【めくるめく】わたしはそれを「しあわせ」と呼ぶ。
11月になりました。
この月には、大相撲九州場所が開催されます。
むかし、NHKテレビで相撲中継を見ている父のそばで、子どもだったわたしもなんとなく取組をみていたりしました。でも力士の人はいずれもよく似た顔つきで誰がだれだかよくわからず、また、「東方、大関前の山、大阪府守口市出身、高砂部屋」といった呼び出しの声が気だるく感じられて、幼かった頃は相撲をみることはあまり好きではありませんでした。
あれは貴ノ花(初代)が三役に上がった頃だったと思います。
その整った顔立ちもあってか、貴ノ花はすでに人気力士のひとりでした。
ハワイマウイ島出身のジェシー高見山大五郎と人気を二分していました。
貴ノ花は、今でいうと母の「推し」でした。
彼がテレビ画面に映ると、床のうえをせわしなく動く昆虫をみつけたネコのごとく、母の両目はかっっっと見開かれ、食い入るように土俵に見入っているのでした。
今なお語り継がれる伝説の大横綱大鵬との取組では貴ノ花が勝ち、その一番が大鵬の現役生活にピリオドを打つことになりました。
後世「かばい手」論争として永く語られることになる横綱北の富士との取組。そのときは行司差し違えで浴びせ倒して北の富士の勝ちとなりましたが、その翌場所では再び行司差し違えでこんどは貴ノ花の勝ちとなるなど、話題の多い力士でした。この頃、わたしも急速に大相撲に詳しくなっていきました。
九州場所。
正式には十一月場所と呼ぶらしいのですが、わたしがまだ相撲に詳しくない頃も、詳しくなってからも、九州場所の15日間の期間中に、わが家ではこたつを出すことになっていました。
千秋楽の日曜の夕方。こたつに入ってほっこりしながら大相撲中継をみる。わが家の冬のはじまるときでした。
社会人になって実家から離れて暮らすようになって以降、こたつを使っていません。代わりにホットカーペットを使っています。
こたつの代わりなのでホットカーペットも九州場所の期間中に出してくることにしています。ホットカーペットのスイッチを入れて、身を横たえ、仰向けになり背中をカーペットにくっつけると、ドーパミンやらセロトニンやらノルアドレナリンやら脳内物質がどばーっと出て、得も言われぬ多幸感に包まれます。
いつの頃からかわが家ではホットカーペットのことを「しあわせ」と呼ぶようになりました。
九州場所始まったし、そろそろしあわせになろうよー。
毎年、クローゼットからホットカーペットを取り出す際は、だいたいこのような会話がきっかけになっています。
マクノシタという名のポケモンがいるとききました。
それが進化するとハリテヤマになるそうです。
大笑いしました。