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よいアイデアは十分な熟成期間を要する

先延ばし」は、一般的にはネガティブな印象があります。経営者が重要な決定を先延ばしにして機会損失、競合他社に市場を押さえられて競争優位を失うとなれば、リーダーとしての資質を問われることになるでしょう。「まだ余裕がある」と勉強を先延ばしにしてテストで苦労した経験は個人的に多々あります。「前倒し」は対義語としてよく使われ、ポジティブなイメージを与えてくれます。「先にお風呂に入って晩ご飯!」なんてことはことあるごとに娘に伝えています。「その方がゆっくりご飯が食べれるよ」という因果論理。怠け心に釘を刺すように、自分自身にも「前倒し」を言い聞かせています。

ツァイガルニク効果

やりかけのタスクは頭の中に残り続けるという心理効果です。仕事でも勉強でも、家事でもなんでもいいのですが、やりかけで一旦手をとめて、休憩などを挟むことによって「集中力」が向上すると言われています。読書を3時間ぶっ通しで続けるより、30分ごとに区切って、5分程度の休憩を挟みながらトータルで3時間読む方が、集中できて記憶に残りやすい。読みかけの文章をあえてストップさせることで「続きが気になる」という効果をもたらし、集中力が高まるという理屈です。

「計画」は、ことを起こすときに推奨されます。サッカークラブでも、「試合日」を基準にブレークダウンして1日1日のトレーニング計画が決められます。開発、販売、アフターフォローなど、仕事においても事前に計画を立てるのが一般的。ですが「創造性」に関する研究によると分が悪いようです。計画を立てるには一定の時間を要することから、意思決定や行動のスピードが落ちてしまいます。ミスを低減するためには効果的ですが「創造性」を高めるにはスピード感が重要。スピーディな思考は脳のテンションを上げるため、その分だけ意外なアイデアが生まれやすい。頭の中でいろいろと悩むより、「行けそうだ」という直観。良いひらめきは意識と意識のはざまにこそ浮かび上がるという事実は、さまざまな研究でも紹介されています。

事前の計画は、創造性を遮断、視界にふわっと現れるかもしれない創造的な可能性をシャットアウトしてしまいます。即興でスピーディに何かをする余地を残す。戦略的に先延ばしをして、さまざまな可能性を試して改良することによって良いアウトプットが生まれることもあります。このように一概に先延ばしは悪、とは言い切れないことは科学が証明。あらかじめ計画するのではなく、進めていく中で解決策を見出していく。作りたいものを計画するのではなく、曖昧なアイデアや解決策を試して忍耐強く進めていけば、いずれ斬新で実用的な施策に育っていくかもしれません。

こういった情報はもちろん、本を読んだり、成功者の話を聞いたり、セミナーで学んだりすることで得られます。一般的な常識、つまり「先延ばしはよくない」という固定観念にしばられていると身動きが取れなくなることがあります。最近は先延ばしを意図的に組み込むことでアイデアをブラッシュアップするようにしています。アイデアは、熟成させるための時間が必要。よりユニークな提案をするためには、頭の片隅に課題を残しながら先延ばしにする必要がありそうです。

より柔軟に、仕事を進めていきたいと思います。

久保大輔




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