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ガザ情勢で分断される国際社会②

パレスチナのガザ地区でのイスラエルとハマースの衝突から3週間が経た現在、国際社会は未だに一致した行動を取れずにいる。

国連安全保障理事会では衝突の発生以来4度の会合が開かれ、ガザでの停戦を求める決議案が5度採決にかけられたものの、いずれも採択に至らなかった(下表参照)。

出所:筆者作成

決議案の採択にもっとも近づいたのは10月18日に提出されたブラジル案であり、採択に必要な9カ国の賛成を上回る12カ国の賛成が集まったものの、常任理事国である米国が反対票を投じることで拒否権を行使し、成立は妨げられた。前記事でも指摘した通り、米国はイスラエルの自衛権への言及がないことを理由に反対票を投じたと説明しているが、過度なイスラエル擁護であるとの批判を浴びている。

こうした批判を意識してか、10月25日に米国は自らが決議案を起案して採決にかけている。これは10カ国の賛成を集めたものの、常任理事国である中国とロシアが反対票を投じたことで拒否権の行使となり、採択に至らなかった。ロシアは米国の決議案は米国の「地政学的利益につながる」ためのものに過ぎないと断じ、中国は米国案を戦闘の終結や危機の根本的な原因、イスラエルのガザ封鎖やガザの人々への避難の命令といった重要な点に言及がなく「著しくバランスを欠いている」と批判した

中ロが反対しなければ賛成多数で採択となったことから、中ロの対応を非難する声もある。しかし、国連安保理内における唯一のアラブ諸国であるUAEも米国案に反対票を投じていることは無視できない動きだ。UAEはアラブ諸国の代表としてパレスチナの意向を代弁する役割を担っていると自他ともに認識されており、UAEの背後にはアラブ諸国の意思が一定程度反映されている。

国連安保理が機能不全に陥っていることからアラブ諸国は国連総会の緊急特別会合の開会を要請し、10月26-27日の二日間で会合が開催された。同会合においてアラブ諸国は停戦を呼びかける決議案を準備しており、ヨルダンが提出した同決議案は起案の段階で40カ国が共同提案国として名を連ねている(最終的に共同提案国は約50カ国に増えたと報じられているが、現時点では詳細不明)。

同決議案は、賛成121、反対14、棄権44と、投票国の3分の2以上の賛成を得たことにより採択となった(当初賛成120、棄権45とされていたが、技術的な理由により誤りがあったとしてイラクの投票結果が棄権から賛成へと変更になっている)。決議案が採決にかけられる前に、カナダがハマースへの非難を含む修正案を提案したものの、賛成85、反対55、棄権23と、修正案の採択に必要な3分の2以上の賛成を得られず否決されている。

出所: UN News

投票行動で著しい動きとなったのは、アラブ・イスラーム諸国が軒並み決議案に賛成したことであろう。アラブ連盟に加盟する22カ国は、投票権のないパレスチナと棄権票を投じたチュニジアを除き、全ての国が賛成に票を投じた。最終的な結果は不明だが、アルジェリアとシリアを除く全ての国が共同提案国に当初から名を連ねたことも象徴的である。また、対象をイスラーム協力機構に加盟する57カ国に範囲を広げても、棄権したのはわずか3カ国で、投票した残りの全ての国は賛成に回っている(下表参照)。

出所:筆者作成

一方、決議案に反対した14カ国は、イスラエル、米国の他、欧州のオーストリア、クロアチア、チェコ、ハンガリーの4カ国、中南米のグアテマラ、パラグアイの2カ国、大洋州のフィジー、マーシャル、ミクロネシア、ナウル、パプアニューギニア、トンガの6カ国である。44カ国の棄権国の中には英国、ドイツ、イタリア、カナダ、そして日本が含まれている。

G7ではフランスのみが賛成に票を投じているものの、欧米諸国とアラブ・イスラーム諸国の間で大きな地域差が出ていることは、問題の解決が容易ではないことを示している。国連総会決議には法的拘束力がなく、イスラエルやそれを支援する米国の行動を法的に縛ることはできない。

事実、決議が採択された翌日の10月28日、イスラエルのネタニヤフ首相は戦争が第二段階に入ったと宣言し、ガザでの地上戦を開始した。ネタニヤフ首相は「まだ(戦争は)始まったばかりだ」と述べており、ハマースのガザ統治と軍事能力を解体し、人質を奪還するまで軍事作戦を継続するとしている。


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