六本木「キャンティ」に初めてお連れいただいた件
「キャンティ」をWikipediaで調べれば、次の2つの説明があります。
後者のレストラン「キャンティ」を「食べログ」で調べてみると、食べログポイント 3.57と高得点ではあるものの驚くほどのポイントでもありません。2021年の「TOKYOイタリアン100名店」に選出されていますが、毎年の常連というわけでもない。
そういった「俗な評価軸」とは別の尺度で、古今のアーチストや文化人にとって、また私にとっても思い入れの深い店。
そんなキャンティに、先日ふとしたご縁からお招きいただく機会を得ました。
私が「キャンティ」を知ったのは、1980年の高校生の時にギター雑誌を読み漁っていて、ユーミンこと松任谷由実さんの特集記事があって、ユーミンがデビュー前(当時は荒井由実)から通っていたイタリアンレストランとして紹介されていました。
その後、2001年頃にワインの勉強をして「キャンティ」がイタリアワインの代表的な種類であることを知るも、ユーミンとは結び付かず。
そして、2004年にたまたま見ていたテレビ番組「あの日にかえりたい。〜東京キャンティ物語〜」というドキュメントスペシャルで初めて、ユーミンと「キャンティ」の関係がクリアになったという次第です。
その番組によると、ユーミンはこのお店に中学2年生の頃から通っていたとされていて、現代でいう「サイゼリヤ」的な存在かと思ったりしたものの1970年代にそんなカジュアルなレストランやファミレスなどあるはずもなく、その辺が大きな謎ではありました。
福岡市在勤時に「照和」という有名な老舗ライブハウスがあって、1980年代に久留米市在住の高校生だった藤井フミヤ少年が福岡市まで電車でやってきて、「照和」に潜り込んでは「子供の来る場所じゃない!」と摘まみ出されていたという逸話を思い出しましたが、どうやらユーミンは「中学生だから」と追い返されることもなく、そこでいろいろな「大人」との交流を重ねていったようです。
そしてユーミンは、当時のオーナー夫妻や常連だったナベプロ関係者やプロ作家の導きによってプロデビューを果たします。
そんな経緯はうっすら知っては居ましたが、自分にとっては全く関係ない世界であり、その「キャンティ」が今も実在しているのかさえも興味なかったわけですが、今回、「六本木にお泊りならキャンティは如何ですか?」とのお誘いをいただき、二つ返事でご相伴に預かった次第であります。
さて、今さらながらその「キャンティ」の「常連客・来店客」を見ていくと…
二代目オーナーである川添光郎氏が次のように書いています。
その他、ネットから客層情報を拾ってみますと…
そういえば私の同級生の医療関係者に言わせれば、
「学生時代に何度か連れて行ってもらったけど、そんな有名な店だったのか...。夜食の店、というイメージでした」
だったそうで、今も昔も知識人・富裕層の憩いの場であり交友の場であることが伺い知れます(笑)
他にも…、
との記述もあり、この村井氏が先述のユーミンのデビューに大きく関わってきます。
因みに筆頭の石津謙介氏は、私が熱愛するアイビー&トラッドブランド「VAN」の創始者ですね。
あと、私が伝統芸能に関わる仕事に就いている身として驚いたのが、「キャンティ」のHPで同店の歴史を綴ったページの中で、創業オーナーがニューヨークに渡って精力的に日本の古典芸能を売り込んでいる記述があり、そこに「1963年、文楽アメリカ公演にて桐竹紋十郎氏と」と書かれた写真が紹介されていました。
戦後の日本に本格的なイタリアレストランを開業した偉大な起業家であったと同時に、国際人であり、文化人でもあったということに感銘を受けます。
さて、そうしたユーミンとその周辺に纏わる昔話は置いておいて…
現在の「キャンティ」さんの情報を紹介しておきましょう。
場所は東京メトロ「六本木」駅から東南東に徒歩10分強。
瀟洒な洋風の建物で、地階がレストラン、1階はカフェ(入口にはケーキのテイクアウトもあり)、上階は会員制?のバー。
ドレスコードとして、HPには次のように書かれています。
私はこのドレスコードの存在を知りませんでしたが、仕事帰りでしたのでいつものスーツ・ネクタイ姿(なんならポケットチーフも)。問題なく入れていただけました。
初回でコース料理はやや重いかな(胃袋にも財布にも…)と察し、アラカルトでのオーダーをお願い。
メニュー表と一緒に、前菜を載せたワゴンテーブルが3台、運ばれてきました。
そこに載せられた個性的なオードブル、実に約20種類強!
そこから好きなものを1人3~4品チョイスしてくださいね!と…
(もちろん1品ごとにそこそこのお値段が決まっているのでしょうが、そんなことは尋ねられません…)
ファーストドリンクにスパークリングワインをグラスでお願いし、パスタとメインディッシュを決めていきます。
予習不足で事前情報がありませんので、お薦めを訊きつつもメニュー表の単価もチラチラ気にしながら選んでいきます。結果的にはお店イチ押しの「スパゲッティ・バジリコ」と「仔牛のカツレツ・ミラノ風」という看板料理をオーダー。
同行いただいた方はまた違うものを注文され、私のオーダーと取り分けてはお味見を…
「仔牛のカツレツ」にグラスの赤ワイン(ここは勿論、キャンティを指名!)を合わせる頃にはお腹も一杯になり、私としては不本意にもデザートまで辿り着けずにテーブルチェックをお願いしました。
図らずもご馳走になってしまいましたので、上記でお幾らくらいだったかは存じ上げません。
ただ、私を含めて一般庶民の方々に於かれましては、私の友人のように「夜食感覚」ではなく、記念日など「ハレの日」に予約して、ジャケットをお召しになって訪店されますことをお薦めしておきます。
平日の「カフェランチ」はお値打ちかと思われますので、まずはそちらでお試しになるのもベターかと存じます。
六本木を我が庭とされているヒルズ族やそれに準ずる方々は、ケチケチなさらずにそれなりのスタイルでお楽しみくださいませ!
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