「信用残高」を増やす心構え
弱い紐帯の強さ
マーク・グラノベターの「The Strength of Weak Ties」理論を指し、弱いつながりこそが強い世界をつくるという意味。「Give & Take(与える人こそ成功する時代)」にも掲載されています。出世する会社員、政治家や官僚にしてもそう。実力だけではなく、人間関係を構築する能力に秀でている人は結果を残す傾向にあります。SNSを活用したり、絶妙なタイミングでLINEを送ったり、コミュニケーション能力が高く、周囲に好かれる(気にされる)人が大きな成果を残しているのは私の知り合いにも共通しています。
物事がうまく運んでいるときはいいですが、人生には「上り坂、下り坂、まさか」があると言われるように、いつなんどき苦境に陥るかわかりません。だからこそ毎日コツコツと「小さな親切」を積み重ねるなど、自分の評判を築くことだけではなく、他の人の役に立つ存在であろうとすることが大切なんだと思います。恩着せがましい親切ではなく、後味の悪さを残す取引のようなものでもなく、シンプルに他者に貢献する姿勢です。
「何かを手に入れたい」という目的でネットワークを広げようとすると下心がバレてしまう。ネット社会では悪いうわさはすぐに行き渡って「処罰」を受けることになります。ネットワークそれ自体に価値はありません。価値や利益は、有意義な行為や人間関係に投資した結果として得られます。自分のためだけにつくるものではなく、ネットワークはすべての人に価値をもたらすツールであるべきです。
受けた恩を直接お返しできないとき、他の誰かに送る恩を「恩送り(Pay forward)」と言います。そして「与えること」は感染すると言われていて、例えばあなたが転職をしてまだ間もないころに感じる不安を解消しようとすれば、他者のフリを見てその場所にふさわしい行動を取ろうとするはずです。「恩送り」が当たり前の文化、社風、組織の雰囲気があれば、あなたも積極的に「誰かに貢献する」ことを意識するでしょう。組織に一貫した「ギバー」がいれば、たった一人のギバーのおかげで、グループ全体の利益が大きくなると言われています。
与えること。お返しを期待しなければ、資源は枯渇していきます。生きていくためにはどこかで生産性を高める必要がありますが、その折り合いはどこでつけているのでしょうか。答えは「より多く与えること」です。頻繁に助ける人の方が、まれにしか助けない人よりも多くの人から信頼され、お返し(利益)を得る機会も増大したという報告もあります。社会に結びついたおかげで好ましい評判が早く広まっていったわけですね。
自分個人の利益より、グループにとっての最高の利益。組織に深く関わればみんなが得をします。自分の知識と時間を分け与えるだけではなく、人が嫌がる仕事を進んでしたりすることで、競争相手ではない、ひとつフェーズが上の存在として一目置かれるようになるでしょう。すると大胆で挑戦的なアイデアであっても特別に認められるようにもなるなど、仕事がしやすくなるはずです。
人に頼らなくても自分ひとりでできると盲信して、手柄を独り占めするような行為を続けていると、その見返りとして信用残高を大きく減らしてしまう。相手の努力に対して自分の貢献を高く見積もることを「責任のバイアス」と言いますが、私たちは自分の貢献を過大評価して、他人の貢献を過小評価しがちです。周囲の人たちの業績、成果には常に気を配り、積極的に評価すべきだと思います。
そんなこんなを、過去に読んだ本を見返しながら考え、自分の考えや行いをあらためる日々です。忘れる前ではなく、忘れてしまったときに本を開いて再読すると、記憶が甦るだけではなく、新しい気づきも得られて有益です。
久保大輔
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