【つながっていいとも】第83回 山中拓也さんの 「完成することのない場づくりへの挑戦」 | ゲスト=株式会社BLANC 代表取締役 山中拓也さん
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毎週木曜日12時30分からの18分間のオンライン生配信「つながっていいとも」第83回 2022年2月10日(木)OAのまとめです。
今回のゲストは、第82回ゲストで宮古島でまちづくりのコンサルタントを行う株式会社シグマ 代表取締役社長 佐和田はるかさんのご紹介、 自然や地域と共生するホテル作りを行う株式会社BLANC 代表取締役社長 CEO 山中拓也さんです。
山中さんの「人となり」が存分に伝わってくる18分!
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第83回ゲスト 山中拓也さんとは
立教大学観光学部在学中にシェアハウス事業を立ち上げる。
2012年にスタートアップ支援会社に新卒入社し、HR事業責任者に就任。2016年に同社退社後、ホテル、民泊、レンタルスペースを運営する株式会社TRIPMOLEを創業し、事業譲渡。
2018年5月株式会社RuGu(現 株式会社BLANC)を創業。
自己紹介
株式会社BLANCは、全国にホテルを作っている会社である。
現在は、宮古島近くの来間島(くりまじま)でグランピング施設(RuGu)を運営し、富士吉田市にホテルを建設中であるほか、今後、全国に約10箇所作っていく予定がある。
しかし、単にホテルを作っているのではなく、「自然との共生」「余白を作る」ことをビジョンとしている。日本は、自然が綺麗だけれど建築物が建てられない「自然公園」という場所が、国土の15%を占めている。「自然公園」は、自然が美しいので建物を立てないなどの要件を設けて、その状態を維持している。
そうした美しい場所をただ残すだけでなく「人と自然が共創する」形で、魂を宿すことを大切にしている。そのために、建築物を使わない客室の自社開発を行っている。具体的には、建築確認を不要とし、自然にダメージを与えず、そっと置けばホテルの客室になるもの自社開発し、全国に展開している。
人と自然が共生する形での展開を始めたきっかけは?
きっかけは、宮古島との出会い。2017年に訪問した際、新空港ができることで工事中のところが多かった。美しい自然と工事のギャップにジレンマを覚える中で「ホテルを作らないか」というお誘いをいただいた。
そうして案内された場所が、来間島だった。宮古島と違って、何一つ手がつけられていない自然豊かな場所。半径1.5kmに民家はないようなところで、自然を残して過酷な中でも快適に暮らす方法を考えた。移動型客室プロダクトを使い、建築物を使わずに開発するに至った。
ー建築物を使わずに過酷な自然の中で、快適に過ごすのは難しいのでは??
難しいと思っていた。建物を立てずに過ごす、となると、まず考えるのは「テント」。しかし、来間島の過酷な湿度や夏の炎天下のもと、テントで快適に過ごすのは厳しく、客室を設ける必要があった。
建築確認を取らずにすむ建物となると「車輪」が付いている「トレーラーハウス」として登録する方法がある。しかし、我が社のものは既存のトレーラーハウスとは違うので「新しい客室プロダクト」と呼んでいるものを用いている。
ー場所探しと客室開発を同時に進めているのか?
土地は探していない。「やってます」と発信すると、法人や個人の方々から、自然公園があるとか、建築規制がある中でなんとかしたい、という声が寄せられる。その声に対して、提案していくだけで予定が立っていく。
例えば、スキー場界隈。スキー場は自然公園エリアにあることが多い。なぜならば、自然公園に関する法律は最近できたもので、スキー場が先にあり、(自然公園への)指定は後から、というパターンが多いから。このようなスキー場があるものの、ホテルの増築や新設などの選択肢が取れないような場所で検討するのは、一例である。
人とのつながりを作って広げるには?
ー先週のゲスト、佐和田さんがことを「RuGuから人のつながりを作っている」と紹介されていた。どのようにされているのか。
あえて「不完全なホテル」にし、地域とのつながりを作るようにしている。ホテルは最低限の機能を持った場所にし、朝食の用意やアクティビティは自社でやらずに地域とつながって楽しんでいただく。
例えば宮古島では、地元の方が朝食を届けてくださっている。今後は、食材も地域のものを使うなどにより、ゲストにとってホテルは「ローカルが集約された場所」となることを目指す。
ーお越しになるお客様は、何を楽しみに?
まずは自然。ホテルは自然に接近した存在でありたい。本来であれば、過酷な自然だが、客室というシェルターがある。自然との境界線が分かりづらい状態の中で、眠る体験をしていただく。もう一つは、ローカルの魅力を集約した場所として、楽しんでいただく。
ー地域のひとと一緒にやるのは、難しいのでは?
来間島は人口170人。その皆さんに自分のビジョンをぶつけてみたら、滑った感じがした。その時に、島の人たちにとって昔から馴染みのあるところで、変化を求めてもいないところに「よくしていく」はおこがましい、と思った。そこで、皆さんが大切にされててきたものを、僕たちにも大切にさせてください、という気持ちで臨むことにした。しかし、全員の賛成を得てから始めることは難しい。始めてからの姿勢が大事だと思う。
ー始めてから大事にしたことは?
地元の皆さんの声。住民説明会でのおじいちゃんの話が、とても印象に残っている。自分たちがホテルを建てた場所は、そのおじいちゃんが子供の頃から星を見に来ていた場所だったとのこと。「ここは、宮古島でも一番、星が綺麗に見える場所だと思う。初めてきた方にも、喜んでもらえるだろう」との話を聞き、星空を大切にすべく、街灯を置かないことにした。お客様にはご不便をおかけすることがあるかもしれないが、地元の人が知っている島の良さを味わっていただきたいと思っている。
今後の夢
「余白」という哲学を追求していきたい。作り出したい世界観を「循環の余白」「共創の余白」「思考の余白」の3つに定義している。循環の余白の取り組みでいうと、エネルギー全循環型のプロダクトの開発をしている。現行の「客室プロダクト」も、インフラを通す必要がある。例えば、この森を抜けた10キロ先に100坪の素敵な場所があったとする。しかし、その10キロを経て、電気と水道を通す必要がある。それでは折角の自然を本質的に残せていない。
それに対し、エネルギーを全循環できる仕組みを、滋賀県立大学の教授の方に技術顧問として入っていただいて、研究している。水や電気をつながずに、スタンドアローンで自立循環する体制をを作り始めている。
これができると、ホテルはもちろん、無人島などのインフラない場所を住居としても活用できたり、避難所や海外などで飲み水がなくても暮らせる状態を生み出すことにまで、可能性が広がっていくと思う。業界にゲームチェンジを起こしたい。
第84回ゲスト 池田和法さん
池田さんは「離島引っ越し」を手掛けている。RuGuを開設した際に、結婚式第1号を挙げてくださった方。施設で結婚式ができるかな、と思っていたところにお越しになった。屋根が無いので、雨が降ると大変、などをお伝えしても「雨も楽しみますよ!」と仰ってくださり、勇気を授けていただいた。
MC後記
山中さんの作る場は、自然と地域とお客様をつなぐ交差点、だと思いました。しかもその交差点の作り方が革命的!
ホテルはあえて「不完全」にすることで、地域の人とのつながりや自然を堪能するきっかけをもたらし、ホテル自体をインフラを通さずにスタンドアローンで成立する仕組みを模索。これを思いつき、形にする過程に、すでにおられるのが、すごい!会社が掲げている「完成することのない場づくり」の意味が、かなり伝わってきました。
最後に仰っていたように、きっといろんなところで「ゲームチェンジ」を起こすのだろうな、と伺っていてワクワクした18分間でした!