【横断 #10】ピクト×ADL評価で願いを叶える看護師起業家
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田中亜利砂さん
超高齢社会の日本において、高齢者の介護予防が重要なことは言うまでもない。そのために特に必要とされるのが、『ADL(Activities of Daily Living)』の維持・向上だ。生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、食事・入浴・歩行・着替え・排泄・入浴などを指す。
国の介護保険制度においても、介護サービス利用者のADLの維持・改善の度合いが一定の水準を超えている事業所を評価し、介護報酬を上乗せする措置の導入を広げてきており、今後もこの方向性は変わらない見通しだ。
では、実際の現場でのADL維持・向上への取り組みはどうだろう。
このADLを評価するには、『バーセルインデックス(BI: Barthel Index)』と呼ばれる評価指標が使われる。動作ごとにいくつかのレベルが記載され、それに応じて点数をつける仕組みだ。例えば、「食事」動作であれば、「自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える 10点」「部分介助(たとえば、おかずを切って細かくしてもらう) 5点」「全介助 0点」といった形で、それが10動作について決められている。
しかし、恒常的に忙しい介護現場では、一つひとつ指標を確認して正しく評価する時間は限られる。そうした背景から、どうしても前回評価と同じ評価を付けてしまったり、紙で運用されデータ化されないケースもあるため、「悪いところがあればすぐに改善に関わっていけるような環境が実現できていない」
こうした制度と現場のギャップに課題を見出したのが、田中さんだ。田中さんは看護師として現場に立ち、大学院では医療や介護の業務環境を俯瞰的に研究し、そして今、その課題解決を事業にしようと起業に向けた準備をしている。
課題の解決策は、言語問わず見るだけで直観的に意味を理解できる『ピクトグラム』。非常口のマークと言えば、イメージがつくだろう。田中さんは、前述のADL評価指標をピクトグラムに置き換えてデータ化もすることで、誰でも即座に正しい評価ができ、その評価という間接作業の時間を減らし正確性も高められる、そして、結果的にADLの維持・改善そのものに正しく余裕をもって取り組むことができると考えたのだ。
現在、介護現場は、介護人材の高齢化が進むとともに、圧倒的な人材不足だ。それを背景に、引き続き外国人介護人材が現場に増え続けることは間違いない。その際、言語を問わず見るだけで直観的に意味を理解し評価もできるピクトグラムが普及していれば、高齢でも外国人でも負担は大きく軽減され、スタッフ間のコミュニケーションも促進されるだろう。
田中さんがこうした課題解決に取り組む理由は、患者さんや利用者さんに「人生の最終段階までやりたいことを叶えてほしい」。そして、その願いに医療・介護者が寄り添うには、間接業務をできるだけ減らし、本人に寄り添う直接業務の時間を増やす必要があると考えているからだ。
田中さんが最初にADLに関心をもったのは、学生時代の緩和医療学の授業。終末期の患者さんに対するリハビリの要否を議論する中で、「例えば終末期の患者さんに歩きたいといった要望があればリハビリに取り組むべきであり、ADLを評価してリハビリを行い、できるだけ残存機能をのばしていくことに関心を持ち始めた」。その後の実習でも、終末期の寝たきりの患者さんを受け持つ中で、看護師として「ずっと寝かせて痛みを抑えるだけでいいのか、人生の最終段階までやりたいことを叶えるために何ができるか」という想いが膨らんだ。
しかし、看護師として現場に出ると、医療者と患者の「情報の格差」を感じるようになる。例えば、癌と診断されれば、医療者は標準治療を勧め、患者はそれをそのまま受け入れる。そこに、患者さんがやりたいことや生きがいは反映されない。「もやもやが募っていった」
その後、そうした問題意識をもって大学院で学び直すと、医療者が寄り添いたくても、パンパンの予約はもちろん、患者さんに向き合わない業務も非常に多いことを俯瞰できた。「間接業務を減らすことで、最後まで患者さんの生活を支えることができるのではないか」が研究テーマになった。
そうした想いと考察を社会に実装させる手段として田中さんが選んだのが、起業だった。「患者さん利用者さんのやりたいことを叶えるんだから、自分もやりたいように取り組まないと」
もちろん、やりたいように取り組むことは簡単ではない。ADL評価をピクトグラムに置き換えることで業務を簡素化しADL改善に取り組みましょう!と訴えたところで、どこの誰ともわからない田中さんが何度アプローチしても、「電話を切られるのは当たり前。メールの返信を求めてリマインドすれば連絡が取れなくなる。何度も心が折れそうになった」
冒頭で示した通り、ADLが維持・改善されれば介護報酬が上乗せされる。そこに経営者が前向きになっても、従来のやり方を変えたくない現場の壁にも何度もぶつかった。
それに輪をかけて、介護事業者の市場は非常に細分化されており、営業にかかる手間は計り知れない。それ故に、投資家サイドからは「介護は儲からない」という言葉も浴びせられた。
しかし、田中さんは「そんな介護のイメージさえも変えたい」。そういうイメージがあるから、介護の分野でいつまで経っても「人材と資金という起業家の二大悩みがより一層深刻化している」。魅力的な事業分野だと思ってもらわなければ、いつまでも課題は解決されないと田中さんは考える。
すでに田中さんはこれから起業し、プロトタイプの大規模実証実験に入り、さらにプロダクトをローンチするスケジュールまで描いている。
現場を知り、業界を俯瞰して研究し、そして不屈のチャレンジを続ける起業家が成功しなければ、誰が成功するというのか。
そんな田中さんは今、右腕やエンジニアやデザイナー、実証実験に協力してくれる介護施設などを募集中だ。高齢・障害領域での挑戦者を応援するInclusive Hubとしても、全面的に協力していく。
ここまで読んでくださった皆さまに‥
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