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ドライミル&ウェットミル見学|グァテマラ・エルサルバドル買付旅行記【vol.2】byロースター萩原

3月18日から10日間、TYPICA Labのメンバーとして、グアテマラ・エルサルバドルにコーヒー豆の買付に行ってきました。

グアテマラ滞在2日目は、いよいよドライミルやウェットミルを見学します。


グァテマラ滞在2日目。Primavera Coffeeのドライミルへ


昨日、日中にたくさん寝たおかげで朝は5時にスッキリと目覚めた。朝食を食べてみんなでバスに乗り込み、今日からいよいよコーヒー生産の現場に向かう。

そういえば昼間のGuatemala Cityを見れていなかったので、ホテルの部屋から眺めてみた。高層ビルが立ち並び、ここから見ると先進国と変わりない(ビルの中身がどうなっているかわからないけど)。

ホテルの前までPrimavera代表のNadineと父親のChrisが迎えに来てくれた。彼らが今回のグァテマラ滞在のアテンドをしてくれる。今日は一日Chrisが一緒に行動してくれるそうだ。
バスに乗り込むと早速Primaveraが運営するロースターLA CENTRAL COFFEE ROASTERのウェルカムコーヒー。huehuetenango/Washed。グアテマラに着いてから飲んだどのコーヒーよりも美味しかった。

まずはパーチメントコーヒーから輸出用のグリーンビーンに最終加工するDryMillへ向かう。道中のバスの中でChrisがグアテマラのコーヒー事情について話してくれた。
50万人の小規模生産者がいるグアテマラには、33の火山がありうち3つは活火山。ミネラルに富んだ火山性土壌がコーヒー生産に適しているという。

特に印象的だったのは、「コーヒーはグアテマラの人にとって誇りとも言える大切なもので、私たちの血にはコーヒーが混ざっている」という言葉。このあと一日彼と行動を共にする中で、心からそう思っているのだということを理解できた。

郊外に向かう道は思いのほか快適で、路面状況が特別酷いということはなかった。住宅や商店がなくなり山道に入ると、日本の田舎と何も変わらないと思ったほど。ただGuatemala Cityに向かう反対車線の渋滞が深刻で、3レーンの広い道路にカラフルなバスや4WD車が長い列を作っていた。出勤のための渋滞だと言っていたが、Cityに着くのは昼頃になるのでは、と思ったくらい。

ナチュラルプロセスとハニープロセスの乾燥工程


約1時間ほどして、Primavera Coffeeのドライミルに到着。選別とレスティングを行う巨大な倉庫があり、その奥にはパティオが。
ナチュラルとハニープロセスの乾燥が行われていた。

ドライミルは丘の上のようなところにあって、標高は1,000mくらい、雲がとても近く感じた。日差しは強かったが、吹き抜ける風が心地よくて、乾燥中のナチュラルプロセスのチェリーから芳醇な果実の香りが漂っていた。施設も清潔で整然とした印象があり、Primaveraのクリーンなコーヒーが生まれるのにも、とても納得できた。

パティオにチェリーが広げられた光景は、写真や動画では散々見た景色だったが、やはり実物を見たときには心が躍って、思わず声を上げてしまった。

ナチュラルプロセスの乾燥工程
ハニープロセスの乾燥工程

ドライミルでの作業


このドライミルでの主な作業は、豆の選別と水分値を安定させるためのレスティング(保管して寝かせること)。
選別の工程は実際に機械を動かして見せてくれた。

遺物除去→サイズ分け→比重選別→カラー選別と、
巨大な機械が轟音と共に駆動して生豆を選り分けていく。

このときに見せてくれたのはコモディティグレードの豆だったが、選別を経た生豆の面はとても綺麗で、見るからに美味しそうだった。

選別が終わった生豆

サイズ分けの段階で小粒のピーベリーは選り分けられて、安価で国内向けに販売してしまうらしい。
FINETIME近藤さんやsimaji coffeeの島さんと、これ飲んでみたいよね、という話をしていた。

選り分けられたピーベリー。国内用に安価で売られてしまうらしい
取り除かれた石などの異物

レスティングの倉庫では一定の水分値に安定するまで、パーチメントコーヒー・ナチュラルドライが完了したチェリーを麻袋に入れて保管している。
上述の選別工程に回されるのを待っている状態だ。
袋には生産者番号と生産袋数が記載されていて、トレーサビリティがしっかりと管理されていた。
この生産者番号を参照すれば、ロットごとのカップクオリティやいくらの報酬が支払われたかなどの情報が確認できるそうだ。

例えばこの”R248″は生産者コード、”7SACOS”というのは7袋、という意味。7袋しかない超マイクロロットだということがわかる。

倉庫を出るとたまたまナチュラルプロセス専門で行なっている小規模生産者Fredyさんが乾燥が終わったチェリーを運び込んでいた。

彼はこのドライミルから北、標高1,800mの農園でゲイシャやパカマラ、カトゥーラを栽培しているそうだ。
以前はチェリーの状態で売っていたそうだが、4年前から自分でナチュラルの精製を開始。
それによってユニークで希少性のあるコーヒーが作れるようになり、より対価を受け取れるようになった。

Fredyさんは、「僕ら消費国の人間がハイクオリティなコーヒーをちゃんと評価して、価値を感じて消費してくれるからだ、おかげで15人いるスタッフにもちゃんと報酬を支払える、ありがとう」と言ってくれた。

何故ナチュラル専門でやっているのか聞いたところ、「1番環境に優しいプロセスだから」と言っていたのが印象的だった。
行きのバスでChrisが言っていた自然エネルギーの話にも繋がることだが、こうした小規模なコーヒー生産者レベルでも環境に対する意識が高いことに驚いた。
農業であるコーヒー生産にとって環境問題はシビアな問題で、本当に真摯に取り組んでいるんだなと実感した。

ここからまたバスに乗り込んで、今度は主にコマーシャルコーヒーの生産を行う農園とウェットミルに向かう。

Finca El Zapote農園へ


バスでグァテマラのローカルな街をまた1時間ほど走り、Finca El Zapoteという農園に向かう。
途中から急に道路が舗装されなくなり、15人ほどを乗せたバスは大きくて揺れながら走った。

すると、車窓に突然コーヒーの木が植えられている景色が広がる。バスの中から歓声が上がった。
ここの標高は約1,000mくらい、200haの広大な敷地でコモディティコーヒーを栽培している。
長い下り坂の両サイドに見渡す限りコーヒーの木が植えられている光景には心躍った。

途中、一部の区画でコーヒーの花が満開に咲いていた。
白くて小さなこのコーヒーフラワーは、一年に3日間しか咲かないらしい。
その貴重な瞬間に立ち会えたのは本当に嬉しかった。
嗅ぐとライムのような爽やかな香りがした。
隣の区画はまた違う品種のようで、こっちはさらに甘い香り。
コーヒーは花の香りも品種によって違うと知って感動してしまった。

花が咲き終わって散ると、緑色の小さな粒が枝に残り、この部分がコーヒーチェリーとして結実する。
開花のタイミングから収穫時期が予想できるらしく、この辺りは11月10日ごろに収穫できるらしい。

この緑の軸のような部分が将来コーヒーチェリーになる

コーヒーの木はきちんと整列して植えられていて、一定の間隔でバナナがシェードツリーとして植っていた。
バナナは育つのが早く、もちろん美味しく食べられるうえに、土壌に養分を残して成長してくれるので、コーヒーのシェードツリーに最適なのだという。

コーヒーの木の列に沿うように足元に黒い管が走っていて、それを通して水量をコントロールしている。
昨年は雨が少なく、そのせいで一本当たりの収量が少なかったそうで、今年からこのシステムを導入したそうだ。
最終的な結果はチェリーを収穫してみないとわからないが、今のところ開花の数はとても多く、進捗は上々らしい。

この広大な農園でチェリーを摘み取るピッカーは、最盛期で400人必要になる。
ただ、近年ではアメリカへの移民などが理由で人手不足で、100人くらいしか集まらないこともあるらしい。
また、コーヒーの育成に必要な肥料も数が足りないため、価格が2〜3倍に上がってしまっている。
これらの問題はすぐに解決できるものではないが、トライ&エラーを繰り返しながらビジネスの継続を模索しているそうだ。

ここはコモディティコーヒーの栽培を主に行っている農園だが、この問題はスペシャルティコーヒーに取り組んでいる農園でも変わらない。
コーヒーの仕事を持続していくために深刻なこれらの問題に対して、いち消費国のロースターとして何が出来るのだろうか。
すぐに答えは出ないけれど、考え続けて行動していく必要性を強く感じた。

ウェットミル見学


次に収穫したチェリーからパーチメントコーヒーへ加工するウェットミルを見学。
ウォッシュドプロセスの発酵槽と、パーチメントコーヒーの乾燥を行うコンクリートパティオ、メカニカルウォッシュ用のドライヤーを見せてもらった。

パーチメントコーヒーの乾燥を行うコンクリートパティオ
ウォッシュドプロセスの発酵槽


メカニカルウォッシュ用のドライヤー

どれもとても大きく清潔で、コモディティコーヒーのスケール感を肌で感じることができた。ここでもやはり、知識として知っていることと実際に目にすることは大違いなんだと実感した。

ウェットミルに併設のレストハウスの中庭で昼食


そのあとはウェットミルに併設のレストハウスの中庭で昼食。Chrisがサンドイッチとフルーツ、この農園で採れたコーヒーを振る舞ってくれた。
プール付きの美しい庭に爽やかな風が吹き、とてもリラックスした時間を過ごすことができた。

ここで Chrisが話してくれたことだが、彼は以前日本の大手飲料メーカーの缶コーヒーの原料提供をしていたそうだ。
当然とても大きな取引で、日本人はたくさんコーヒーを飲むんだなと思ったそうだ。
しかし、ことスペシャルティコーヒーのカフェ文化で言えば、日本はまだまだ欧米や他のアジアの先進国に比べて遅れをとっていると言える。
歴史的にコモディティやRTDが浸透しきっていて、これからさらに人口も減っていく日本のマーケットでスペシャルティを持続的に発展させていくには、やはりただ単に良いものを仕入れて売る以上の工夫が必要になると強く感じた。

農園を後にしたバスは、今夜の宿泊先であり、明日の農園視察の目的地でもあるグアテマラの古都Antiguaに向かう。

道中、BAGTOWN COFFEE山本さんとお互いのお店や家族について話をした。
広島でお店をされている山本さんとは今回の旅で初めてお会いしたが、きっとこの機会がなければお話しすることもなかったかもしれない。
10日間の旅を通して新しい友達が増えることが本当に嬉しい。
きっと今回のメンバーとはこれから先もずっと付き合いが続くような気がしている。

翌日はいよいよスペシャルティコーヒーの生産に取り組む小規模生産者さんの農園へ向かう。
今日見たコモディティ中心の農園とどのように違うのか、生産者さんと話をしながら見ていけたらと思う。



THE COFFEESHOPロースター萩原が、2023年3月に訪れた、グアテマラ・エルサルバドル。
現地の農園や精製場をまわり、生産者の方々の話を聞き、たくさんの豆をカッピングし、これはぜひ皆さんに届けたい!と思う豆を買い付けてきました。
この豆が船に揺られ、ついに日本は渋谷・富ヶ谷のROAST WORKSに到着!
現在好評発売中です。

◼︎THE COFFEESHOP
- ROAST WORKS
住所: 〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷2-22-12 1F
営業時間:9:00-17:00
※席あり 3席
電話番号 TEL.03-6407-1344
最寄駅 駒場東大前駅:徒歩約13分 / 代々木上原駅:徒歩約15分

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