シンバルについて、叩く前に調べてみた件(その2)
カホンを始めたばかりなのに、形から入りたい私はシンバルのことを調べまくって、お気に入りの1枚を購入!
そこに至る経緯を書こうとしたのに、前回は国内外のシンバルメーカーを列挙して終わってしまいました。
今回は、いよいよ『カホンのお供』としてのシンバルの紹介を…
ドラムセットのシンバルはドラムスティックで叩きますが、『カホンのお供』のシンバルは、スティックではなく素手で叩きます。
カホン自体を素手で叩いていますので、当然そのままシンバルも素手ですね。
となると、ドラムセットで用いられる一般的なシンバルよりも小型で薄くて、それでいて良く鳴るものが求められます。
一般には『スプラッシュ』と呼ばれるタイプで、スプラッシュ=しぶき・飛び跳ねるみたいなニュアンスです。スプラッシュは、直径6~12inch(約18~36cm)で薄手のものが多く、鳴りとしては余韻の減衰が早くて軽めの発音となります。
前回に紹介した有名メーカー(Zildjian・SABIAN・MEINL・PaiSTe等)の殆どがそうしたサイズのものを『スプラッシュシンバル』としてラインナップしていますが、ドラムセット用にスティックで叩くことを前提としたスプラッシュは、華奢な日本人の素手にはやや手強く、堅過ぎる…
欧米人だと軽く叩いているように見えても、やはり掌の厚みや骨格にハンデがある日本人だと思い切り叩かないと良い音が出ないし、思い切り叩くことで怪我の元にもなりかねないのです。
そこで、幾つかのメーカーからは、『ハンドスプラッシュ』と称して素手で叩くの専用に作られたスプラッシュがリリースされています。
その情報を得て私はリアル店舗とネットを隈なく巡回して探したのですが、その『幾つか』の答えは、3つだけでした。
しかも、そのうちの2つは前回ご紹介した有名シンバルメーカーとして名前を挙げていないという…
では、メーカー自体が『ハンドスプラッシュ』という呼称を標榜している3つのブランドをご紹介してみます。
1.ISTANBUL《イスタンブール》
前回ご紹介しましたとおり、シンバルメーカーの元祖でありトップメーカーである Zildjian社の流れを汲む職人が立ち上げたブランドです。
ディスクの色は極めて淡いシャンパンゴールドに輝き、ハンドスプラッシュであることを示すべく掌のマークがプリントされています。
私は約5年前に、ワタナベ楽器京都ドラム館でこのイスタンブールを試奏させていただき、煌びやかな音の虜となりました。
しかしながら、ここ最近の世界的な金属地金の高騰を受けて日本国内での販売価格が急騰。またウクライナ不安の煽りを受けて、入荷自体が不安定になる等、楽器店にとって取り扱いにくい商品に…
品質は良いのだが、商売として売りにくい商材となってしまったようです。
実際、僅かに在庫のあるオンラインショップでも売価は5年前の5割増し~8割増となかなか厳しい状況。買うなら Istanbul Agop!と決めていたのですが、別のものも探してみようかという気分に…
2.Schlagwerk《シュラグヴェルク》
シュラグベルクはドイツの有名なカホン&パーカッションメーカーで、実は私が熟慮を重ねて購入したカホンが、同社製の SR-CP404BRです。
カホンとシンバルのブランドを同一に揃えるのもいいなと思い、在庫のあるショップを調べまくって、心斎橋の池田楽器ドラム館でようやく試奏することができました。
燻銀のような独特の風合いと、見事なハンドハンマリングの痕跡。
ところが…、
実際に叩いてみると硬い硬い。
確かに、商品の表面には『CAJON SPLASH』とカホン向けであることが明示されているのですが、あまりに硬くて重くて、パシャーン!というよりもゴーン!と鳴ってしまいます。
ある程度の力で叩ける人には良い商品なのかと思いますが、残念ながら非力な私の手には負えませんでした。
3.小出シンバル《こいで》
そして辿り着いたのが、なんと Made in Japan!
株式会社 小出製作所のシンバルです。
小出製作所は大阪市平野区にある従業員10人ばかりの町工場で、シンバル専業メーカーではなく元々は医療・通信・家電・車両部品等の金属加工工場。
それが、日本に於ける製造業の空洞化による業績低迷を受け、若手従業員の提案により2004年から日本で唯一のシンバルの製造に取り組んだといいます。
当初は模倣すべき工場に行く機会もなく、プレイヤーからの要望に応えて試行錯誤を繰り返すうちにアメリカで高い評価を得るに至り、現在ではハンドメイドながら月産200枚と、同社の収益の大きな基盤を成すまでに成長した事業です。
私は既に5年前に京都のワタナベ楽器で前述の Istanbul Agopと同時にこの小出シンバルも試奏しており、買うなら Istanbul!と決めつつも、小出シンバルも捨てきれないくらいに叩きやすく、澄んだ良い音だったことを記憶していました。
今回、今一度大阪市内の楽器店で在庫がある店を探し、改めて試奏した次第。
やはり記憶に間違いはなく、非常に叩き易くて見た目も美しい純金色で、ひと目で気に入りました。
かくして、私のカホン用スプラッシュは小出ハンドシリーズ HD-10SPに決定です。
あと必要な周辺アイテムとしてはシンバルスタンド・スタンドケース・シンバルケース等になりますが、そこは凝っても仕方ないので安価な汎用品を…
と言いつつ、探してみたら TAMAの安いのがありましたので、それにしておきました。
ときに、ハンドスプラッシュのブランドを決めたら次はサイズの問題があるのですが…
具体的には、各ブランドとも直径8inch・10inch・12inch辺りの大きさを『スプラッシュ』と呼んでいます。中には9inchというまた微妙なラインナップを擁するブランドもあります。
ここは全く個人の好みというか、伴奏する楽曲のジャンルというか、シンバルをどの程度目立たせたいか(アコースティックバンドに於いては得てしてシンバルは控えめな方が好ましい)によっても変わってくるところ。
ただ、あくまで初めての1枚ですので、松竹梅の竹ではないですが、10inchにしておきました。
というわけで、私が個人的に自分に見合う『ハンドスプラッシュシンバル』を探し求めて、3つのブランドに絞り込み、最終的に国内唯一のシンバルメーカーである小出を選んだ!というお話しでした。
この3つに絞り込んだのは、前述のとおりあくまで私自身が華奢で非力というハンデに起因しており、通常の体格・体力のある方であれば別の有名ブランドから選んでも全く問題ないかと思います。
ご参考までに、いろいろネットや Youtubeで勉強するなかで上級者がよく使っていらっしゃる印象のモデルを3つほど、ご紹介しておきます。
興味ありましたら、この辺も楽器店で試奏なさってくださいませ。
ハンドスプラッシュの、叩き方ならぬ選び方ブログでした(笑)
追、
ネット通販で『カホン_シンバル_格安』等で検索すると、ノーブランド品に混じってPaiSTe等の有名メーカー品が、華奢なスタンドとセットで1万円代で出品されていたりします。
かなり食指を動かされましたが、PaiSTeの10inchスプラッシュシンバルであることには間違いないものの、素手で叩く用途には作られていないものが殆どです。
上述のとおり、屈強な外国人の掌ならいざ知らず、華奢な日本人の掌では硬くて手に負えないとのレポートも多いのでご注意くださいませ。
(ブランドには間違いないものの、用途・相性としてどうか?という個人意見です…)