K先生の優しさ
以前noteで「変人教師」として紹介した、私の中学時代の担任・K先生。
当時の私は、K先生のことが好きだった。もちろん恋愛的な意味で好きだった。
K先生は当時30歳、私は14歳。その年の差16歳。
言うまでもなく、この恋が実ったら先生が犯罪者だ。
当時の私も理解していたので、「絶対言わない」と決意をした。
…だが、私は幸か不幸か嘘がつけない人間だった。
誰から見ても分かるほどに好意ダダ漏れだった。
そりゃあそうだ。放課後も教室に居残って、先生にベタベタに付き纏い…勉強を教えてもらったり、席替えのたびに固定席ばりに先生の机の目の前を陣取っていたり。そんなことしていたら全員にバレるに決まっている。愚かだ。
それでもK先生は私を邪険にはしなかった。
絶対に気付いていただろうに、好意に気付かないフリをして常に明るく接してくれた。
生徒でも手伝えるような物事であれば必ず私に声をかけてくれたし、学校行事ではやや仲間外れ気味ではあったがK先生が目をかけてくれたので寂しくはなかった。
生徒に勉強を教えるという職務を放棄したことも一度もなかった。職員会議の日ですら「終わるまで待てる?終わったらすぐ来るから、補習しようか!」と言うくらいだった。
当時の私は「特別扱いされてる!」とか舞い上がってたが、大人になった今なら「それが先生の仕事でもあるし、親からクレーム来たら困るから邪険にしようにも出来なかったんだろうな…それと私への憐憫かな?」と考えられる。
だとしても、こんな好意ダダ漏れの女生徒を近くに置くことは、K先生にとって何かリスクを孕んでいなかったのだろうか?それは聞いたことがないため、今となっては真相は闇の中だ。
結局、その好意ダダ漏れ状態はその年度末───K先生が離任するまで続いた。
あれから10年以上の時を経た今。
某芸人さんの年の差婚で、世間(と言ってもSNSの中でだけだが)から「10代と交際する成人は異常!」という声がかなり聞かれた。
私の決意は間違っていなかったと確信した。
まあ、告白してたところで絶対受け止めてもらえなかったと思うが。
私のダダ漏れの好意に、最後まで知らないフリを貫き通してくれたK先生には感謝している。そして教師としての役割を全うしてくれたことにも尊敬の念を抱いている。
14歳の私は救われたな、と本当に心の底から思っている。
現在、K先生とは連絡を取っていない。
私が大学2年生になった頃、本人の口から直接「結婚した」と聞いた。そして、これ以上先生の幸せを邪魔してはならないと思い、K先生への片想いに幕を引いた。実に7年もの月日が流れていた。
K先生の優しさが生来のものなのか、立場上そうせざるを得なかったからなのか、当時14歳で未熟な私には判断が出来なかった。今でも出来ない。
それでも私は救われたと思った。
K先生が、今もどこかで誰かに同じような優しさを与えているのなら、私と同じように救われる人がいるだろう。
K先生にしてもらった優しい記憶を胸に、この優しいバトンを繋いでいきたい。