決断してはいけない時
From 安永周平
GW真っ只中の方も多いと思いますが、ちょっと面白い研究結果を紹介したいと思います。休日モードの方は、無理にとは言いませんが、よろしければ軽い気持ちで読んでみてくださいね。
物を買うのに影響する「悲しみ」の感情
きっとあなたも奥さんや恋人のショッピングに付き合わされた経験があるかと思いますが(苦笑)、買い物というのはよく「ストレス発散」に使われます。多くの人が、買い物をすることで落ち込んだ気持ちを癒そうとするのです。これについて、面白い実験を行ったのが社会科学者のジェニファー・ラーナー。彼は、悲しみの感情が、物を売ったり買ったりする行動にどのように影響するのかを調べ、興味深い考察をしました。
ラーナーたちは「人は悲しい経験をすると、気分を切り替えるために環境を変えたくなる」という仮説を立てました。そして、その気持ちが購買決定に大きく影響するはずだと考えたのです。具体的には、買い手は悲しい気分の時は同じ商品に「より高い値段を払ってもいい」と思い、売り手は逆に、同じ商品を「より安く売ってもいい」と思うというのです。
実験:悲しみが値決めに及ぼす影響
この仮説を検証するために実験が行われました。参加者を2つのグループに分け、それぞれ別のビデオを見てもらいました。まず1つ目のグループでは、映画『チャンプ』から抜粋した、少年の人生の師が亡くなってしまう内容のビデオを見せて、自分が少年と同じような立場になったらどう感じるかを簡単に書いてもらいました。そして、もう1つのグループには、ありきたりな魚の映像を見てもらい、特別な感情を抱かせないようにしました。その後、自分の毎日の生活について書いてもらいました。
その後、参加者全員に最初とは別の調査に参加してもらうことを告げて、蛍光マーカーのセット(商品)を渡しました。そして、半数の人には「それをいくらで売るか?」を考えてもらいました。また、残りの半数の人には「それをいくらなら買うか?」の値段を考えてもらったのです。そして、どうなったかというと…
悲しみによって30%以上も値段が変わる
結果は、ラーナーの仮説を裏付けるものでした。悲しい気分だった買い手は、平静だった買い手と比べると約30%も高い値段で買ってもよいと答えたのです。また、悲しい気分の売り手も、そうではない人より約33%も安い値段で売ってもよいと答えました。
もう1つ言うと参加者たちは、ビデオを見てから感情が高まっていたことが、値決めの判断にまで影響していたことに、自分では全く気付いていなかったことも分かりました。悲しい気持ちによって値段が高くなったり、低くなったりしたことを全く分かっていなかったのです。
この研究結果、仕事にどう使う?
さて、この研究結果はあなたの仕事にどう活かせるでしょうか?最も重要なのは「悲しい気持ちになっている時に、重大な決定をしたり命運をかけた交渉に臨んだりしてはいけない」ということではないでしょうか。そのためには、自分が感情的になっていないかを、しっかりと自覚しておくことが大切です。メールを返信する場合でも、自分の感情がどんな状態にあるか把握しておかないと、判断を間違えてしまう可能性があります。
たとえば、仕入先との契約内容…つまり金額について交渉する場合を考えてみましょう。それが、何か悲しい出来事の直後であれば、あなたが優れた意思決定の能力を持っていたとしても、その交渉は遅らせる方が賢明です。少し遅らせるだけで、気持ちを落ち着かせて理性的な判断ができるからです。そして、重要な決断をする時は、自分を落ち着かせる時間を取ることを習慣にしておくといいですね。
連続でミーティングに出る弊害
それから、効率を考えて、立て続けにミーティングを入れる人がいますが、重要な打合せは効率を優先すべきではありません。前のミーティングで激論を交わしたのであれば、次の打合せにも少なからず影響を与えます。次のミーティングで重大な決定をしなければならないのなら、別の日程の方がいいですし、せめて間に小休止を挟むようにしたいところです。
それから、これは家庭でも同じです。新しい家具や家電の購入、家の増改築、あるいは新居の購入を考えている場合なんかも、自分が感情的になっていないか振り返ってみましょう。心が平静になるまで、その決断を延ばすほうが賢明です。
注意:相手のコントロールに使ってはダメ
ただ、こんなこと言わなくてもあなたは分かっていると思いますが…念のために付け加えておきます。この心理を利用して「相手が悲しんでいる隙に交渉を有利に進めてやろう」なんて思わないでください。あなたが商談で、相手が悲しい気持ちに浸っているのを知りながら、あるいは相手が悲しむような話題をわざと出した後で、クロージングしよう…なんて思うのはNGです。
もしかすると、その1回の商談はうまくいくかも知れませんが、長い目で見ると信頼を失い、後悔につながります。もちろん、あなたはそんな浅はかなことはしないでしょう。むしろ、相手が悲しみに浸っているのであれば、交渉の延期を提案するのが「GIVER」としての行動です。その行動は品位を持った思いやりであり、あなたの心の余裕を示すことにもつながり、信頼関係の構築に一役買ってくれるでしょう。
こう考えてみると、自分の感情だけでなく、相手の感情も汲むこと…それが、営業において大切なことだと言えそうですね♪
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