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読書感想文 「形態デザイン講義」
きっかけ
有休を使って図書館に建築関連の本を借りに行った。
僕は建築家じゃないし、建築関連の仕事についているわけでもない。
だけどプロダクトを作る立場にいて、建築家の思考は僕の仕事のヒントになると感じている。
エンジニアリングとデザインの領域を繋ぐヒントがここにあると僕は思っている。
それを求めて、まず著者 内藤廣さんの構造デザイン講義を読んだ。
めちゃくちゃ良書だったので、続けて環境デザイン講義、そしてこの形態デザイン講義を読んだ。
形態デザイン講義は読む前から、この本には大切なことが書いているという確信があった。なぜなら前2冊の講義が素晴らしかった、そして、より本質を捉える内容が書いてあると思ったからだ。
気づき
バイブル的素晴らしさのある本なので、気づきがとても多い。
しかし、敢えて3つに絞って自分に染み込ませるために濃度の高いエッセンスを書き留めておく。
1. 正しさと美しさ
著者は構造・環境・形態の3つの本にて一貫して、このことを述べていると感じる。
正しさは構造的に成り立つ、快適に過ごせるなど、ある程度客観的に良い、と感じられる概念である。
ただそれだけでは、美しくはならない。
美しくならないとはつまり、一般の人には受け入れられない、ということを言っている。
この部分ものすごく共感すると共に、美しさはどうやって求めればいいのか、という新たな問いに当たる。
この答えは書いていなかったが、模索する手段は書いてあった気がする。
まず不思議な魅力や美しさがあって、それを理解しようと心が動いた先に、論理性がある。
美しいと思うものを出していって、なぜそれが美しいのか、ということを考える。
それに一般性が見出せた時に、ようやく一般の人に受け入れてもらえるようになるのでは。
美の探究は底が知れないことを思い知らされる。
2. 時間の翻訳
著者はデザインの役割を以下の3つに分けている。
・技術の翻訳
・場所の翻訳
・時間の翻訳
翻訳というのは、メタファーであり、簡単にいうと一般の人に分かるようにする、ということである。
この中で、時間の翻訳、が僕にとって最も痺れた概念だったので、ここに残しておく。
なぜか痺れたかというと、UXデザインにおいて、それは時間をデザインすることだと、ある方が言っていたからだ。
UXデザインではユーザーがプロダクトを使用する前から、使用し終わった後まで対象にしてデザインを行う。
このことと繋がったのである。
この製品は10年後、ユーザーが歳をとって、家族構成が変わって、家族が歳をとって、キャリアを積んで、社会構造が変化した中で、どういう価値を提供できるのだろうか、と考えたことが無かったことを恥じた。
10年後は予想できないが、10年前のことなら残っているはずなので、未来のことを考えるときは、過去のことを考える、そういうことを学んだ。
3. 辛い時に心の支えになるもの
これだけ見ると、恋人?友達?お医者さん?となるが、それよりも不変・普遍でインフラ的価値が建築にあるか、という問いだと僕は解釈している。
街が災害や災禍にあるとき、人間側の精神は全体的に下がってしまうことがある。
そのとき、街に存在する何か、が心の支えになる、という考え。
考えてみると、僕が過ごしたそれぞれの土地でそんなものがあったような気がする。
プロダクトはもう少し小さい規模でこれを達成できるのではないかと考えた。
身近に寄り添える、共に生きている、ということで生活者の辛さに対して、ほんの小さな支えとなれれば、それは成功していると言えるのではないか。
ここまで考えて設計をしたことは無かったが、知らない間に誰かを支えているかもな、と思うと、それはそれで誇らしくなってくる。
やること
時間の翻訳、はこれからテーマにしてみようと思う。
ある製品をユーザーに届けることを考えるとき、何年使ってくれるか、その何年後かには、それはどういう価値をもたらしているのか、イマから何年前にはその人はどういう生活をしてどういう価値観を持ってきたのか、過去を以て未来を考える訓練をしてみよう。