"相手を読め"が失敗した時の精神的影響 (無料)
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私たち日本人の中では、
"相手を読む"
と言う美徳が存在しています。
相手の考えてることを察して行動するということになるでしょう。
今回は、この相手を読む行為をしている時に私たちの内側で起きている精神的な動きについて紹介したいと思います。
"言われる前に行動しろ、考えればわかるだろ"
と、なぜか言われます。
それも、なぜか言ってる人が思ってること通りに行動しろと。
実際に、
私達は他人が頭の中で考えていることを読むことは出来ないです。
では、たまに他人が考えてることを当てられる人がいますが、あれはなぜなのでしょうか。
おそらく、考えてることを指摘するまえに、色々と質問をしたり、ある程度時間をかけて他人がしていた前後の言動を観察したりしていることでしょう。
つまり、考えそうなことを絞っているのです。
ですから、例えば会社で上司から先程の
"言われる前に行動しろ、考えればわかるだろ"
を唐突に言われた場合、
期待されている行動をすることは不可能です。
もし、唐突ではなく、情報を共有をしていた時であったとしても、何を求めているかを伝えられていなければ、すべきことを推測することもできません。
また例えば、
"今までやってきたのだからわかるだろう"
となるかもしれません。
しかし、以前と状況が全く同じということはありえませんので、頭の中にある求めていることをシェアしてもらわなければ、思い通りの結果に結びつける事は難しいでしょう。
生産性という観点からみても、このようなことを何回も繰り返してしまうと偶然の一致を追い求めているような形になってしまうので、効率も悪く生産性も落ちます。
他人が何を考えているかを読むことは、
存在しない、根拠もない情報を得ようとすることです。
言葉として発せられていないので、それが合っているかどうかも確かめようがないです。
この相手を読めというのは小さい頃からそうするように教えられてくることが多いのも事実です。
子供の頃は、それを行った際に、もし親や周りの大人が期待するような結果を当てることができたときに、それが成功体験となります。
つまり、それを行うことが強化されます。
ちなみに、
"人に言われる前にやりなさい"
と言うのは自発性を求めているので相手を読むとは異なります。
この相手を読むということ、一見良いことのように思えますが、これには裏がある可能性があります。
どういうことかと言うと、子供は以降、無意識に相手の頭の中を読むことにトライするでしょう。
先ほども述べましたが、偶然にあたると言うことも考えられるわけです。
ただし、当たらない確率の方が高いです。
そうなったときに、子供は親や周りの大人がネガティブな反応を見せることに対し、ショックを受け、傷つくことになります。
自分が褒められるのは相手が考えている事を読んだ時であると思い込んだ時、確率の低いことを求めるようになって行きます。
"今、私が、ママが、パパが何を思ってるか、考えてみなさい"
そして確率が低いが故に、当たらないことが頻繁に多くなり、
自分の存在価値を見失うことへつながることもあり得ます。
もしくは、常に相手の言動を常にうかがわなければならないので、精神的な負担になります。
これは大人になってからも引き継がれるものです。
良い結果を生むこともありますが、他人の言動に焦点を当てることにウェイトを置いているが故、目の前のことに集中できなくなることがあります。
マインドフルネスと言う言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、それとは真逆の方向へ行ってしまいます。
つまり、常に自分の頭の中で何かを考えている状態、意識が自分の内側に向いてしまっている状態になってしまいます。
意識が自分の内側に向いてしまえばしまうほど、考えなくても良いことを考え出し始め、不安に駆られるようになり、そしてまたそれが不安を煽り負のループへと入っていってしまいます。
加えてさらなる弊害が起きてくるかもしれません。
根拠のないことを追い求め、信じるようになるにつれて、他人はこう思っているに違いないというふうに変化していく可能性があるということです。
何が起きてるかというと、ネガティブなことをも信じるようになってしまうということです。
例えば、あの人は私のことが嫌いに違いないや、誰も私と何か話をしたくないに違いないなどが一例です。
これらは思考の歪みということにもなります。
証拠もない、証明すらできないこと、または先の不安について考え、恐怖を抱いてしまうのです。
恐怖を抱き、不安になってしまうと、私たちは行動をすることができなくなってしまいます。
つまり、コミニケーションをうまく他人と取れないようになってしまうことへ繋がっていってしまうことがあるのです。
さらに、
カルチャーとして相手の考えを読む事が恒常化してしまうことによって起きるコミニケーションの不和について話します。
相手の考えを読もうとすること、それがみんながすべき常識と思うことによって起きるストレスのうち、1つのシチュエーションを例に出します。
それは、電車の中で降りる時など目の前に人がいるときに、
"すいません降ります"
などと声をかけないことです。
このコミニケーションが起きないことによって、発する側、受け手、そしてその周りにいる人たちにとってストレスになる可能性があります。
それは、
後ろに人がいるんだから気づきなさいよという降りる側の人の苛立ちやストレス。
圧力をかけられている、どける側のストレス。
また、両者の予測できない行動による、周囲の人達のストレス。
これらは、降りる側の人が一言声を出すだけで全てがスムーズに流れるようになるでしょう。
私が考えてることを読みなさいではなく、声を一言かけるだけで、全員が一瞬で情報を共有できるようになります。
そして、電車の中という状況から、降りるという目的を考えつくことができます。
つまり情報を共有できるという事は、予測がつくと言うことになります。
私たちは予測ができないことに直面すると、ストレスを感じます。
それゆえ、私達は毎日、ストレスを自分で生み出している可能性があるのです。
脳科学におけるマインドリーディングでは、人が特定の他人の表情を観察した時の、脳内の血流のデータを収集したりして、どのようにして表情を認識するかを研究しているようです。
人の脳は何かを区別をする時に、脳の一つのエリアだけを使っているわけではなく、3つから4つのエリアを複合的に使っているということです。
つまり、脳の中で起きる活動も個体差があるため、相手を読むことは複雑で簡単にはいかないということなのでしょう。
加えておきますが、
共感という言葉を聞いたことのある方もいると思います。
コミュニケーションにおいて共感することはとても大切です。
しかし、
"相手を読むこと"と"共感をすること"
は全く異なるものです。
社会で生活する上では、
言われないとわからないからコミニケーション力がないと思っているのだとしたら、そうではなく
どちらかというと逆です。
相手にしっかりと情報を共有できる話せる能力、言葉を紡ぎ出せる能力がない人の方がコミニケーションに難がある状態だと言えます。
共感は相手が感じていることを察する能力です。
同調できる能力ともなります。
これは他人と精神的に繋がるための礎になってくれます。
で、どうすればいいの?
- 会社に所属している人であるならば、効率性、生産性を優先的に考えることに焦点を当ててみると良いかもしれません。つまり、それは会社の業績に直結するものです。効率性、生産性を考えるならば、考えていることを読むことをせず、口頭で伝えた方が良い事は想像がつくと思います。頭の中を読むためには前後の行動、または前後の文脈の情報を収集しなければなりません。それは、数時間、数日かかることもあるでしょうし、何週間もかかってしまうこともあり得ます。ならば、口頭で思っていることを伝えれば数分で共有することができ次の行動へ移すことができるでしょう。
- 自分がなぜ相手に自分の頭の中を読ませようとするのかを考えることも大切です。その背景にあるものは、もしかしたら支配欲かもしれません。誰かが自分のために動いていると実感できるものを欲しているのかもしれません。自分の満たされない部分を埋めるために、他人を利用し、いわゆるマウントを取るような形になっているかもしれません。マウントを取ることのほとんどは、自分の精神を安定させるためと考えられます。という事は、自分の精神を安定させることを第一の優先事項と考えた方がより健康的でしょう。
- 思いやる文化と捉えられることもあると思います。これは相手がされて良い思いをすることなのでしょう。思いやりに関しては、相手からの見返りを求めないことが前提になっているのだと思います。とりわけ会社で、さらに信頼していない人が相手となると、見返りを求めない行為は難しいでしょう。おそらく思いやりで相手のことを考えることと、一般的に相手の考えてることを読むことの違いは、あらかじめの期待が相手からあるかどうかなのかもしれません。期待はプレッシャーへと変貌遂げることが大いにあり得ます。そしてそれは精神的苦痛へとつながります。例えば、お客さんへの思いやりのある行動はサプライズであることが多いです。その時は相手の考えを読む人(店側)からしても見返りを求めていませんので成立しやすいのだと思います。
- 思ったことを口に出す事は悪いと言われがちですが、思ったことをすぐに口に出せる状態にしておく必要はあると思います。コミュニケーションの1つとして、相手に自分の考えや思いを伝えることに慣れておく必要があると思います。これは個人的な考えになってしまいますが、相手に頭の中を読めと言っている人は、どちらかとコミニケーションに難がある人によく見られる傾向だと思っています。実際に自分の考えを話す事は怖い事でもあります。どういうことかと言うと、言葉にして発することでそれを否定、批判されてしまう可能性が出てくるからです。本能的に自分を守りたいですし、傷つく事は避けたいのが私たち人間です。理解はできますが、自分をオープンにし、ある程度の痛みを許容できるような自分でいたいものです。
- 電車の中であまり声をかけないという人は、電車の中で声をかける練習から始めてみましょう。知らない人に対して自分の意図や考えを伝えることをすることで、自分の知っている人に対して行うことへのハードルは下がるでしょう。コミュニケーションが苦手、傷つけられるのは怖いと思っている人は特に、この辺が1番とっかかりやすいものだと思います。思ってることを口に出すことでストレスも減少するでしょう。
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