【みみ #46】『YYSystem』の生み育ての親
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中村 正樹さん(前編)
自動車部品メーカーの株式会社アイシンが自社開発した、聴覚に関する意思疎通をトータルに支援する音声認識アプリシリーズ『YYSystem』。
例えば、大人数の会議はもちろん、騒音の多い工場の中でも、会話をリアルタイムにテキスト化して、資料などを投稿し合うこともできる『YYProbe(ワイワイプローブ)』
例えば、電車がホームに入ってくれば、そのアナウンス音の可視化だけではなく、環境音からオノマトペやアニメまで表示する『YY文字起こし』
例えば、スマホに留まらず、行政やホテルの受付で、透明ディスプレイなどのスクリーンに音声認識テキストを翻訳する形でも表示できる『YYレセプション』
例えば、そうしたリアルタイム音声認識機能をPCのデスクトップでも使える『YYデスクトップ字幕』
これ以外にも多様なアプリケーションがあるのだが、上記の4つで、2024年11月に、なんと「100万ダウンロード」を達成したのだ。
しかし、それ以上に驚くべきことは、中村さんが、当初からこの『YYSystem』のiOSアプリケーションをたった一人で開発し続けていることだ(注:現在は、AI、サーバー、Androidなどのエンジニアも一緒に仕事をしている)。
実は、開発の原点は、株式会社アイシンで働く約13万人の従業員のナレッジを日常会話からデータベース化できたらという発想を実現するための音声認識だった。
そんな時に見舞われた、コロナ禍。工場現場ではマスクの上、操業が減ってオンライン業務が増えた。約13万人のうち約300名の聴覚障害者が、働きづらさに直面した。
開発していた音声認識技術に「社内のコミュニケーションに使えないか」という問い合わせが入った。
「聴覚障害者の方に話を聞くと、発話が不得意な方もおられる。いま作っているシステムは一部の人にしか使えず、誰もが有意義にアクセスできるようなものにしないといけない」と気付いた中村さんは、システムを作り直し、社内の当事者の協力を得た実証実験は2年間にも及んだ。
そんな当事者目線から開発された『YYSystem』は、今では社内で聴覚障害者に限らず2,000名以上の従業員が「当たり前に使うツール」になった。さらに、社外にもリリースすると評判が評判を呼び、ダウンロード数が伸び続けて、冒頭でご紹介した「100万ダウンロード」にまで到達した。
さらに驚くべきことに、そんな成果は「一切の営業も広告宣伝もなく、ユーザーによる口コミやSNSと自身の職場に導入を働きかけてくれた」結果だった。しかし、その背景にあったのは、中村さんと当事者の方々の素敵な関係性だ。
「トヨタ自動車の豊田章夫(当時のトヨタ自動車代表取締役社長)さんが「愛車。愛をつけてくれる工業製品が自動車」と話していました。それと同じで、ユーザーが、100点じゃなく60-70点で良くないところがあっても、良いところも見つけてくれる。たかが音声アプリだけど、毎日使うもの。愛着があるものになれたのかもしれない」
中村さんのもとには、製品の改善要望が毎日のように届いた。それに対して、「次の日の朝には次の機能を入れて対応した。それを24時間365日、何年も続けてきた」。すべてにすぐ対応できなくても、「不具合に対応していることをSNSでも発信した」。ユーザーと直接やり取りして、仲良くなって、オフィスに来てくれることもあった。「そういう姿を、信用してもらえたのかもしれない」と中村さんは振り返る。
「アプリの機能一つひとつに、ユーザーから受け取った想いや名前や顔が浮かぶ」。そのような製品を、ユーザー自身も自分の職場に導入を働きかけ、職場側も社員が欲しいツールを安心して導入する。そんな「みんながハッピーな状況」が、利用者を広げ続けている。
ユーザーのためにオープンチャットを立ち上げれば、今や、ユーザーからの質問に「自分の代わりに、他のユーザーが答えてくれる」。逆に、製品に不具合があれば、オープンにせず「こっそり知らせてくれるユーザーもいる」
そんな多くのユーザーと共創し続けた「インクルーシブデザイン」は、2023年に日本のグッドデザイン金賞を受賞し、2024年12月には台湾のゴールデン・ピン・デザイン・アワードでインテグレーション・デザイン賞を受賞した。
「目の前の当事者が切実に訴えてくれて、解決したら本当に喜んでくれる。これこそ、開発することの意味。開発者冥利に尽きる。iOSの開発やリリース作業、ユーザーとのコニュニケーションのほとんどすべて一人でやっていて日々すごく忙しいけれど、めっちゃ楽しい。生きてるって感じ。こんな楽しい仕事ってないよ」
(後編に続く)
ここまで読んでくださった皆さまに‥
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