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飲食業に対する実践的支援!業種別支援の着眼点を活用して、飲食業はこう支援する! 中小企業支援ケーススタディ【エフアンドエム解説】

エフアンドエムによる連載「中小企業支援 ケーススタディ2024」。飲食業に対する実践的支援と具体的な支援事例を、経営サポート事業本部の中郡雅人 チーフコンサルタントが解説する(金融ジャーナル2024年1月号掲載。数字、肩書き等は掲載時点)。



飲食業の着眼点(経営課題の共有)

「業種別支援の着眼点」(日本生産性本部)について、今回は「飲食業」での実践事例を紹介したい。「飲食業」は、コロナ禍で大きなダメージを負った業種の1つである。

現在は、人件費、食材費の高騰がありつつも人流は戻り、インバウンド需要も見込まれるため、飲食業の売上回復は進んでいる。今後は、コロナ禍で傷んだ貸借対照表(BS)の改善、新規出店の妥当性判断、コロナ融資の返済負担軽減等が支援していくポイントになるだろう。

飲食業経営者との面談では、以下の4項目について注意深くヒアリングすることが重要になる。①共通経費 ②各店舗の状況把握 ③FL比率 ④店舗別収益の設定

経営者との面談時に、「店舗は儲かっているから大丈夫」という話がよく出てくるが、実態として利益が出ていない店舗は多い。店舗収益を把握する際に、「共通経費項目」を考慮していないことが要因である。

多店舗展開する飲食業の落とし穴であり、共通経費を加味した目標を設定していない経営者は多い。よって、経営者との面談時には店舗の特徴を考慮した経営課題について共通認識を持つことを心がける。店舗別の収益目標を設定する時に注意すべきことは、各店舗のポテンシャルを把握することである。

店舗の状況把握では、ビジネス俯瞰図(図表)を用いて、業歴、床面積、席数、営業時間、顧客平均単価、顧客層等をヒアリングしている。経営者にとって分かりやすい目標設定は、坪面積当たりの売り上げや、FL比率である。

ビジネス俯瞰図の作成(サンプル)

一般的にFL比率は、60%以下が目標とされるが、エフアンドエムでは、アルバイト給与や材料費の高騰なども考慮して、FL比率58%以下をAランク、58~62%をBランク、62~65%をCランク、65%以上をDランクと設定し、優先的に経営改善が必要な店舗の検証を行っている。

なお、「業種別支援の着眼点」より飲食店舗の主な確認事項は以下の5点である。①FL比率の確認(正社員とアルバイト変動費の割合・オーバーポーションの防止・在庫管理等)②客数の確認(コロナ前、コロナ禍、現在と3つの時期を比較することが重要)③面積・席数(厨房・客席比率・回転率・適正人数の把握・坪売上目標の設定)④近隣競合店との比較検証(概ね3Km圏内の商圏分析)⑤DX化による業務改善状況(無人レジ・タッチパネル・配膳ロボ等)


業種別支援の着眼点(飲食業)を活用した支援事例 

<企業概要> M=百万円
A社は業歴15年の飲食業である。コロナ前の売上構成は、焼肉店舗70M、居酒屋店舗60M、ラーメン店40M、お弁当屋15M、製麺直売所20Mであった。

A社の業績推移

<取り組みの背景>
新型コロナの影響で焼肉、居酒屋店舗の売り上げが減少し、主要顧客であった40代サラリーマンの顧客が減少した。また、製麺直売所は2021年に閉鎖し、2022年度の売り上げは160Mであった。

今期は、主要メニューの単価見直し、宅配用ECサイト展開により売り上げ・粗利ともに回復予定である。現在、借入残高が多く、コロナ融資の返済負担が増える前にメイン金融機関であるB信用金庫より、「返済抑制」と「設備資金」を検討するため経営改善計画書策定支援を依頼された。

<現状の課題>
「業種別支援の着眼点」を活用した経営課題の抽出
① FL率は店舗により60%を超えていた(アルバイト管理の徹底が出来ていなかった)② 材料費上昇分を価格転嫁出来ていなかった③ 居酒屋店舗は、メインターゲット層のリピート率が低下していた(飲み会離れ)

<経営改善施策>
現代表者は、自社の経営課題をしっかりと把握できていた。不採算事業であった製麺所直売の閉鎖と弁当店舗をEC化に変更したことで販管費の抑制を既に取りかかっていた。今後の焦点は、EC店舗の拡充のための資金と、業務効率化を図るためのDX設備投資である。

エフアンドエムと具体的なアクションプランを検証し数字計画への落とし込みを行った。① メインメニューとドリンクメニューについて2023年9月に15%単価UPを行う② シフト管理のためアルバイトスケジュールのアプリを導入(シフト変更をSNSで柔軟な対応へ)③ ECサイト活用による持ち帰り需要の増加・現在8サイトを12サイト設立へ④「設備資金」の確保と「コロナ融資返済」抑制・資金繰りの改善

経営改善計画を策定するにあたっては、過去の来店者数の推移や回転率、顧客単価を考慮し売上目標を設定した。店舗別目標の設定、FL率の改善、費用項目、EC手数料の目標設定を行うことで、経営改善の道筋は見えてきた。

<金融支援>
①設備資金としてプロパー10M(7年返済)を検討➁経営改善サポート保証を活用し、長期借入金の返済期間を延長(月次返済額の抑制)

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