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石津謙介氏@VAN創業者が残した和製英語を語る件

曜日ごとのお題、水曜日はオヤジのファッションに関する考察を。
自分がどう見られているかを棚に上げて、50代オヤジの服飾蘊蓄を語ります(笑)
興味持っていただきましたら、是非バックナンバーもご一読いただければ嬉しいです。


noteで UNIQLOネタは多数投稿されていて、私もファンとして大いに参考にさせていただいているのですが、こと柳井正社長のトラッドファッションの原点、特にVANやKENT等のブランドを立ち上げた石津謙介氏との関係に触れた記事はそう多くなさそうです。
柳井社長の実家は『メンズショップ小郡商事』という紳士服の小売店でしたが、短期間のサラリーマン生活を経て家業に戻った同氏は、継承した紳士服事業をカジュアルウェア販売に転換していきました。その過程で、VANのアメカジ衣料を取扱い、アイビー・トラッドに関する造詣や人脈を深め、恐らくはその延長で UNIQLO創世記のデザイナーをVANから招聘した、というお話しは前回書かせていただきました。

株式会社ヴァンヂャケット創業者であり、日本メンズファッション協会最高顧問である石津謙介氏は、2005年に93歳で逝去。『ファッションに最期までこだわり続け、寝たきりになってもパジャマを着ることを拒絶し、三宅一生デザインのシャツを着たまま息を引き取った』と wikipediaにあります。
1985年頃、石津氏が74歳くらいでしたか梅田のデパートの催事(アイビー展?)があり、サイン会に並んで直筆サイン入り書籍を購入した記憶があります。それくらい、私は若い頃から傾倒していました。

さて石津謙介氏の功績は、現在の日本のカジュアルウェアの基礎を作り上げたことにありますが、加えて称賛されるべきは、そのアイテムとともに日本人が呼びやすい名称を与えたことだと思っています。
言ってみれば『和製英語』であり、今では『そんな言葉、ネイティブの欧米人には全く伝わらないヨ!』と揶揄の対象になる類の言葉なのですが、そんなことはさておき、余りにも我々の日常に馴染んでしまった言葉も多数あるのです。

石津謙介氏が『発明』したと言われる、そうした和製英語は一説には約500語もあると言われていますが、『目から鱗』にも思える事例を少しだけ紹介しておきます。

【ファションアイテム】

トレーナー
英語圏では sweatshirt、いわゆるスウェットですね。平成以降、日本でもスウェットが市民権を得ていますので、もしかしたらトレーナーという呼び方は昭和臭がつき始めたかもしれませんが(笑)、広辞苑にもちゃんと掲載されています。
因みに英語でtrainerは、アメリカ英語では『訓練する人、調教師』、イギリス英語ではなんと『スニーカー』です(後述)。ちょっとややこしい(苦笑)

ステンカラーコート
スーツの上に着るシンプルな外套で、紳士服店ではシングルコートと呼ばれています。和製英語ですのでスペルは定かではありませんが、仏語の soutien(支える)とか英語の staind(染めた)とか諸説あるようで、正式な英語で最も近いのは、stand fall collar coatと考えられています。
昭和の人間にとって、コートと言えばバーバリー(imported by SANYO)ですが、バーバリーのカタログでは、トレンチコートの一種で『カーコート』と表記されています。

●スイングトップ(スウィングトップ)
平たく言えば、昭和で言うところのジャンパーですね。平成ではブルゾンとも呼ばれてました(笑)
スイングトップと言えばかなりカッコ良く聞こえますが、『ゴルフでスイングする時に着る薄い上着』という意味で石津謙介氏が名付けたようです。
古の映画でSteve McQueenや高倉健さんが渋く着こなしているのは、Barracuda社のG9という名作。デザインは不変・普遍ながらシルエットは時代とともに変化しており、現在店頭で入手できるモデルは高倉健さんの時代よりもややタイトめに作ってあるようです。
あと、有名なのは映画『理由なき反抗』でJames Deanが着用した、McGregor社の赤いdrizzler jacketです。もちろんホンモノが欲しいのですが、私は VAN Jacket社製の赤いスイングトップがお気に入りで、20歳代の頃に2枚連続で購入していました。しばらく着ていませんが、次回は60歳の還暦祝いに自分で購入して着るつもりです!

●スニーカー
こちらは和製英語ではなく、石津謙介氏が外来語として日本に定着させた言葉です。
先ほどトレーナーの項で書きましたが、米語圏では sneakerで通じますが、英語圏では trainer(training shoes)がいわゆるスニーカーとのことです。イギリスでは他にも jogger(jogging shoes)等の呼び方もあるようです。
ゴム底で足音がしないので、sneak=忍び寄る、というのが語源だとか。今や日本では、老若男女問わずスニーカーで通じますね。

●Tシャツ
こちらもスニーカー同様に、和製英語ではないものの石津謙介氏が外来語として日本に定着させた言葉。
因みに、『Tシャツ』のTはそのシャツの形状から名付けられたわけですが、『ワイシャツ』のワイは『ホワイト』のワイであって形状のYではありません(苦笑)
かつ、石津謙介氏の発案でもありません(笑)

【ファション用語】

●TPO
『服装は、時(time)と場所(place)と場合(occasion)をよく考えて!』という意味で、『TPOをわきまえろ!』と良く言われましたが(最近はあまり聞かないか…)、なんとこの言葉も石津謙介氏の造語でした!
なんとも含蓄の深い単語です。

●カジュアル
冠婚葬祭に着ていく服装として『フォーマル』という言葉は古くからあって定着していたらしいですが、その逆の言葉がありませんでした。
そこで石津謙介氏は、アメリカ東部の大学(Ivy League)の学生(Ivy Leaguers)がキャンパスで着ているラフな服装を、カジュアルウェアとして日本に紹介しました。

●ヘビーデューティー
カジュアルウェアを紹介する中で、特に登山や野山川(今でいうアウトドア)や極寒地でキャンプしたり遊んだりする時に着られる、防水・防寒に優れた重衣料を、ヘビーデューティーと呼んで紹介しました。
今や mont-bellや The North Faceといったアウトドアブランドでも、高機能生地の進化で軽量化が進んでいますが、昭和の時代のヘビーデューティー衣料は軍服から民生転用されたアイテムも多く、極めて重く分厚いものが主流でした。


【マーケティング用語

●キャンペーン
株式会社ヴァンヂャケットは、主にアメリカ東部から数々のファッションアイテムや遊び等の流行を日本に紹介することに加えて、そのマーケティング手法に於いても、当時最先端のアメリカ式販促手法を持ち込んできました。
今では一般的なキャンペーンも、期間限定で値引きしたりオマケを付けたり、抽選会を行ったり、それをマス媒体を使って組織的に宣伝したりと時代の最先端の手法を駆使し、それをいち早く『キャンペーン』と呼んでいました。

●ノベルティ
またそのキャンペーンの一環で、購入品数や購入金額ごとにスタンプやポイントを付与し、非売品で魅力的な限定アイテム=ノベルティをプレゼントする手法も導入されました。
今でいうマイレージですが、VANのロゴが入ったファン垂涎の稀少性の高い景品を次々に投入することで、購買者を飽きさせずブランドロイヤリティを高める仕組みを確立させています。


以上は、私が知る限りの石津謙介氏の功績ですが…
あと一つだけ、ファッションネタ以外で石津謙介氏にまつわるトリビアをご紹介しておきます。

大阪出身で今やタレント・女優として活躍中のファーストサマーウイカ (旧名/本名:初夏)さんですが、石津謙介氏は彼女の祖母の叔父に当たるそうです。
家系図でビジュアル化しないとちょっとイメージ沸きませんが、言い換えれば石津謙介氏はウイカさんの大叔父、ウイカさんは石津謙介氏の曾姪孫…。
もっと分かりませんね(笑)

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