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『京野菜』ってOEMのハシリかなと思う件

‘24/7/9(火)のMBSニュースから抜粋…

京都府で相次ぐ九条くじょうねぎの窃盗被害。被害にあった農家が悲痛な声です。
8日午前、久御山町の畑で農家の男性から「九条ねぎが盗まれている」と近くの交番に相談がありました。警察によりますと、畑で育てていた九条ねぎ約300kgが根元から刈り取られていたということです。
(中略)
久御山町では6月にも別の畑で九条ねぎ・約100kgが盗まれていて、窃盗被害は隣の八幡市もあわせると今年5月以降、今回で4件目です。警察は同一犯の可能性もあるとみて関連を調べています。

このニュース、関西圏以外の方なら、
『天下一品』みたいに京都ラーメンが全国区となり、関東圏の方も細長い『青ネギ』を食する機会が増えてきた今日この頃、『青ネギ』の中でも有名ブランドである『京都産九条ねぎ』が盗難に遭ったんだなぁ…くらいの認識かと思います。

京都の地名に詳しい方なら、ちょっと引っ掛かる点がありませんでしたか?

『九条ねぎ』の盗難事件なのですが、出てくる地名が『久御山町くみやまちょう』と『八幡市やわたし』…

ご存知のとおり、京都市中心部は1200年以上前に整備された『碁盤の目』となっており、東西の通りは北が一条通、南が十条通となっていて、『九条くじょう』はその数字からお察しのとおり京都市中心部のほぼ南端にあります。
JR京都駅は七条通と八条通に挟まれた位置にありますので、九条通はその一本南、『五重の塔』で有名な『東寺とうじ』がある大通りです。

その観光エリアで、京都の、いや今や全国の需要を賄うだけの『九条ねぎ』が栽培されているのか?
観光バスの窓から見た範囲では、ネギ畑なんか見当たらなかったぞ…?
今回はその辺のお話しです。

答えから申し上げれば…

もともとは江戸時代に京都市南区九条地区あたりで上質な葉ネギが栽培されたことからその名がついたものの、現在では京都府各地で生産されています。(中略)現在の主な産地は京都府内においては八幡市都々城、京都市淀・久世など。

(Wikipediaより筆者要約)

さらには、

ブランド野菜としての確立に加えて昨今のラーメン人気の影響もあり、消費の拡大を受けて作付面積が増えてきており、2013年度の京都府内の作付面積は約200haと、2008年度から27%増加している。

とも記述されています。

冒頭のニュースにも登場した八幡市は京都府八幡市のことで、石清水八幡宮いわしみずはちまんぐうを擁する京都府南部のエリア。
ねぎ泥棒の現場が久御山町でしたが、先ほど主要産地に名を連ねた久世は京都府久世郡くせぐん久御山町のことで、宇治市と八幡市に挟まれたエリア。
さらによどは、京都府京都市伏見区淀のことで、競馬ファンには有名な京都淀競馬場があるところ。いや、それよりも豊臣秀吉!が側室茶々(淀君)の産所として築かせた『淀城』でも有名かもしれません(現在の淀城跡とは少し位置が違います…)。

余談かつ個人情報ではありますが、私は産まれてから27歳までこの淀で両親と暮らしており、まさに離乳食から九条ねぎを食してきました。
また、淀の隣の久御山町は私の小5からの親友である克裕クンの故郷でもあります(笑)

果たして現在、当の京都市南区九条エリアでどのくらいの『九条ねぎ』が栽培・出荷されているのかは定かではありませんが、八幡市で作ろうが久御山町で作ろうが淀で作ろうが、『九条』というみやびな、古都らしい名称が全国で有り難がられてブランド化しているというのは、ことさら悪いことではありませんね。

同様の事象が、別の京野菜でも多く見られます。
幾つかの有名な『京野菜』を挙げてみます…

聖護院大根しょうごいんだいこん

私の故郷の淀では昔から、蕪(かぶ・かぶら)に似た丸っこいダイコン(短系種)を『淀大根よどだいこん』と呼んでいましたが、大人になってこれが『聖護院大根』として出回っていることを知りました。
実は京都の市場では『聖護院大根』の中でも淀産の『淀大根』が高く評価されているのですが、全国の皆さんの評価はまた別。
『淀』という競馬場の地名がついた大根よりも、『聖護院』というこれまた雅なセレブな響きに憧れて、『聖護院大根』が有名な京野菜ブランドとして定着しました。

万願寺まんがんじとうがらし』

お寺っぽい名前を名乗れば如何にも京都っぽく、ご利益ありそうな名称でブランド化していますが、実は『万願寺』はお寺の名称ではなく地区名であり、さらには京都市内ではなく京都府の日本海側にある京都府舞鶴市まいづるしが発祥。


かつ、現在の主要産地も舞鶴市のほか京都府綾部市・福知山市と、いずれも京都府中北部から全国に出荷されています。

賀茂かもなす』

京都市内を南北に流れる『鴨川かもがわ』は有名ですが、京都で『カモ』と読む地名漢字は『鴨』の他に『加茂』や『賀茂』があります。
江戸時代の書物に、「ナスは洛東河原(現在の左京区吉田・田中辺り)のものが最高である」と記されていて、その種が上賀茂かみがもの人たちによって大切に育てられたのが現在の賀茂なすとのことです(ただし一説には京都市伏見区芹川に起源があるとも言われており、『大芹川』の別名もあり…)。
現在の産地としては、原産地の上賀茂地区に加えて京都府南部の京田辺市きょうたなべし、或いは亀岡市・綾部市も有名です。

鹿ケ谷ししがたにかぼちゃ』

鹿ケ谷は京都市左京区にある地名で、そこにある安楽寺では毎年7月に『かぼちゃ供養』が行われています。
シシガタニという読み方は中学生の時に日本史の教科書に出てきて、誰と誰が何を争って戦ったのか?は全く記憶にありませんが、1177年という年号だけは何故か頭に残っています。
江戸時代、津軽から持ち帰られた『菊かぼちゃ』が突然変異で今の形になったと言われており、明治時代中頃は京都で食べられるかぼちゃといえばこの『鹿ヶ谷かぼちゃ』だったようです。
現在の主産地は鹿ヶ谷地区ではなく、京都府中部の綾部市です。

というわけで、京野菜は他にもいろいろあるのですが、総じて、発祥の産地や名称と現在の主要栽培地が異なっています。
中心部が開発され農耕地が減る一方で、郊外でかつ気候に恵まれ、都市部への配送も便利な土地で名産品となっていった様子が伺い知れます。

もしも…
『九条ねぎ』が主要産地の名を取って『久御山ねぎ』だったら?
いや、久御山に恨みはないけれども、やはり多くの日本人は『九条』という地名に惹かれるんでしょうね。

これって、技術力や生産力はあるものの知名度がイマイチな為、大手有名メーカーの委託を受けて製品を市場に卸しているOEM工場のようなイメージなのかな?

余談ながら…
30代の頃、初めての転勤で新潟市に6年ほど住んでおりました。
美味しい南魚沼産こしひかりを毎日堪能していましたが、さる得意先の農家さんが仰ってたことには…
『今、国内で出回っている魚沼産こしひかりの量がさ、魚沼の収穫量の5倍はあるのよ。なんだろうね…(苦笑)』
もう25年も前のお話し、ちょっとした闇がありそうです…

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