで、もう十分快挙なわけじゃないですか。
それだけじゃなくですよ。
BTSのアルバム「Map Of The Soul 7」が世界5大マーケット、アメリカ、日本、イギリス、ドイツ、フランスで同時に1位獲得という、歴代でも7アーティストしか成し遂げていない大記録を樹立したんですよね。僕、このときは驚いて、このブログに記事、3本くらいあげましたもんね。
これだけでも十分すごいわけじゃないですか。そこに加えてですよ
「Kカルチャーのお家芸」とでも言うべきドラマで「梨泰院クラス」と「愛の不時着」が、このコロナの外出自粛期間中に大ヒットしたわけでしょ!?なんか日本だと、ネットフリックスのトップ5に、この2本と「キング」の3本がずっとトップ5を占めてたというじゃないですか。僕の住んでるブラジルでは「キング」がすごく話題みたいなんですけど、いずれにしてもすごいことじゃないですか。
いやあ、1国のカルチャーが、「映画、音楽、ドラマ」で、こうも一度に国際的なセンセーションを巻き起こした例、本当に僕は知らないですね。
でも、この2020年前半の、ここまでのKカルチャーの世界的な爆発って、これ、よくよく考えて見るに
起こるべくして起こったのかもなあ・・・
と、ここ最近、思うようになってきました。今日は、そのあたりの「流れ」について書きたいと思います。
①誰がオスカーを受賞しても、おかしくない状態にあった
今年のオスカーですけど、たまたまポン・ジュノが受賞しましたけど、なにも韓国映画は彼だけが抜きん出いるわけではありません。「オールドボーイ」や「お嬢さん」のパク・チャヌクだっているし、「ペパーミント・キャンディ」「オアシス」「バーニング」のイ・チャンドンもいる。このあたりの実力の伯仲ぶりは、2010年代にオスカーの監督賞をいずれも受賞した「イニャリトゥ、デルトロ、キュアロン」のメキシコのスリー・アミーゴスに勝るとも劣らない実力だとさえ思います。それはもう、彼らのこのところの国際映画賞での活躍でも明らかです。また、彼ら以降でも、もう逸材がゴロゴロしているでしょうからね。そう考えたら、「言葉以外の実力的な部分で、韓国映画がオスカー作品賞受賞してもおかしくない立場にあった」。これは間違いないことだと思います。
②BTSでハイパーに、人気も実力も加速化したKポップ
それから、やっぱりBTSですよね。これ以前にももちろんKポップ、注目もされていたし、地域によってはものすごく人気もあったけど、やっぱりBTSって、これまでよりも1枚も2枚も上手だったというか。ラップの実力がこれまでと段違いに違ってほとんどアイドルに聞こえない上に、ヴォーカル、ダンスともにトップ・レベルなわけでしょ。彼らの登場で、これまでにリーチできなかった地域での人気が可能になりましたからね。
また、ナムジュン(RM)が英語が堪能なので、ファンとコミュニケーション図れるのも非常に大きかったですね。彼以降、後続のKアイドルたちが続々と英語対策、やるようになってますからね。今のところ進出に成功しているブラックピンク、モンスタX、NCT127、みんなそうですからね。あとKコンもあったりするから、ファンとの国際的なつながりも強くなってますしね。
と、流れて来ての、「梨泰院」と「不時着」のヒットだったわけですが、これまた流れがバッチリだったことが、いろいろ調べてみて、わかりました!
僕もそうだったんですけど、これまでKドラマって、「韓流」とかって言われてたわけじゃないですか。僕もそうだし、今回、この2つのドラマにハマった人僕の知人が共通して言ってるんですけど、「昔の韓流の、冬のソナタに代表されるジジババが好きなイメージは嫌いだった」って言うんですよね。その人達の趣味も、普段はインディ・ロックとか聞いてて、日本公開前のハリウッド映画の情報に詳しかったりするようなタイプの人ですよ。でも、今回、ハマってる人にそういう人が多いんですよ、実際!
では、なんでそれが変わったのか。そこはKドラマのインフラ改革がそこに存在したからです!
③韓国のドラマ界に、ケーブルTV勢がさんかし、戦国時代になっていた!
これが大きかったんですね。
韓国本国でも、2000年代までは、本当に「冬ソナ」じゃないですけど、ドラマの視聴者の年齢層って高かったんですってね。ただ、それでも、韓国のテレビはその時代までは放送局の数も少なかったから、競争もそんなに刺激されてもなかった。基本、日本で言うNHKみたいな公営放送のKBSと、ある時期まで唯一の民放だった文化放送(MBC)。それから軍事政権終了後の90年代にできたソウル放送(SBS)。この3つしかなかった。だから、その時代は、この3局のうちの何かがヒットすれば、「平均視聴率40%も夢じゃない番組もたくさんあった」んですね。
ただ、そんな時代はもう、終わりました。今では視聴率、20%も行けば超人気番組だし、10%台でも立派な大ヒットなんですが、それを変えたのが
JTBCとTVNという、この2つのケーブル局の存在なんですね。
わかりやすく言うと、「梨泰院」がJTBCで、「不時着」がTVNです。もっというと、もう、ここ数年
視聴率も、評判も、今はこの2局が老舗から奪っている状態です。
この2つがもう、2010年代のはじめから、老舗3局を凌駕し始めていたみたいですね。JTBCはドラマに特化したものではなく、ニュースにもスポーツにも力を入れてる、普通の民放と変わらないシステムの局なんですが、母体に新聞がついててでかいんですね。で、しかも、サムスンも噛んでいるとのことで。
一方のTVNは、この国の最大規模のエンタメ企業CJグループの立ち上げたケーブルで、こちらはエンタメに特化して、ドラマにも力を入れてたところです。
ここからは、やや推測も込みなんですが、上の映画と音楽の流れと、絶妙に合致するんですよね。
④ドラマにも、ハリウッド的な技術を導入
これは「梨泰院」「不時着」のどちらを見たときも思ったことなんですけど
これ、テレビの技術じゃないだろ、普通!
と、驚くこと、しきりでしたね。
それを強く感じたのが、まずは音響効果ですね。音楽のクオリティも高いし、それ以上に「ドルビー・サウンド?」ってくらい、劇中の効果音の質が高いんですよ。あと、アクション・シーンの細かな動きとか、カー・チェイスのレベル。これ、「ハリウッド?」って思いたくなるものなんですよね。
で、脚本のクオリティもすごく高い。出演者のバックグラウンド掘り下げが絶妙だし、時代的に「進んでいる」と思える男性像、女性像のヴィジョンもすごくはっきりしているし。
日本でも、ブラジルでも、ローカルなドラマは見てきてますけど、テレビドラマにここまで金がかかっているの見たことないし、話の内容も、エミー賞にノミネートされるアメリカの優秀なドラマ並に優れてます。出演者の演技もうまいしね。
こういうところに僕は、韓国の現在の映像業界の基礎値の圧倒的な高さを感じざるを得ません。今、韓国って、映画の技術系を志望する人を、ハリウッドに国費留学させているという話が実際にあるんですが、「そういう技術が、ドラマにも応用されてるだろ」とハッキリ思える場面がいくつもありますからね。
それから
⑤視聴者層の若年化と、より効果的な国際展開
これも大きかったんだと思います。
これは世界的な現象でもあるんですけど、有料チャンネルの方が、どうしても若年層がターゲットにできやすいんですよね。なぜなら、民放だと、規約上、性や暴力の表現がどうしてもきついから。ましてや、これまで「視聴年齢層が高い」と言われていたような国なら、新規参入して狙いたいターゲットって新しいものに好奇心を持つ若い人にどうしてもなりますよね。
もう、それがそのまま現れてますよね。今、ウィキペディアで韓国ドラマの視聴率をチェックしても、視聴率もアワードもここ数年はJCTBとTVNが押しに押してて、老舗のKBSもだいぶ苦戦してるようですからね。
しかも、Kポップの影響で韓国に興味を持つ若い人が世界的に急増していた時期でもあった。それならば、ドラマをそういう人にアピールするためには、より若いコンテンツの方が良いに決まっていた。
そういう「構造の変化」がそろそろ出やすいタイミングだった。これはやはり、状況的に整いつつあったのかな、と思いますね。で、そういう新しいタイプの作品を、より広く世界に出していくために、必要だった存在がコレでした。
もちろん、ネットフリックスですよ。
ネットフリックスって、ここと交渉して国際的な配信を可能にさえすれば、わざわざそれぞれの放送先の国と、「どの放送局と放映権結ぶか」、などの面倒くささも解消されるし、韓国での放送から時差を少なくして放送させることができますからね。
そのネットフリックス対策もJTBC、TVNはすごくうまかった。だから、すぐに話題作を配信することができた。
それでも、これまでの韓国のネットフリックス作品で、そこまで目立つ作品もなかった。そこに「梨泰院」ち「不時着」の強力作品が、しかもコロナウイルスで外に出れないタイミングでやってきた。そういう感じだったのかな、と思います。
しかしなあ、これ、やっぱり今年の韓国の2月は神がかってたんだと思いますね。この頃に「パラサイト」のオスカーと、BTSの世界中でのナンバーワンでしたからね。それと全く同じ頃に、テレビつければ「不時着」も「梨泰院」が両方共にテレビで見ることが可能だったわけですからね・
・・・と、こういうことが連鎖的に、かつ潤滑的に起こるというのは、普通なことではないですよ、やっぱり。これ、国際観点からもっと評価されるべきだし、ずっと語られていくことだと思いますね。