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アゲハチョウの誕生、子育て、そして旅立ち

エデン農園のフェンネルの切り花を飾っていたところ、アゲハチョウの卵が付いていたらしく孵化して、幼虫が生まれました。
茶色っぽい色だったので、「ちいちゃん」と名付けました。

ちいちゃんが生まれる1週間前に、同じくアゲハチョウの幼虫の「あっちゃん」がいたのですが、エデン農園のフェンネルがなくなり、急遽、市販のパセリをあげたら、その翌日に死んでしまいました。

あっちゃんが死んでしまって申し訳ない気持ちと喪失感に苦しんでいた時、あっちゃんが天国に逝った1週間後に、神様がちいちゃんという新しい命を与えてくださいました。

ちいちゃんは、アゲハチョウのキアゲハという種類です。アゲハチョウの幼虫は、その種類によって食べる葉が異なります。例えば、ナミアゲハの幼虫は、ミカン科の葉しか食べません。キアゲハはセリ科の葉しか食べません。キアゲハの中でも、好きな葉に好みがあるのか、あっちゃんは、フェンネルの花は食べず茎のみを食べ、セリ科のパセリも三つ葉も食べましたが、ちいちゃんは、セリ科のイタリアンパセリには見向きもせず、フェンネルの花も茎も葉も食べ、フェンネルしか食べませんでした。


フェンネルの切り花は、不思議なことにキアゲハの幼虫のちいちゃんに食べられても、切り花でも2週間枯れることもなく、むしろ、ちいちゃんが食べていないフェンネルの切り花は、1週間後には枯れていました。フェンネルとキアゲハは、バディのような不思議な関係で、もしかしたら、キアゲハの糞がフェンネルの肥料になっているのかも知れません。なぜなら、キアゲハの幼虫が生涯する糞の量はコップ1杯くらいになります。エデン農園のフェンネルには、2m近くの大きなフェンネルがあり、沢山のキアゲハの幼虫がいても、元気に育っているのは、フェンネルにとっては、キアゲハを養うことで、キアゲハの糞から必要な肥料を得ているのだと思います。


エデン農園のフェンネルとキアゲハの幼虫

ちいちゃんは、どんどん大きくなって、蛹になりました。


蛹になったキアゲハのちいちゃん

キアゲハの蛹の期間は、7日間です。
キアゲハの成長過程の期間は、決まっています。
卵の期間:5日間
幼虫(1齢〜4齢の期間):10日間
5齢幼虫の期間:7日間
蛹の期間:7日間

ちいちゃんを観察していて、この期間は、創造主である神様によって定められたものだと理解できました。

蛹になったちいちゃんは、上部が角がある頭のように見えて、立っているミイラのように見えます。生きているのか、死んでいるのか分かりません。

蛹になって翌日のちいちゃん

アゲハチョウの羽化について調べたところ、壁に蛹を作ってしまった場合、羽化した際につかまる場所がないと、落下してしまうとのこと、ちいちゃんの蛹の近くに小枝を措いて置きました。

ちいちゃんが蛹になって7日目の夜、横から見ると蛹の上部がふっくらしていました。まるで、妊婦のお腹が大きくなるようにふっくらしています。蛹に、「ちいちゃん!」と声をかけると、まるで、お腹の中の赤ちゃんが反応しているみたいにピクっと動きました。もう一度、「ちいちゃん!」と声をかけるとピクっと動きました。


生まれる前日のちいちゃん

アゲハチョウは、蛹になる際、最後にもう一度脱皮して蛹になります。イモムシの時に着ていたカラフルな皮は脱ぎ捨てるのです。ちいちゃんが蛹になった時に脱ぎ捨てた皮は、テレビ台の下に落ちてしまったようです。

そして、蛹の中では、イモムシは一旦ドロドロに溶けて、白い液体になり、それから蝶に形造られるそうです。蛹の中で全く新しい菅に創られていくのです。しかし、液体になってもイモムシの時の記憶は残っているそうです。このため、ちいちゃんは私の声に反応してくれたようです。
ちいちゃんの誕生に備えて、部屋の中に沢山の花を用意しました。


ちいちゃんの誕生祝いの花

翌朝、蛹を見に行くと、蛹が空になっています。ちいちゃんがいないと思ったら、蛹の横に置いておいた小枝に、可愛いキアゲハがとまっていました!


生まれたてのちいちゃん


にっこり笑顔のちいちゃん

生まれたての蝶は、羽が濡れているため、しばらくじっとして、乾燥するのを待ちます。ちいちゃんは、このまま数時間じっとしていました。

キアゲハは、羽化の際に上手く羽化できなかったり、羽が片方ない奇形で飛べなかったりすることもあるらしく、ちいちゃんが終齢の時に、半日フェンネルを切らしてしまったことが影響しないか心配でしたが、無事に美しいアゲハチョウとして生まれてきました。

その後、ちいちゃんは、少し飛んで壁にとまりました。

壁にとまるキアゲハのちいちゃん

その後、ちいちゃんは頑張って飛んで上がって行きます。

しかし、上がって行って、上手く葉につかまることができず、落下してしまいました。

ちいちゃんは、落下してしまったことがショックだったのか、その後は、窓際でじっとしていました。生まれたての蝶も、小鳥と同じく、初めは上手く飛べないのだと初めて知りました。


窓際でじっとしているちいちゃん

ちいちゃんの近くに白い液体がありますが、これは蛹の中の液体が体がに付いていたものです。所謂、羊水のようなものです。

翌日、窓際でパタパタしていたちいちゃんに指を差し出すと、つかまってくれたので部屋の中央に持って行きました。ちいちゃんは、私の指から羽ばたき、上手く飛ぶことができました。しかし、ちいちゃんは照明器具のカバーの中に入ってしまい、カバーを外して救助しました。白色蛍光灯は、微量の紫外線を発するらしく、ちいちゃんも虫なので、白色蛍光灯に寄っていってしまったようです。ちなみに、LEDランプには、虫は寄っていかないそうで、ちいちゃんもLEDランプの近くには寄って行きませんでした。

ひとまず、ちいちゃんが上手く飛べるようになってホッとしましたが、生まれて3日間、ちいちゃんは何も食べていません。せっかく用意した花々にも寄っていかず、近くにハチミツを薄めた水を用意しても反応しません。


花に反応しないちいちゃん



ちいちゃんは、ただ窓際にばかりいて、部屋を飛びまわることはありませんでした。


窓際のちいちゃん

朝になり、太陽が登ると、ちいちゃんは、羽をパタパタさせて、太陽の光を求めているのか、外に出たがっているように見えます。
アゲハチョウの成虫の寿命は、約2週間なので、このまま部屋に閉じ込めて置くのは可愛そうなので、エデン農園に連れて行くことにしました。


ちいちゃんをエデン農園に連れて行くには、ちいちゃんをカゴに入れる必要があります。ちいちゃんの羽や脚を傷つけないよう虫取り網を用意し捕まえようとしますが、ちいちゃんは暴れて、テレビの裏に落ちてしまいました。テレビ台をそっと動かし、やっとちいちゃんを捕獲できました。


カゴに入ったキアゲハのちいちゃん


ちいちゃんを車に乗せ、エデン農園へ行く途中、カゴの中でそわそわしていたちいちゃんでしたが、部屋でいつも流していた音楽をかけたら大人しくなりました。

エデン農園に到着し、いよいよキアゲハのちいちゃんとお別れの時が来ました。


カゴの扉を開けましたが、ちいちゃんはカゴの扉が開いていることに気づかず、外にでません。

カゴの中で飛びまわるちいちゃん。


ちいちゃんは、カゴの扉に近くに来て、扉が開いていることに気づきました。ちいちゃんは、すぐに飛び立つのではなく、カゴの扉を押さえる私の指に止まりました。しばらく時間が止まった感じがしました。まるで、私にお別れをしてるようでした。ちいちゃんと心が通じているのを感じました。それから、ちいちゃんは飛び立って行きました。今でも、ちいちゃんが指に止まった感触が残っています。


飛び立ったちいちゃんは、近くの高い木の上に行ったり、ヒマワリなど様々な花々の周りを飛び回っていました。

人間には、紫外線は見えず色覚は3原色(赤・緑・青)ですが、アゲハチョウは、紫外領域も含めて5原色色覚 (紫外線・紫・青・緑・赤)を持つため、アゲハチョウの見る世界は、人間の見る世界とは異なっています。これは、ミツバチやモンシロチョウの、3原色(紫外線・青・緑)とも異なっています。嬉しそうに飛び回っているちいちゃんを見て、太陽の紫外線の下で、ちいちゃんには、この世界が虹色に見えているのかもしれないと思いました。

その後、ちいちゃんはエデン農園にいた私のところに戻ってきて、去って行きました。

帰りの車の中で、ちいちゃんとのお別れの動画を見て、涙が止まりませんでした。キアゲハのちいちゃんの生涯は、約1ヶ月です。ちいちゃんと過ごせた時間は、楽しく素敵な時間でしたが、なぜこの世は、永遠ではなく、終わりや別れがあるのか。なぜ、私は、これほど小さな虫とのお別れが悲しいのか。

その時、神様が名前で私達一人ひとりを覚えていることを思いました。

[イザヤ書 43:1]

        だが今、主はこう言われる。
        ヤコブよ、あなたを創造した方、
  イスラエルよ、あなたを形造った方が。
  「恐れるな。わたしがあなたを贖ったか
        らだ。
  わたしはあなたの名を呼んだ。
  あなたは、わたしのもの。

犬や猫などのペットもそうですが、私達人間が名前を付ける行為は、愛情を増すのだと思いました。


そして、自然界にあるものは、全て創造主である神のものであり、神が養ってくださるということを思いました。

[ヨブ記 41:11b]

       天の下にあるものはみな、わたしのもの
       だ。

[マタイの福音書 6:26]

  空の鳥を見なさい。種蒔きもせず、刈り入れもせず、倉に納めることもしません。それでも、あなたがたの天の父は養っていてくださいます。あなたがたはその鳥よりも、ずっと価値があるではありませんか。

アゲハチョウになったちいちゃんの命は、約2週間です。ちいちゃんを放ったのは、台風前で心配でしたが、神様が、ちいちゃんを自然の中で守ってくださることに委ねようと思いました。何よりも、嬉しそうに飛び回っていたちいちゃんの姿を思い出すと、これで良かったという気持ちになりました。

家に帰って、テレビ台の下に、ちいちゃんが、蛹になった時の抜け皮を見つけました。イモムシのちいちゃんの顔だったので、すぐに分かりました。ちいちゃんが居なくなって、寂しいですが、朝のちいちゃん捕獲の格闘があったために、この抜け皮を見つけられて、ちいちゃんが残してくれた形見になりました。


ちいちゃんの抜け皮と蛹の脱け殻


イモムシのちいちゃんの顔

また、弱っていた観葉植物に、ちいちゃんの糞を与えていたのですが、観葉植物が元気になっていました。


ちいちゃんの糞を与えた観葉植物


この夏は、アゲハチョウのあっちゃんから自然農の大切さを改めて教えられ、ちいちゃんを通して、子育て、出産、巣立ちを疑似体験したようでした。夜中にちいちゃんのことが心配になって、起きたことや、ひたすらむしゃむしゃフェンネルを食べるイモムシのちいちゃんに私のくしゃみを浴びせてしまい、びっくりして止まって目をパチクリさせてたちいちゃんや、食欲旺盛になった終齢のちいちゃんのフェンネルがなくなって、エデン農園に急遽取りに行ったことなど、今では良い想い出です。あっちゃんは、フェンネルがなくなってきた時に脱走したのですが、ちいちゃんは、フェンネルがなくなってきた時、脱走せずに枯れて半分種になりかけたフェンネルをかじっていました。あっちゃんよりちいちゃんのほうが無邪気で、イモムシにも個性があることを知りました。羽化する確率はたった0.6%という、キアゲハのちいちゃんをエデン農園に放つことができて感謝でした。





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