ビールの概念をひろげる人生を歩みたい。
「クラフトビールをつくるブルワー(醸造家)になる」
7月頭から国内外のブルワーさんの記事やビール関連の本を読み始め、この目標を決めたのが、7月の終わりごろ。
8月末で会社を辞めて、9月は2週間かけて中四国のさまざまなブルワーさんにお会いしに行って話を伺った。
先輩ブルワーのみなさんのお話を参考に、ブルワーになるための道筋もおおまかに決めて、10月半ばにはこれまで住んでいた地元・岡山県倉敷市から地域おこし協力隊として高知県に移住することが決まった。
そして1週間後の11/30(月)、5年連続水質日本一に輝く「仁淀川(によどがわ)」の中流域にあたる、高知県日高村にお引越しをする。
この記事では、この期間に考えたこと、やったこと、感じたことなどを、備忘録として、そして決意表明として残そうと思う。
記録と自分の頭の中の言語化がメインの目的ですが、新たな道を選択しようとしている、どこかの誰かのなにかしらのプラスに少しでもなれば、とても嬉しいです。
髙羽 開(たかば かい)といいます。
前の会社にいるときに、仕事で学んだことのアウトプットの場として始めたnote。
初めて記事を書いて半年が経ってしまいました。前回の記事では自己紹介として僕が人生を通して大切にしていきたいことについて書きました。お時間があるときにこちらもぜひご覧ください。
現在27歳。1993年に岡山県倉敷市に生まれ、岡山大学卒業後、大手海運会社や地元・倉敷のローカルベンチャーで働き、現在に至ります。
好きなものは、ビールとサウナと薬味。興味があるのは、ものづくりとハーブとスパイスと文化人類学です(ものづくり以外はここ数ヶ月で興味を持ち始めたことばかりですが)。SDGs(持続可能な開発目標)についても積極的に情報摂取をするようにしています。
あと、最近髪の毛をばっさり切って明るくしました(写真を撮らなさすぎて、居酒屋で赤い顔をした写真しかありませんでした)。
点と点を繋げて行き着いた「ビールづくり」という道
「なぜクラフトビールづくりなのか?」
この道を進むことに決めた今思えば、「これしかない」という感じだが(きっとそんなことはない)、今までビールにまつわる会社に所属したこともないし、発酵や醸造の勉強をしたこともない。
でも、「ものづくり」はずっと身近にある人生だった。
僕の叔父は、趣味でウクレレやギターといった楽器を作ったりする。その叔父の兄である父は、DIYが趣味で何でも自分でつくる。まじで何でも。以前、中古車を買って車の外壁?部分をすべて自分で付け替えて、内装もガラッと変えて、ワーゲンバス(もどき)をつくったりもしていた。母は絵を描くのが好きで、最近はよく、ちくちくと縫い物をしている。
祖父と兄は大工で、ものづくりを生業にしている。前職時代、自社で運営するライフスタイルショップをリニューアルするときに、什器(商品を並べる棚やレジカウンターなど)一式の制作を兄にお願いしたこともある。
仕事においても、上に書いたショップが岡山県内のこだわりの品々をセレクトしたお店だったり、オリジナル商品として県内の生産者の方にOEMをお願いしたりもしていたので、作り手さんと関わる機会もたくさんあった。また、社内にパティシエ、料理人、陶芸家もいた。
いいものをつくる人は、一人残らず人としても素晴らしくて、人や自然に敬意を持ってものづくりをする彼ら彼女らに自然と憧れるようになった。
公私ともにそんな環境で過ごすなかで、ものづくりに対する興味関心は日に日に強くなり、摂取する情報も国内外のものづくりに関するものが増えていった。
そんな中、コロナで世界が一変した。世界中で多くのルールが代わり、さまざまな点で世の中がリセットされた。また、「死」というものをこれまでにないほどリアルに感じる機会が増えた。
世の中のこと、自分のこれまでとこれからのことを改めて見つめ直す数ヶ月を過ごした。そして、一度しかない人生自分は何をしたいのかを考えた結果、自分の手で何かを創り、世の中に届けたいと思った。
「じゃあ何をつくろうか?」
真っ先に浮かんできたのが、ビールだった。
別にビールに詳しいわけではなかった。クラフトビール好きで月に何十種類のビールを飲んだりもしていなかった。大手ビールメーカーが作るビールを飲み続けてきた、どこにでもいる、ただのビール好きだ。
でも、大学でお酒を飲むようになってから、ビールにめちゃくちゃ人生を豊かにしてもらってきた。ビールが無かったら、今ある大好きな友人たちとの関係性の多くは果たして存在していたのだろうかとさえも思う。
ビールには、「黄金色の発泡したアルコールを含む美味しい液体」という、物体そのものの価値以上の価値がある(おそらくこれを読んでいる方々も経験上知っているだろう)。僕の場合は、人とのつながりという、(僕にとって)この世で一番価値のある恩恵をビールによって受けてきた。その度合いでいうと、一般の人の比じゃない自信がある。
一瞬話が脱線するけれど、この間Twitterに「ブルワーになる」という決意をツイートしたとき、複数の友人が「ぴったりすぎてニヤけたよ」「開の天職やな」「完成したら絶対買う」などとメッセージを送ってくれた。
そう思ってくれた友人がいることに、こちらがニヤけまくった。
もうひとつ大きかったのは、ビールに言語は関係なく、世界中で愛されているということだ。そのクオリティ次第では海外に輸出(もしくは海外で製造して販売)することだってできる。
学生時代にカナダに留学し、東南アジアを旅した経験から、海外で働きたいという思いが強く、新卒では貿易に関わる仕事に就いた。当時からある海外志向は、今も変わらず強く持っている。
そんな自分にとって、「ビールづくり」はこの上なく辻褄が合ったのだ。一度しかない人生だから、できるだけ過去の点と点がつながっている生き方の方が、生きていて楽しい気がするのだ。
「ビールそのものの価値以上のもの」の可能性を人一倍信じ、就活以来ひさしぶりにやった自己分析で「ビールづくり」という仕事にめちゃくちゃ合点がいった僕は、そこからビールに関する本や記事を調べだした。
日本人ブルワーのパイオニアへの弟子入り志願
いちはやく成長するには、(自分が努力することが前提で)やっぱり環境が大事なので、とりあえず「日本一 ブルワー」でググってみた。
わかりやすく日本一のブルワーとして紹介されている人はいなかったものの、『石井敏之』というブルワーさんが最も多くヒットした。
記事を見てみると、憧れざるを得ない情報がたくさん載っていた。
8,000ものブルワリー(醸造所)が存在するアメリカで、今や10本の指に入る生産量を誇る『Stone Brewing』の黎明期にブルワーとしての経験を積んだ。
帰国後は、現在国内のクラフトビール業界で最大手でもあり、よなよなエールでおなじみの『ヤッホーブルーイング』でCOOやBrewmaster(醸造責任者)を務めた。
その後独立し、グアムで『ISHII BREWING COMPANY』を立ち上げ。日本人として初めて、アメリカ国内でオーナーブルワーとなる。
「この人しかいない!」と思い、ビールへの思いと自分のスキルや人格を書いた「弟子にしていただけませんか」という旨のメールを送った。
結果は、だめだった。
コロナの影響でグアムへの観光客が激減し、自主廃業という選択をせざるをえなくなった、というお返事をいただいた。
石井さんは、断りの返信に、たくさんのアドバイスも添えてくださった。
コロナの影響で求人募集をしていなければ、直接門を叩けばいい。まずは飲みに通って馴染みの客になり、そこから中に入ることもできる。
日本で起業した外国人ブルワーから海外への紹介もある。
海外の醸造学校へ入って勉強するという手もある。
なぜそうやるのか?なぜそうなるのか?「今までそうしてきたから、前任者がそうしていたから」ではダメ。なぜなぜなぜの回答に対し、海外のブルワーは確信を持って答えてくれる。
重要なのは「違いを知る」ということ。他流を知らないと、王道とか正道とか判別できない。逆もまたしかり。
そして、メールの最後はこう締めくくられていた。
夢が叶う様に、ひとつひとつ頑張ってください。
Cheers!
「何てかっこいい方なんや」と思った。石井さんは、会ったこともなく、自分のビールを飲んだこともない若造に、具体的な道を示してくださった。
「これはもう、愚直にアドバイスに従うしかない」
そう思い、門を叩きにいくことを決めた。
石井さんだけじゃない。実直で温かいブルワーという人種
コロナのこともあり、あまり遠くのブルワリーに行くのもと考え、中四国のブルワーさんたちに「ブルワーを目指しています、お話を伺わせてもらえませんか」という旨のメールを送りまくった。
お送りしたブルワーさんからの返信率は100%だった。そして、ほぼすべてのブルワーさんが、快くOKしてくださった。コロナ感染の可能性もあり、直接会うのは難しいという方もいらっしゃったが、その方々もZoomやメールでご対応くださった。
そして、3週間のブルワリー巡りをおこなった。
ビールの知識も乏しく醸造経験もない僕がお相手にできるお礼は、1本でも多くのビールを買うことしかないので、夜は車中泊をして宿泊費用は全てビール代に回した(車中泊をマスターした記事も書ける気がする)。
立地、設備、生産量、人数、ターゲット、販売形態、ビールの種類、ブルワーになった経緯。当たり前のことだけど、1つとして同じブルワリーはなく、1人として同じブルワーさんはいなかったが、共通していたことがあった。
それは、みなさん1人残らずオープンで、とても率直にアドバイスをくださったことだ。
まずはある程度規模のある会社で基礎を学ぶのがいい。
ブルワリーの増加数に対して、市場の伸びがついてきていない。
自分でつくってみるのが1番はやい。
すぐに1人でやってみるのはおすすめしない。まずはじっくり経験を積んだほうがいい。
海外出身でホームブルーイング(自家醸造)で経験を積んだ人の下で働くのがおすすめ。
1人ではじめると雑務に忙殺されてしまう。
決して甘い世界ではないということを、どのブルワーさんも節々で伝えてくれながらも、多くの方が「それでもビールの仕込みは楽しくてしょうがない」とおっしゃっていた。
「作りたいビールがありすぎて、一生じゃ足りない」という方もいた。
また、話を伺った帰り際に、「わからないことがあれば、いつでもメールくださいね」とたくさんの方がおっしゃってくださった。
「何てかっこいい方々なんや」
岡山に帰る車の中で、石井さんから返信をいただいたときと同じ感情を抱くと同時に、ブルワーになる決心を新たにした。
1人でも多くの人の、ビールの概念を広げる人生がいい
日本の大手ビール会社が作っているビールは、「ピルスナー」という種類のビールが大半を占める。なので、日本人の多くが日頃飲んでいるビールはだいたいピルスナーだ。
最近はクラフトビールファンも増え、取り扱いの豊富な酒屋さんやビアバーも増えた。
でも、まだまだクラフトビールの素晴らしさを知らない人は多い。数ヶ月前までの自分がそうだったし、友人と話していても、ほとんどの人がそうだと感じる。
140もの種類があるビールのたった1種類だけを飲み続けるのは、とてももったいない。それくらい、日本、世界には素晴らしいビールがたくさんある。それに、知識はビールをもっと美味しくする。
味が美味しいことは大前提に、フードロスや森林破壊、海洋汚染などの社会問題を、ビールづくりを通じて解決しようとする会社も少しずつ増えている。
生産方法やデザイン、サービスの設計次第では、ビールは「普段楽しむ嗜好品」や「頑張った自分へのご褒美」だけでなく、「映画や本や音楽のお供」「大切な人への贈り物」「インテリア」「お土産」「コミュニケーションツール」「イベントデザインのひと役」など、さまざまな意味を持ちうる。
「寄付の一種」や「社会問題に対する意思表示」にだってなるかもしれない。
バラバラと書いたが、たった数ヶ月ビールに興味を持つだけで僕のビールに対する概念はガラッと変わったのだ。
「美味しいビールをつくること」をまずは必死に学んでいかなければだけど、その先で、1人でも多くの人のビールに対する概念をちょっとでも広げたい。欲を言えば、自分がつくったビールから、人や環境に対する優しい気持ちみたいなものを伝えたいし、買ってくれた方の優しさを代弁するようなものを創りたいと強く思う。
まだまだ勉強しだしたばかりだけど、ビールはおもしろい。
まだ何も知らない僕のToDoリスト(の一部)
最後に、醸造の経験を積むのと平行して「この資格を取ります!」ということを宣言します。
・ビアテイスター、ビアジャッジ、ビアソムリエ
ビールの良し悪しを客観的に判断することができるようになるのが1番の目的ですが、ビアジャッジの資格を取り、醸造の経験を3年以上積み、他のビアジャッジの方からの推薦をいただければ、International Beer CupやJapan Great Beer Awardsなどのビールの審査会に審査員として参加することができます。
そうすれば、日本を代表するようなブルワーさんともつながれるし、何より素晴らしいビールにたくさん出会えるので最高なんです。これも、ひとりのブルワーの先輩が教えてくださいました。
ビアテイスターは早速12月下旬に東京に取りに行ってきます。
・ハーブセラピスト、スパイス香辛料ソムリエ
クラフトビールを好きになったきっかけでもある岡山県の『koti brewery』さんの『ホワイトエール』。このビールを飲んで、「ビール×ハーブ・スパイス」の可能性の大きさに魅了され、ハーブとスパイスの勉強もすることにしました。
・USCPA(米国公認会計士)
社会人一年目のときに、取ろうと思って資格の学校に入るだけ入って結局取らずじまいだったもの。会計の分野だけでなく、ファイナンス・法務・経済・ITなど、経営に関して幅広くカバーしている国際資格なので、改めて挑戦しようと思います。
これらの資格を取れば、おいしいビールを作れるというわけではありませんが、ビールづくりと関係する分野について、第三者に裏打ちされた専門性を持つことは、自分やブランドの独自化にもつながるし、発信する内容にもより説得力が増すと思うんです。
なので、頑張ります。
最後の最後に
今後は、「ものづくりが好きな方」「ビール好き」「ハーブやスパイスを栽培している方」と(もちろんそれ以外の方とも)少しでもたくさんつながることができるよう、noteでの発信も頑張っていこうと思います。
ビールに関してはもちろん、「ものづくり」「マーケティング」「デザイン」「文化人類学」などなど、日々インプットしたことについて書いていきますので、ぜひフォローいただけると嬉しいです。
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では、今日は読んでいただきありがとうございました。
またお会いしましょう。