寒い冬がくると『平山病』の左手が言う事を聞かず日常生活に困ってしまう件
土日はノンジャンルで。カテゴリーの縛りなく、自由に徒然なるままに…
今日のはたぶん長いです(約3,000文字)。
生憎、読者が得られるものは少ないとお断りしておきます。
毎週日曜日の21時に、stand fm.というネットラジオで『プロティアンラヂオ』という番組をやらせていただいているのですが、そこで自身のプライベートな話題を曝け出しています。
キャリアネタと言いながら自身の転勤履歴から昇進停滞まで赤裸々に語り過ぎ、先輩パーソナリティからは『潔いほどの自己開示』と笑われていますが…(苦笑)
今回は健康ネタついでに、自身の左手の障害のことを綴ります。
12月に入って、一気に冷え込みが始まり『冬本番』となりました。
誰でも寒いのはお嫌いだと思いますが、私は輪を掛けて寒いのが苦手で、辛い季節の始まりです。
というのも、寒さで手が悴んで、シャツのボタンを留めることやスニーカーの靴紐を結ぶことができなくなってしまうのです。
もともと指先が不器用な方なので、暖かい日でもワイシャツの袖口のボタンを留めるのに時間が掛かり、それで若い頃からカフスボタンを愛用していたりするのですが、手が悴むともう全くお手上げで、カフスボタンさえ誰かにお願いしたくなります。
ここ10年は単身赴任生活ですので助けてもらう同居者もなく、口やらアゴやらを総動員してボタンを留めてから出勤している次第です。
どのくらい不自由かというと、左手の握力が約8kgですね。
健常な右手でも約30kgしかありませんので男性としては極めて非力な方ですが、それにしても握力が10kgないと、日常生活のいろんな場面で不便が生じます。
具体的には、そうですね、名古屋駅構内で大好きな『立ち食いきしめん』を食べるのに、丼を左手で持ち上げられないのでカウンターに置いたまま『犬食い』しなければならないとか、朝晩の歯磨きで左手でチューブを絞れないので右手に持ち替えてペーストを絞ってまた右手に歯ブラシを持ち直すとか…
あと小さ目の手袋は右手のを外す時に歯で引っ張るとか、クルマの助手席側のスイッチ類を左手で操作しにくいとか…
通常の握力があれば想像もつかないことと毎日闘っています。もうかれこれ35年以上もやっていますので、すっかり慣れましたが。
思い起こせば、左手の筋力低下に気付いたのは高校生の頃。
アコースティックギターをやっていると、『Fの壁』といって左手の人差し指で6本の弦を一気に抑える難関があるのですが、それがなかなか克服できない。
尤も、過半の初心者がそこで挫折しているのであまり気にはしませんでしたが、そのうち、冬場になると簡単なコードを押さえることさえ苦労していることに気付きました。
20歳を超えて、上記に述べたような日常生活上の不便が増えてきたことから、1986年に大阪の某公立大学病院に相談。
病院でもよく分からない為に2週間の検査入院で、造影剤を使ったレントゲンや筋生検などいろんな検査を繰り返しましたが、結果として言われたのが、『ヒラヤマ病と思われる』という診断でした。
『それ、なんですの?』
と尋ねるも、
『少し前に平山先生という方が発見した新しい筋委縮で、症例が発表されただけで詳細は分かっていない』とのこと。
インターネットもない時代、それ以上の情報を得る術はありませんでした。
その後、月日は流れ、インターネットが一般に普及し始めた2000年、35歳の頃に思い出したようにネットに『ひらやまびょう』と打ち込んで検索してみました。
なんと、日本で1軒だけ(当時)、『平山病』を取り扱っている病院が東京にあって、しかもそれを発見・命名された平山恵造先生が非常勤で週1回、診察に来られています!
『完全予約制』で特別診断料3万円、しかも当時は福岡市に住んでいましたが、有給休暇を取って飛行機で飛んでいきました。
平山先生は当時で既に70歳を超えていらっしゃいましたが、私の左腕を触診し、これまでの経緯や現在の状況を聴くと静かにひとこと、『平山病ですね…』
『で、先生、今からでも治るんでしょうか?』
『いや、私が発見してから30年以上ですが、まだ治療法がない。中高生など若い方ならコルセット等で軽減できますが、貴方の場合は成人してから進行していないので現時点では放置するしか…』
失意のまま福岡に戻りましたが、そこに飛び込んできたのが『アリス復活』!
数十年振りにギターを取り出し、リハビリかたがたギター練習に励む日々…
そして、親父バンドのメンバーも見つかり特訓を重ねて、なんとか簡単なコードは弾けるまでに復活!
それから数年は、『アリス・トリビュートバンド』の底辺の1つとして、拙いギターで活動することができました。
ただその後、親父バンドで演奏する機会を失くして10数年、またもや握力が落ち、不便な生活に舞い戻ってしまった昨今です。
今回、久々に改めて『平山病』を検索してみて気付いたこと。
数年前に比べて明らかに記事数が激増し、取り扱っている病院も各都府県ごとくらいに増えていて、しかも平山病専門のリハビリジムもできている!
ただ、依然として治療法は確立されないままです。
私が初めて聞いた時の名称は『後天性一側性上腕筋萎縮症』だったと思いますが、現在の正式名称は『若年性一側上肢筋萎縮症』。
特徴としては
① 若年男子、主に思春期に於ける発症
② 一側または両側上肢の筋萎縮ないし筋力低下
③ 寒冷時の手のかじかみ
④ 手指伸展時の震え
⑤ 数年間は進行するものの以後自然に停止する
⑥ 民族特異的で、世界中の症例の殆どが日本。稀に米・仏・蘭・印等。
とされているようです。
10万人に1人の発症率でありながらも、依然として決定的な治療法がない為、『指定難病』には至っていません。30歳頃に平山先生から聞いた『コルセット療法』も、現在では否定的な意見もあるようです。
当の平山先生はまだご存命かと思われますが、既に93歳、ご隠居されてますね。35歳の時に訪ねた病院では院長自らが平山病を診ていらっしゃるようです。
なお蛇足ながら似たような疾患として、SMA(脊髄性筋萎縮症)や ALS(筋萎縮性側索硬化症)・PLS(原発性側索硬化症)等があります。
SMAは体幹・四肢の筋力低下・萎縮を生じるもの。ALSは手足の先から・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく恐ろしい病気。
平山病は、この両者とは遺伝子観点では別のものとされています。
いずれにせよ、今から3月末くらいまでの数か月間、寒い日が続きます。
只でさえ末端冷え性ですので、手袋に使い捨てカイロ、HEATTECHのインナー類、発熱靴下等の重装備で凌いでいくしかありません。
毎年のことながら、面倒な季節ではあります。
今日も、悴んだ手のひらにホォーっと温かい吐息を吹きかけながら出勤です。