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咳のメカニズムと薬膳

中医学では、咳は、気管に痰が詰まったり、気管支の炎症、呼吸の気の乱れによって起こるとされています。

呼吸において、息を吸うのは腎の気、息を吐くのは肺の気によります。下がるべき肺気が上がってしまうと咳が起こります。

気道には、繊毛と呼ばれる小さな毛のようなものが生えています。この繊毛が波打つように動くことで、ホコリや細菌などの異物を外に排出しており、これを繊毛運動といいます。

繊毛運動がうまくいかないと、異物が気道内に留まり、炎症を起こしやすくなります。また、咳によって異物を外に出そうとする反射が過剰に起こり、咳が止まらなくなります。

咳は、痰や炎症を取り除き、上がってしまった肺気を下ろす生薬や食材、気道の繊毛運動を正常にすることによって、治すことができます。

【咳を鎮める薬膳茶】

麦門冬、板藍根、黄耆、陳皮、レモンバームの薬膳茶

左から黄耆、陳皮、板藍根、レモンバーム、麦門冬

麦門冬

麦門冬は、以下の働きによって、喉の繊毛運動を促進し、咳を鎮める効果があると考えられています。

麦門冬の咳を鎮める働き

気道を潤す:乾燥した気道は、繊毛運動を阻害し、咳の原因となります。麦門冬は、気道を潤すことで、繊毛運動をスムーズにし、咳を鎮めます。

炎症を抑える:麦門冬には、炎症を抑える作用もあります。気道の炎症は、繊毛運動を低下させるため、炎症を抑えることで、咳を鎮める効果が期待できます。

痰を切る:麦門冬は、痰を切る作用もあります。痰が気道に溜まると、咳が出やすくなります。痰を切ることで、気道を開放し、咳を鎮めます。

板藍根

古くから中国で風邪やインフルエンザなどの感染症に用いられてきた生薬です。特に、熱を下げ、のどの痛みを和らげ、咳を鎮めるといった効果があることで知られています。

板藍根の咳を鎮める主な働き

抗ウイルス作用: 板藍根には、様々なウイルスに対して抗ウイルス作用があると考えられています。風邪ウイルスやインフルエンザウイルスなどの増殖を抑えることで、感染症の症状を軽減し、咳を鎮める効果が期待できます。

抗炎症作用: 板藍根は、体内の炎症を抑える作用も持っています。喉の炎症を抑えることで、痛みや腫れを軽減し、咳を鎮める効果が期待できます。

解毒作用: 板藍根には、体内の熱を冷まし、毒素を排出する解毒作用もあります。熱によって悪化した咳を鎮める効果が期待できます。

黄耆

古くから漢方薬として利用されてきた生薬で、その効能は多岐にわたります。特に、気(エネルギー)を補い、肺を養うことで知られており、咳を鎮める効果も期待できます。

黄耆の咳を鎮める働き

気の補強: 黄耆は、体内の気(エネルギー)を補強する作用があります。気は、私たちの体を温め、防御機能を高める働きがあり、気虚(気が不足している状態)になると、風邪を引きやすくなったり、咳が出やすくなったりします。黄耆で気を補うことで、体の抵抗力を高め、咳を鎮める効果が期待できます。

肺の機能改善: 黄耆は、肺の機能を改善する働きもあります。肺は、呼吸を司る臓器であり、気と深く関わっています。黄耆で肺を養うことで、呼吸機能が改善され、咳が落ち着く効果が期待できます。

免疫力の向上: 黄耆には、免疫力を高める作用もあると考えられています。免疫力が低下すると、感染症にかかりやすくなり、咳の原因となることがあります。黄耆で免疫力を高めることで、感染症を予防し、咳を鎮める効果が期待できます。

陳皮

みかんの皮を乾燥させた陳皮は、体内の気の巡りを良くする生薬です。

陳皮の咳を鎮める働き

気の流れを良くする: 特に、胸や肺の周りの気の滞りを解消し、呼吸をスムーズにすることで、咳を鎮める効果が期待できます。

肺を温める: 陳皮は、体を温める作用があり、特に肺を温める効果が期待できます。冷えによって悪化した咳や痰を出しやすくする働きがあります。

痰を切る: 陳皮は、痰を切る作用もあります。気道をクリアにすることで、咳が出にくくなります。

レモンバーム
レモンの香りが爽やかなハーブのレモンバーム。レモンバームの香り成分は、シトロネラールやシトラールで、様々な効能があります。

レモンバームの咳を鎮める働き

抗炎症作用: レモンバームには、ロスマリン酸などの抗酸化物質が豊富に含まれており、これが炎症を抑える働きをします。喉の炎症を抑えることで、痛みや腫れを軽減し、咳を鎮める効果が期待できます。

鎮痛作用: レモンバームには、鎮痛作用もあり、喉の痛みを和らげる効果が期待できます。

抗菌作用: 喉の感染症を予防する効果も期待できます。

リラックス効果: レモンバームの香りには、リラックス効果があり、ストレスを軽減することで、免疫力を高め、風邪などの症状を改善する効果も期待できます。

また、これらの食材も咳を鎮める働きがあります。

蜂蜜

蜂蜜は、咳や喉の炎症に効果があるとされています。

蜂蜜の咳を鎮める働き

風邪の症状緩和: 風邪による咳や喉の痛みを緩和する効果が期待できます。

咳込み回数の軽減: 蜂蜜を摂取することで、せき込む回数が減り、睡眠の質が向上する可能性もあります。

喉の痛みを軽減: 蜂蜜の保湿作用により、喉の痛みを和らげることができます。

大根

大根が咳を鎮める効果があるとされるのは、主に以下の成分と作用によるものです。

大根の咳を鎮める働き

消化酵素: 大根には、消化を助ける様々な酵素が含まれています。これらの酵素は、体内の余分な熱を冷まし、肺の熱を鎮める働きがあると考えられています。

辛味成分: 大根の辛味成分には、殺菌作用や消炎作用があり、喉の炎症を抑える効果が期待できます。

気を下げる::大根は上がってしまう肺気を下げる働きによって、咳を鎮めます。

柚子

柚子は、文旦と呼ばれる体内の気の巡りを良くする生薬です。

柚子の咳を鎮める働き

気の流れを良くする: 特に、胸や肺の周りの気の滞りを解消し、呼吸をスムーズにすることで、咳を鎮める効果が期待できます。

止咳化痰平喘:柚子は、痰が多い咳において、痰を切る作用があり、咳を鎮めます。

大根を小さなサイコロサイズにカットして蜂蜜浸けにしたり、柚子の果汁と蜂蜜を混ぜたシロップは、咳止めに効果的です。

これからの季節、ぜひ、お試しください。

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