"ブッキングイベントで集客10人の壁"をパレートの法則で考えてみる
活動初期はじめたてのバンドにとっての最初の壁
「毎回のライブでお客さんを10人呼ぶ」
この「10人の壁」について、今日は屁理屈をこねてみたい。
まず、初心を思い出してみよう
誰もが最初はみんな初心者です。
初ライブが決まりました。
さて、お客さんを呼ばないと!
でも、まだはじめたてだから呼べる客さんがいてません。
最初はきっと友達に「ライブやるので遊びにきてね」と声をかけたはず。
物珍しさも手伝って、きっとたくさんの友達が遊びに来てくれたことでしょう。
「かっこよかったよ」「また行くから呼んでね」なんて声をかけてもらえたかもしれません。
そして月日が流れます。
月に2~3回のライブ活動、バンド活動も軌道にのりはじめます。
これを半年も続けていく
すると
やったー
この時期は「俺ってバンドがんばってるな~」なんて実感する時期かもしれません。
しかし、その充実度に反比例するように、ひとつの事実が立ちはだかります。
友達がだんだんライブに来てくれなくなります。
※なんとなく図にしてみた
そりゃそうだ。
友達はあくまで友達であって、バンドのファンではないわけで当然の結果。
友達とファンは違う。
それはバンド自身がよくわかっています。
でも、例えば
いまは友達が10人見に来てくれるだけだけで、バンドのファンはいてない
比率で言うと
友達10人:ファン0人
けど、その比率が
友達8人:ファン:2人 → 友達5人:ファン:5人 → 友達0人:ファン:10人
と、いつかなると信じて、ガムシャラに声をかけ続けるわけです。
しかしさらに月日が流れると、バンドもだんだん不安になります。
あれ?友達10人:ファン0人 のままで比率が変わってない。
ファンなんて相変わらずけっきょく1人もいてない…
こんな活動を続けていて、先に果たしてつながるのだろうか?
ファンが欲しい。
①何があっても僕たちを応援してくれて
②twitterでもRTやいいねで応援してくれて
③そしてライブにも毎回 来てくれる
そんなファンが欲しい!
そんなファンが欲しい!!!!!
心の叫び。
実際、若手バンドさんから、これによく似た話を聞きます。
「友達をライブに呼び続ける」という行為の是非はひとまず置いておいて
ファンの定義を考えてみたいと思います。
ライブハウスで活動しているバンドの考えるファンというのは
みたいな人のことをイメージしてると思います。
これを読んでるバンドマン諸氏、どうでしょうか?
そんなファンがまずは10人
そんなファンがいてたら、知り合いにライブのお誘いをこまめにしなくていいもんね
ライブの前に、集客のことについて悩まなくてよくなるもんね
気持ちもかなり楽になるはず。
でも
いきなりは無理だ。
無理なんだよ。
夢を見るな。
物事には順序と段階があるんだ。
自分に置き換えて考えてみましょう。
自分がそこまで熱烈にファンなバンドっていますか?
「いてる!」と即答できたアナタ、それは何バンドぐらいいてますか?
僕の話を例にしてみます。
例えば、僕は奥田民生さんが好きです。
熱烈…ではないにしても、それなりにファンだと思います。
はい。
いわゆる「ガチ勢」の方と比べたら、全然とは思いますが
それでも僕はたぶん自分の人生で、奥田民生さんに関連するもので30万円ぐらいは余裕で使ってると思います。(ちゃんと計算してないのでもしかしたらもっとかも)
…と考えると、一般の方と比べたら、かなりの奥田民生ファンに入ると思うんです。たぶん、奥田民生一般ファン代表です。
一般的なファンって、こんなもんだと思うんですよね。
もちろん「全国のライブツアー追っかけちゃう!」「お布施と思ってグッズもCDも全部買っちゃう!」ぐらいの熱いファンの方がたくさんいてるのも、ライブハウスという仕事がら知ってます。
ここではそんな熱量の強いファンを仮に「熱狂的なスーパーファン」と呼びます。
集客の話をしていて「ファンが欲しい!」と強く言うバンドマン達
実はファンじゃなくて、この「スーパーファン」が欲しい!と言っているんじゃないかな?と思うことがあります。
いやいや、気持ちわかるけど
けっこう図々しいことを言ってないか?
いきなり熱狂的なスーパーファンは無理やろ。
そんなつもりはないとは思うんですけど、これ要約するとお客さんに対して
「おまえの人生を俺のバンドに捧げろよ!」
ぐらいのことを考えてるように思うのです。
段階をふもう。
まずは、ここでの認識を改めてほしい
熱狂的なスーパーファンっていうのはファンの最終形態なので、そんなものをいきなりお客さんに求めるな。
まずは、普通の"興味がある"ぐらいのファンを作ろう。
地道に行こうぜ。
そもそも、知らない誰かに曲を聴いてもらえて「あ、好きかも!」と気にかけてもらえるだけでも、すごいことなんですけどね。
その認識も忘れないでいてほしい。
パレートの法則の話
で、やっと今日の本題
10人の壁の話
パレートの法則というのがあります。
別名 80:20の法則
どういう法則かというと
wikiより引用
大雑把に説明すると
全体の 80%が無駄で、本当に大事なのは20%だけ
らしい。しかも、
成果の80%が、その20%によってもたらされている
らしい
図にするとこんな感じ
働きアリは、2割が一生懸命働いていて、8割がさぼってる…みたいなよく聞く話も、パレートの法則でしょうか。
ただ、これ実は科学的な根拠は何もないらしい
なんとな~く、こんな感じになることが多いよね?ぐらいの法則みたいです。
でも、たしかに自分の経験則にあてはめてみて「これぐらいの割合になってることが多いよな!」とは思います。
パレートの法則を集客にあてはめて考えてみる
これをお客さんの割合にあてはめて考えてみます。
ある日、お客さん(友達)をがんばって10人呼びました。
パレートの法則にあてはめると
あんまり興味がない人 : ファン(好意的な人) = 8人 : 2人
こんな割合になるでしょうか
しかし
先に定義したスーパーファンを求めているのなら、これをさらにパレートの法則にあてはまてみます。
ファン(好意的な人) 2人を100%として、8:2で割ってみると
ファン(好意的な人) : スーパーファン(熱狂的な人) = 1.6人:0.4人
となる。よし。図にしてみよう
なるほど。
熱狂的な0.4人が毎回ライブにも来てくれるようなお客さんになります。
はじめたてのバンドが、がんばってお客さんを10人呼んだ時の比率
こんな感じ
0.4人か。
0.4人ってなんやねん
1人未満
もはや人間にもなれてない
そう。
めちゃくちゃ単純計算なんですけど
10人友達をかきあつめてライブを続けたところで、熱狂的なスーパーファンは1人も生まれないんです。
だから月に2~3回定期的にライブをしてるからといって、
集客5人に満たないようなそんなライブ活動を続けていたところで、絶望的。お客さんなんて増えるはずない。
強引な単純計算ですが、これがパレートの法則をあてはめて僕が考えた、ライブハウスで活動しているジリ貧バンドがおちいってる集客負のループの計算式。
で、ここでツッコミが入ると思います。
毎回、ワンマンライブをやってるわけじゃないでしょ?対バンイベントでしょ?自分たちが呼んだお客さん以外も会場にいてるでしょ?
たしかに。
普段は、4~5バンドが出演する対バン形式とよばれるブッキングイベントに出演することが多いと思います。
仮にイベント全体で30人のお客さんが来てくれていたとして、さっきの計算をしてみる
まずこうなる。
6人ぐらいがもしかしたら好意をもってくれるかもしれない
そして、そのうち6人をまたパレートの法則にあてはめてみると
熱狂的にファンになってくれる可能性のある人数が1.2人となります。
1.2人…
1人
絶妙な数字
0人よりはマシ。
ただ、微妙。
そもそも科学的な根拠のない、おおよその法則なので
1.2人というのは場合によって、0.8人や1.9人にもなりえるわけです。
そもそも30人来ていたとしても、全員が確実にライブを見てくれてるわけではない。
外でお酒を飲んでる人もいるでしょう。
会場内にはいるけど、ほとんど興味なく友達と話してたり、スマホいじってる人もいることでしょう。
そうなると、そもそもの母数…つまり自分のライブを見てくれた人の数が25人に減るかもしれません。
どんどんスーパーファンが出現する比率は減っていきます。
ってことは、30人イベントを見にきてても、けっきょくほぼ0人じゃないか。
絶望じゃないか。
ただ
ただ!!
これがイベントのお客さんが100人になると、なんとか熱狂的なスーパーファンまでギリギリ到達するんです。成立しだします。
100人のお客さん全員がライブを見てくれたと仮定して、上に倣っておおざっぱに数字を出すと
20人ぐらいがもしかしたら好意的に見てくれて、その20人の割合が下図になる
熱狂的な4人が生まれる(かもしれない)。
(この場合は「友達」じゃなくて「興味のないお客さん」が正しいかもしれませんが)
この感じだと、ギリギリ現実的に思えてきませんか?
つまり100人のお客さんが常に入っているころで、ライブを続けていればスーパーファンがバンドにつく可能性が上がる
(厳密には、スーパーファンを増やすためには毎回違う100人が見てくれていないといけませんが)
現実的…と言いつつも、毎回100人のお客さんがいてるブッキングイベントに出演できているバンドなんていてるはずもないので、あくまで机上の空論ではありますが。
しかし
こんなこと言われても無理だし!
ライブハウスなんて客いねーじゃん!
と平日の閑散としたブッキングイベント慣れしてしまってるバンドは思うかもしれません。
だから、Youtube、twitter などのSNSでなんとか知ってもらう母数を増やそうと、どのバンドも悪戦苦闘しているのも実際の話だと思います。
ただ、それがいつの間にか
「twitterでうまくやれば人気がでる」
「MVをバズらせたら人気がでる」
という安直な発想にいきがちな原因な気もして、危険だなとも思うわけです。
SNSでバンドを知ってもらうためのプロモーション的な活動はもちろん大事。
いま活動しているアマチュア/インディーズバンドはライブ以外に、当たり前のようにやらないといけないことが多くて本当に大変だなと思います。
ちょっと同情します。
ただ、それもやっぱり
「曲が良い」
「良いライブができている」
という当たり前の前提があって、すべて成り立つものです。
そして、ライブの動員を他人まかせにしないで「自分達でがんばってお客さんを呼んでいる」という最低条件をクリアしていないと、やはりライブハウスの人としては応援しにくい というのも正直あります。
5組が出演するイベントで
5組がそれぞれ10人ずつ頑張ってお客さんを呼ぶ
それだけで50人のお客さんが来てくれます。
小学生でも計算できる単純な計算。
100人に満たなくても、どのバンドも毎回50人のお客さんの前でライブがしっかり出来てたら、もっと人気バンドも増えてくはずなんです。
そしてライブハウスも盛り上がっていくんじゃないかな?と。
そんな相乗効果。
最後は希望論というか、理想論みたいになっちゃってますが
毎回、どのバンドもみんながんばって10人お客さんを呼んでいいライブをする!ってのが、まずはできる一番 確実な道なんじゃないかと思う今日この頃です。
これを読んでる大きなライブにしかいかないお客さん
「え?10人?たった10人?10人ぐらいすぐに呼べるでしょ?」
と、思われたかもしれません。
ところがどっこい。
ライブの本数が増えてくると、本当にこの「10人を呼ぶ」が壁になってくるんです。
たぶん日本中のライブハウスをメインで活動してるバンドの8割が、この段階で足踏みしてると言っても過言ではないかもしれません。
だからこそ
ほとんどのバンドがつまずいている、この「10人の壁」を乗り越えられたら、一気にいろいろと広がっていくし、他のバンドより頭一つ抜け出せることができるはずです。
これは具体的な根拠はないのですが、ライブハウスで働いてきた人間の実感であり経験則。
だから僕の働いている南堀江knaveというライブハウスでは
「チケットノルマはなし。ノルマはないけど 10人 はがんばってお客さんを呼ぼう!」
というのをひとつの指針としてかかげてます。
最初は本当に大変なのはわかってます。
出来ることはもちろんライブハウスとして協力します。
この辺りの話もじっくり書きたいし、特に活動初期のバンドマンに伝えたいことではあるので、またの機会に。
一緒にまずは10人の壁を乗り越えませう。
いざ、夢の地平へ。
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