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【横断 #25】難病経験を、他の当事者の課題解決に活かす


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高柳 摩季さん


 東京大学には、人間の生活を支える新たな支援機器や機械情報システムの開発などを探求する『生活システム工学』を標榜する研究室がある。
 同大学大学院の修士2年生である高柳さんがその研究室に入った理由は、自分自身が指定難病『全身性エリテマトーデス(SLE)』になったことで、「広く難病の人が暮らしやすい社会になるために自分の力を使いたい」と思ったから。


 高柳さんが20歳の時。
 短期の語学留学から帰国すると、発熱や倦怠感を覚える。「疲れていたのかも」と、クリニックに行けば「風邪」と診断されるも、風邪薬や解熱剤は効かない。
 当時、脱毛の症状もあったので、皮膚科に行くと、自己免疫の異常によって全身の結合組織に炎症が起こる『膠原病』の可能性を指摘される。さらに甲状腺内科に行くと、自己免疫の異常によって甲状腺に慢性的な炎症が起こる『橋本病』の可能性を指摘されるも、まだ症状は改善しない。
 そのまま、徐々に「体が起こせなくなっていった」。座っていられないほどの貧血になり、食事も寝転がったままで、呑み込めるゼリーや小さいおにぎりを食べた。トイレにも這いつくばって行くほどだった。
 高柳さんの顔には、『蝶形紅斑(蝶のような形の赤みの発疹)』が出ていた。


 大学病院での診断結果は、その蝶形紅斑が特徴的な症状として知られる『SLE』。免疫システムが自分の細胞や組織を攻撃することで、全身の臓器に炎症や組織障害を引き起こす自己免疫疾患で、発症は20~40代の女性に多いとも言われる指定難病だった。


 入院するや、3日間集中して、高用量のステロイド薬を静脈注射で短期間に投与する『ステロイドパルス療法』で炎症を抑えた。その後も、服薬で、細菌を排除する役割を果たす『補体(血液中に含まれる免疫機構に関わるたんぱく質)』の値の低下を改善した。


 二か月後にやっと退院できても、服薬以外に気を付けなければいけないことがあった。
 高柳さんには、日光や可視光線にさらされたことで皮膚が過剰に反応して、かゆみや発疹、赤みなどの症状が現れる『光線過敏症』という皮膚疾患があった。この『光線過敏症』が『SLE』の症状悪化に大きく関係してしまうのだ。



 高柳さんにとっては、『SLE』で疲れやすいことに加えて、この『光線過敏症』が「自分にとって一番の困りごとだった」。当時理系に通う大学2年生だった高柳さんは、「何か自分の経験を活かして、役に立つ研究や開発ができないか」と考えるようになる。
 そんな時に出会って携わったのが、「ファッション性が高いUVカット専門」の衣料品ブランド『HAYATOKURATA』。高柳さんと同じように、紫外線対策が人一倍必要になる『尋常性白斑(皮膚の一部が白くなる後天性の皮膚疾患)』の当事者であり、同じ大学生が立ち上げたブランドだった。


 「当事者自身が関わって、新しいプロダクトを生み出したり、(環境を変える)システムに取り組むことに意義がある」、さらに「広く難病の人が暮らしやすい社会になるために自分の力を使いたい」。高柳さんの中に、そんな軸が固まった。
 そして、そこからたどり着いたのが、冒頭でご紹介した東京大学大学院で『生活システム工学』を標榜する研究室だった。


 現在、研究の傍ら、『SLE』だけではなく、広く『膠原病』について、サポートネットワークの交流会や、自治体が開催する研修会に参加するなど、改めて当事者の課題に向き合っている。
 例えば、日常生活で「何に困っていて、どういう支援を受けたいか、うまく言語化できない」当事者も多い。自分自身を振り返っても、「疲れやすいために、行き先で横になったり、座れる場所があったらいい」と思うことがあっても、大学のバリアフリー支援室などに具体的に相談や提案をするまでには至っていない。
 製薬会社が病気について教科書的に解説する情報サイトがある一方で、他の当事者による日常生活の個々の課題や工夫が共有されることも同じように有益だと考えるようになった。
 情報面のみならず、自身の『光線過敏症』の経験から、例えば、従来の日傘とは違って手を塞がない解決策などを発想できないか、それが『SLE』だけでなくより広い利便性につながらないか。そんな模索もしている。


 今はまだ、今後の進めべき研究や開発の方向性を見定めているところだ。
 しかし、高柳さんは、まず「自分が救われる」こと、そして、そこを起点に、他の当事者やさらにその先まで便利を生み出すことは「私だからこそできる」、いや「私じゃなきゃできない」ぐらいに考えている。


 ご自身が『SLE』と診断された頃を振り返って、「早く見つかって運が良かった。でも運が良かったで済ましたくない」とも話してくれた。
 自分ごとで終わらず、自分の当事者経験を、他の当事者やさらに社会全体に活かそうとする。そんな高柳さんのような方にこそ、新しいものを生み出す研究者・開発者・起業家になってほしい。





ここまで読んでくださった皆さまに‥


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