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映画「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」感想. 後期スコセッシ「アメリカの闇三部作」のラストと捉えたい

どうも。

今日は久々の映画レビュー、というか前ふりしてましたけど、これ行きましょう。

もう、日本も含め世界的に公開されていますけどね。マーティン・スコセッシの最新作「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」。これのレビュー行きましょう。

話は既に知ってる人も多いと思いますが、あらすじを簡単にいきましょう。

舞台は1920年代のオクラホマ州。そこに居住するアメリカ先住民のオサージュ族は石油開発で富を得ていました。

そこに

第一次大戦からの帰還兵アーネスト・バンクハート(レオナルド・ディカプリオ)がやってきて、住み着くようになります。それは

彼の叔父である「キング」という通称を持つウィリアム・ヘイル(ロバート・デ・ニーロ)のビジネスの手伝い、という名目上です。

当初、タクシードライバーとして働き始めたアーネストはオサージュの人たちに対して、彼らのしゃべるようなかなり濃いアクセントの英語を喋り、彼らのコミュニティに入り仲良く振る舞うナイスガイでした。やがて彼は

オサージュの美しい娘、モリー・カイル(リリー・グラッドストーン)と恋に落ちます。モリーはオサージュの石油の利権をもった一家の娘。当初はキングに近づくよう言われたんですが、

ことの外、2人の仲は深まり結婚もしてしまいます。

モリーは糖尿病を患っているため病弱なのですが、2人は子宝にも恵まれ結婚生活を営みます。しかし、その周囲では次々とオサージュの人たちが殺されていき、やがてそれはモリーの肉親たちにも及んで行き。そして徐々にアーネストに怪しい動きが・・・。

・・・と、ここまでにしておきましょう。

これはですね、実在の話です。登場人物も同じ名前で存在してまして

これがレオの演じたアーネスト。ジョン・ウェインみたいな顔してますけどね。

これが奥さんのモリー。さらに

デニーロが演じたヘイルですね。

 これ、誰が殺人を仕掛けていたかはですね、もう実は見る前から明らかなんですけど(笑)、結末も最初から見えます。アメリカ人にとってみればもっとそうでしょう。有名な事件みたいですし。その意味でこれ、ストーリーのプロットの意外性で見せるとか、そういう映画では一切ないです。

 ただ、それがわかっっていても、話の進め方そのものがスコセッシ、すごく上手い人ですからその意味で弛緩するところはなかったです。彼の場合、21世紀入ってからは長尺映画ばかりで、ここ最近は3時間が当たり前になってて、その点はちょっとやりすぎかなと思わないではないんですけど、それによる話の緩みとかは決してない。その点で言えばやはりプロフェッショナルなんですよね。

 そこにはやはり、スコセッシがここ数作に共通するドラマツルギーをしっかり感じさせること。これがあるからかな。主題がぶれないことが大きいです。

というのは、それズバリ、

アメリカの闇


これをどう見せてくれるのか。もう主眼はそこにしかないですね。

これ、僕の中では「後期スコセッシ・アメリカ三部作」ですね。

例えば

2013年のウルフ・オブ・ウォール・ストリートでは、80sの金融バブル時代に浮かれまくった金融業界を描きましたよね。80sというのはロックスターが華やかにパーティする時代でしたけど、それが社会を牛耳る金融界の大物たちまで能天気にそうだった。そんな時代がいざ終わってしまうとムカつく感情しか残らない(笑)、そんな映画でしたけど、これも見たくないアメリカの一面ですよね。だって、アメリカだけじゃなく、世界の経済に影響もたらす人たちなわけですからね。

2019年の「アイリッシュマン」では、アメリカの移民系労働者組合のボス、ジミー・ホッファの元でマフィアとして暗躍した男を描きました。これも実話。アメリカという国は移民国家で、移民が労働力を支えた。当初は経営者側にマフィアがついてたんですけど、労働組合がそれに対抗しているうちに力をつけ、逆にマフィアとくっつき、それがアメリカ大統領にとって問題となった時代を描いてます。主人公を演じたデニーロの、「表は普通そうなんだけど、裏では・・」の、真骨頂の演技が光りましたね。

そして、今回の映画では、先住民の持つ権利の白人による略奪ですよ。この「白人による社会の略奪」、これがアメリカの業というか罪のように描かれますね。そして、略奪される先住民社会の虚しさ、そして立ち向かう強さ。これが描かれていたように思いますね。

また、この時代背景での、石油利権に目がくらむ人の話としては

ポール・トーマス・アンダーソンの傑作映画「There Will Be Blood」も思い出しますね。

 まあ、スコセッシの場合、21世紀、とりわけレオが主役とるようになっていこうって、この「アメリカの闇」、描いてきているような気もするというか、「ギャング・オブ・ニューヨーク」や「アビエイター」もそういう感じも無きにしも非ずだったんですが、でも、あっちはまだ物語性の方が強かったかな。そこまで風刺、闇のあぶり出しはまだ少なかったような気もするし、やっぱり今ここあげた3作ほど明確なヴィジョンではなかった気もします。

そうやってみると、もうキャリア晩年にさしかかっているとは思うんですけど、巨匠スコセッシの後期、末期の高まる文学性、アメリカ社会への批評性も研ぎ澄まされててすごく良いし、そこは評価されるべきだと思います。それぞれの年でトップクラスの評価になっている映画ですしね。

が!

ごめんなさい。それ、わかってるんですけど、今回のこの映画、僕は想像した以上には刺さなかったんですよねえ・・。

なぜか。話のプロットとしては面白いんです。しかし、その反面、ストーリーの筋と直接関係ない、理屈を超えた、絵になるシーンでのインパクトが僕のまぶたの裏に残りにくかったんですよねえ。


例えばWolf Of Wall Streetでは今をときめくマーゴ・ロビーのセンセーショナルな登場があった。あと、マシュー・マコーノヒーの胸たたきながら歌う変な歌ね(笑)。

アイリッシュマンはやっぱデニーロと、かなり久々のジョー・ペシの黄金コンビでの絡み。あとやっぱホッファ演じたアル・パシーノとの絡みも。映画ファンとしては抜群に絵になるんですよね。

そこいくと

今回の映画、あんまりそういう見せ場がないんですよね。一番魅せるのはこの夫婦で、レオ、訛り、いつもと全く違う人みたいで役者としてまた一皮むけた感じもあるし、モリー役のリリー・グラッドストーンは「今年の映画界のディスカバリー」との評判も立っているのも承知してます。ただ、シーンで強く印象に残るものがあったか、となると、そこがなあ。

それこそ比較に上がっているThere Will Be Bloodでダニエル・デイ・ルイス演じるダニエル・プレインヴューの方が、その仰天ものの奇行の数々でやっぱりずっとそれが脳裏に残り続けてるんですよね。そういうのがなんか欲しかったかなあ、という気はします。

ただ、それでも話として、映画の完成度としては文句つけるところはないです。長くて、トイレは事前に済ませていてさえも結構辛かったりはする(母僕もストーリーが膠着したタイミングを見て、トイレに走りました、苦笑)んですが、見て損はないです。巨匠の円熟の技を堪能してほしいと思います。






















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