戦争をなくすために | SDGs歴史編〜 アメリカ超絶主義とヒッピー 〜
”SDGsの歴史について知れば、SDGをさらに深く理解することができます。”
※ こちらを先に読んでいただくとよりわかりやすくなります。
アメリカ合衆国の19世紀前半、特に1830年代から1840年代にかけて、ニューイングランド地域でアメリカ超越主義が花開いた。この哲学的および文学的運動は、個人の直観と自然界との結びつきを通じて、究極の真理に到達できるという信念に基づいていた。個人主義を重んじ、自然との深い関わりを通じて人間の精神が成長すると考えられた。超越主義者たちは、社会や宗教的な慣習を超えた、より高い理解を求めた。
この運動の中心人物には、ラルフ・ウォルドー・エマーソンとヘンリー・デイヴィッド・ソローがいる。エマーソンは『自然』を著し、超越主義の思想を広めた。ソローは『ウォールデン 森の生活』で自然の中でのシンプルな生活を通じて、社会と個人の真の本質を発見できると主張した。彼らは奴隷制度の廃止や女性の権利など、当時の社会問題にも積極的に関与している。
アメリカ超越主義の精神は、後の世代の環境運動や個人主義的な生活哲学に大きな影響を与えた。この運動は、自由と個人の価値を高め、現代まで多くの人々に影響を与え続けている。
ジョン・ミューアは、この運動が花開いた何十年も後の人物だが、彼の自然保護に関する哲学は超越主義の影響を受けている。ミューアはアメリカ自然保護の父と呼ばれ、カリフォルニア州のヨセミテ渓谷とシエラネバダ山脈の保護に生涯を捧げた。彼は自然保護団体「シエラクラブ」を設立し、その初代会長となった。ミューアの自然に対する深い愛と保護の必要性に関するメッセージは、多くの人々に自然の価値を再認識させ、自然保護のための行動を促した。
アルド・レオポルドは『サンドカウンティのアルマナック』で、自然と人間との関係についての深い思索を展開し、「土地倫理」という概念を提唱した。これは、人間が自然環境とその中の生物に対して倫理的な責任を持つべきだとする考え方である。
レイチェル・カーソンは、レオポルドの数十年後に活躍したが、彼女の『沈黙の春』は、農薬使用による環境への影響について広く警鐘を鳴らし、現代の環境保護運動に大きな影響を与えた。彼女の科学的調査と警告は、環境政策における重要な変革へとつながり、DDTの使用禁止や環境保護機関の設立など、具体的な政策変更を促した。
1967年、スウェーデンの科学者スヴァンテ・オーデンは酸性雨のメカニズムを解明した。オーデンの研究は、大気中の汚染物質が酸性雨を引き起こし、森林や湖、建築物を含む広範な自然環境に深刻な影響を与えることを示した。この発見は、人間の活動が地球規模で自然環境に悪影響を及ぼすことを科学的に証明した初めての例の一つである。
彼らの自然への深い愛と尊敬の精神は、ヒッピーカルチャーにおける環境保護の理念へと繋がっていった。自然との調和を求め、社会改革に努めるヒッピー運動の価値観に大きな影響を与えた。
ヒッピーカルチャーが注目したのは、単に政治的な抗議や文化的な反逆ではなく、生態系との調和した生活と、地球上のすべての生命との平和的共存の追求だった。彼らは、先人たちの意思を受け継ぎながらも、それを自分たちの時代の文脈で再解釈した。ヒッピーカルチャーは、これらの理念を社会全体に広めるための新たな方法を模索し、環境保護運動の新たな波を形成することになった。
つづく…
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