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【みみ #37】聴者を基準としないデフスポーツの切り口


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設楽明寿さん


 設楽さんは、1歳になる前に、ろう者(聴覚障害)と診断された。

 小学校1年生で人工内耳の手術を受け、同3年生でろう学校から地元の学校に転校する中で「周りには音があって、音に反応する」世界に少しずつ気付いていった。


 しかし、「色んな行動で一歩遅れるようなイメージ」。例えば、周りの生徒は、先生が黒板に書き終えると、その音に反応して次はしゃべり始めるだろうと自然と目線を上げる。「自分はずっと下を向いてノートを書き続けていました」


 設楽さんは、大学進学後に、2017年にトルコのサムスンで開催された、耳が聞こえないデフアスリートを対象とした『デフリンピック』に陸上競技男子4×100mリレー日本代表として出場し、見事金メダルを獲得する。

 陸上競技はピストルの音に反応してスタートする。デフスポーツの場合、そうした聴覚的な合図の代替として、光を発生させるLEDなど視覚的な合図が使われる。それ以外は、一般的なスポーツと同じだ。


 しかし、こうした「音が基準」であることは、補聴器や人工内耳でも、そしてデフスポーツでも、「聴者の世界に合わせること」が前提になっていないか。それは、本当にユニバーサルか。そんな論点を設楽さんは投げかける。


 現在、筑波大学の博士後期課程に在籍し、メディアアーティストとしても有名な落合陽一准教授が率いるデジタルネイチャー研究室で研究活動に専念している設楽さんが発表したのが、触覚刺激を活用したスタート合図通知インターフェースである『HaptStarter』。スタートで構えた親指の第一関節の外側に触覚刺激を当ててスタート合図とする。



 単に視覚を触覚に変えたわけではない。明確な理由がある。

 生体に刺激が与えられてからその刺激に対して外的に観察可能な反応が生じるまでの時間を「反応時間」と呼ぶ。例えば、ランプが点灯してボタンを押すまでと言い換えるとわかりやすいかもしれない。

 その上で、聴覚と触覚と視覚で、どの程度反応時間に差があるか考えたことはあるだろうか?ある研究によれば、聴覚に比べて触覚は約5ミリ秒遅く、同様に視覚は約30ミリ秒も遅い。ミリ秒とは0.001秒、30ミリ秒であれば、0.03秒。

 音への反応を前提にした「一歩の遅れ」は、ここにも存在する。特に記録を競う陸上短距離走のアスリートにとっては、大きな遅れにもなる数字なのだ。


 これは聴者とろう者の公平性という話に留まらない。触覚刺激であれば、聴覚に限らず、視覚、車椅子や義足、義手など幅広い障害に関係なく”ユニバーサルスタート”を切ることも可能になるのだ。


 そして、もう一つ。設楽さんは、これまでの延長ではない、「ろう者の身体性だからこそ楽しめる」デフスポーツという未来もあるのではないかと考えている。現在は博士論文を執筆中だが、その先の意欲を話してくれた。

 「ろう学校の中で、(手話やろう文化の生活様式などで育ってきた)幼稚部の子供たちが一緒に集まって遊んだ時に、聴者の子供たちの遊び方とどういった違いがあるか。聴者の発想にない遊び方があるかもしれないし、それが新しいデフスポーツに結びつくかもしれない」

 今はどのスポーツでも細かい動きをデータ分析できる時代になった。その技術をろうの子供たちに応用し、その身体性をデータ化すれば、新しい発見があるのではないか。ろう者でありアスリートであり最新技術を扱う研究者である設楽さんならではの着眼点だろう。


 かつて設楽さんが代表として出場したデフリンピックは、2025年11月に東京で日本初開催される。50回目となる記念大会でもある。「次の世代にとって良いきっかけになれば」と設楽さんは話す。

 その意味は、次のデフアスリートとなる子供たちにスポーツの素晴らしさを伝えるといったことだけでは当然終わらないだろう。もう一歩、これまでの常識にとらわれず、「新しいアイデアを話し合える土台や材料の準備や後押しをしていきたい」。そんな設楽さんの研究が世に広まり、それが活用されるシーンを後押ししたい。





ここまで読んでくださった皆さまに‥


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