見出し画像

【こころ #62】ひきこもりから、区分を超えた当事者会へ


⭐ ファン登録のお願い ⭐

 Inclusive Hubの取り組みにご共感いただけましたら、ぜひファン登録をいただけますと幸いです。

 このような障害のある方やご家族、その課題解決に既に取り組んでいる研究開発者にインタビューし記事を配信する「メディア」から始まり、実際に当事者やご家族とその課題解決に取り組む研究開発者が知り合う「👀ミートアップ👀」の実施や、継続して共に考える「🤝コミュニティ🤝」の内容報告などの情報提供をさせていただきます。

🔽 ファン登録はこちら 🔽



がきんちょさん


 「ひきこもりの家族会のお手伝いやってる、がきんちょって言います」


 初対面。「がきんちょ」というあだ名も面白かったが、このメディアで取り上げたことがなかった「ひきこもり」について是非教えてほしいとお願いした。


 「ひきこもりって、どんなイメージがありますか?」

 そう聞かれ、どう答えるべきか悩んでいるうちに「若い男性が会社とかで仕事がうまくいかず部屋の隅っこにいるようなイメージですか?」と笑って助け舟をくれた。やや図星。

 間髪入れずにがきんちょさんから「私は、専業主婦という名前のひきこもりでした」と言われ、自分の凝り固まったイメージを恥じた。


 「もともと家事や子育てがうまくできなくて、仕事を言い訳にしてきたんですが、リーマンショックで仕事を失ったんです」

 例えば、部屋をうまく片付けられない。ごみ屋敷っぽくなってしまうことを旦那さんから咎められ、さらには怒鳴り声が怖くなり、「子供がいる親なのに、寝起きする部屋から出られなくなった」

 離婚してシングルマザーになるが、それでも「ひきこもりが治らない」。お子さんにも「パパと暮らしたい」と言われ、一人で子供の住む家を出た。


 その後も、自分のことを責め続け、旦那さんの怒鳴り声がフラッシュバックし、うつ病に苦しんだ。薬を飲んでも一向に良くならない中で、母親からも障害ではないかと過度に心配され、結果的に障害者手帳を取得した。

 しかし、ここから事態は思わぬ方向に展開する。過度な心配をする母親の態度が気になり、問いただすと、「小さい頃にある病気の診断を受けていたこと、それを40年近く子供に黙っていたことを明かした」のだ。

 その聞いたことがない病名をうつ病の主治医に伝えると、それは今の時代でいう「発達障害」だった。がきんちょさんが長年苦しんできたうつ病は、発達障害の二次障害だったのだ。


 がきんちょさんはこれまで、聴覚過敏、マルチタスクや電話対応が苦手、手先が不器用、部屋が片付けられないなど、「できないことを何とか克服しようと努力したがうまくいかずに挫折してきた」

 しかし、診断を受けたことで、「苦手なことは特性でどうしようもないと諦めて、うまくできることを何とか見つけようとして、自分に優しい言葉をかけられるようになった」

 がきんちょさんは、自分と同じように「周囲が対応の仕方を間違えて、根底の発達障害が見過ごされ、精神疾患で苦しむ例が数多くあるのではないか」と警鐘を鳴らす。


 振り返れば、母親は、兄弟の中でがきんちょさんにだけ過干渉だった。がきんちょさん自身もそんな親との関係に苦しんできた。

 確かに、障害のことを隠されていたことに最初は憤慨したが、いま振り返ると「そうやって先回りして普通の人間に育てようとしていたのかもしれない」と親のことを少しずつ理解できるようになった。

 これも自分同様に「同じような罠にはまっている親子もいるんじゃないか」と心配している。


 発達障害の診断を受けたことで、がきんちょさんは様々な当事者会に足を運び始めた。同じ当事者に自分と似ているところや違うところを見ることは、さらに「自分の特性を知るのに役立った」

 発達障害に限らず出会いを広げる中でつながったのが、『KHJ全国ひきこもり家族会連合会』であり、その東京支部である『楽の会リーラ家族会』だった。

 「自分は、子育ての経験もある親の立場と、ひきこもった当事者の経験もある。家族会の中で何か橋渡しに役立てるのではないか」とがきんちょさんも活動に参画し、地元荒川区で『荒川たびだちの会』の活動に加わった。


 ただ、ひきこもりに限らず様々な当事者会を見てきたがきんちょさんには、ずっと気になる点があった。「どれだけ似た人が集まってもトラブルは絶えない」。同じ立場故に「言わなくてもわかるだろう」なんて甘えが生じてしまい、せっかくの機会が台無しになるシーンも見てきた。

 そんな時にがきんちょさんがヒントを得たのが、LGBTの人たちが使う「アライ(Ally)」という言葉だった。アライとは、「自分は、LGBT当事者ではないけれどLGBTの人たちの活動を支持し、支援している人たち」のことを指す。

 それは、「特定の当事者」という狭い範囲を超えた考え方だった。「いっそのこと、ニッチな当事者どうしで集まるのではなく、同じ生きづらさはあるけれど、みんな違っていて、でも理解し合おうとする。そんな会をやりたい」と思い立った。


 そしてがきんちょさんは、その名の通り『アライな当事者会』を立ち上げた。そこには、発達障害も、ひきこもりも、精神障害も、さらには癌のサバイバーまで多様な人が集う。

 参加条件は、2つ。①何らかの生きづらさの当事者であること、②他の参加者に対してアライであること。「それを満たせなければ出禁!だからこそ、安心感をもって集まってくれる」と笑って教えてくれた。


 がきんちょさんは、発達障害とひきこもり経験のあるLGBT当事者だ。しかし、がきんちょさんの活動は、そういった細かい区分で分けることを望まず、むしろその区分を薄めることで生まれる安心感の大切さを示している。

 これは、社会全体にも言えることだろう。もはや障害の問題でもない。違うことを理解しようとする「アライ(Ally)」な人たちが増えることが求められているし、このInclusive Hubもそれに貢献していきたい。






ここまで読んでくださった皆さまに‥


⭐ ファン登録のお願い ⭐

 Inclusive Hubの取り組みにご共感いただけましたら、ぜひファン登録をいただけますと幸いです。

 このような障害のある方やご家族、その課題解決に既に取り組んでいる研究開発者にインタビューし記事を配信する「メディア」から始まり、実際に当事者やご家族とその課題解決に取り組む研究開発者が知り合う「👀ミートアップ👀」の実施や、継続して共に考える「🤝コミュニティ🤝」の内容報告などの情報提供をさせていただきます。

🔽 ファン登録はこちら 🔽


「👀ミートアップ👀」の様子はこんな感じ


「🤝コミュニティ🤝」の様子はこんな感じ


⭐ Inclusive Hub とは ⭐


いいなと思ったら応援しよう!