キミに伝うきっかけの、爪先。-1st Act.Ver.2.5
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そして、そこから歩いて1分。学校の前は結構な住宅街なので一軒家やアパート、マンションが多い。その一角、あたしの自宅は一つだけ角を曲がったところにある一軒家だ。
「ほんっと近い。あ、お邪魔しまーす」
秋海が驚いたような独り言も交えて口にした。
「おっじゃましまーちゅ」
「どうぞどうぞー」
あたしは2人を自宅に迎え入れ、そのまま部屋に通した後、キッチンで夕飯の準備をいていた母と少し話した後、飲み物を持って部屋に戻る。
「お待たせ」
それぞれに何種類か持ってきたペットボトルを選ばせると、秋海はミルクティー、浬はサイダーだった。なんとなく予想通り。ちなみに自分は炭酸水。
「それで?なんでこんな、今日会ったばっかりの知り合いを家に呼んだの?もしかして、なんか企んでる?」
秋海が、ミルクティーに一口つけると話し出した。
「企む?!いたずらか!?」
浬が反応するが、意外に的を外れてはいない。
「ちょっとね、二人に相談したいことがあって。もう夕方だし、話しちゃってもいいかな?」
「まあ、核心から行くのはディベートの定番、じゃなかった、常套手段?だよね。私はいいけど」
「浬は?」
「早く聴きたーいのー楽しみ楽しみ」
私はもう一口だけペットボトルに口をつけて、それをタイミングとして意を決する。
「実はね」
決した割に言葉が喉に詰まる。嫌われたら嫌だ、と言う友達の少ない人間特有のマイナス思考が顔を覗かせる。しかし、ここまで勢いで自分の部屋まで来てもらって、その主催者が怯むわけにはいかない。
「部活、作らない?って思って」
「部活?」
「何部?やってることバラバラやんけー」
「そう。そうなんだけど、だからこそお互いに刺激し合えることもあるんじゃないかなって思って」
「結可は?なんかあるんだっけ。そう言えば」
「あたしは……別に今は明確じゃない。けど、だから、あんな風にはっきり言える二人に憧れた、と、言うか。まだほんの数十分。ほんとに少しの時間だけど、なんか不思議と思ったんだよね。夕日が好きな人とならなんかやれないかなって。どう思う?もしオーケーなら、あたし、創部届書く」
「ふーん……」
「なんか楽しそうだな!な!」
「……うーん」
「秋海は、なんか疑問?」
「……疑問っていうか、不安?」
「なんで?」
「それやるとしたら私は其の部活で何やるの?」
「あ、ああ、そうか、活動内容話してなかったね。ごめん」
「いや、謝ることじゃないけど、なんか見えてるなら聴きたいし、そうじゃないななら話し合いたい」
「一個ある」
「ほほう。聞こうじゃないか」
「……あたしは、2人から刺激もらって、何かを探したい。2人みたいに『これが自分の夢です』って言い切れるくらいの何かを。でも2人はあるじゃん。だから、まずはその……秋海と浬の手助けをしてみたい。後ろ支えというか…なんか、そう言うの。を、しながら邪魔にならない程度にちょこちょこ関わってもみたい。2人がやっていることって、あたしの知らない世界のことだから。勉強させてもらって、経験させてもらって外側からじゃないとわからないことを、アドバイスとかできたらなぁとか。それで2人が夢叶える力に少しでもなれればなぁって」
あたしは、そういうタイミングをずっと探していたんだろう。
「……ふーん。具体的にはなんかあるの?もう」
「それはごめん。さっき思いついた話で、なんか話さずにはいられなかったから話しちゃったんだ今。
だから、もしやるんだったら巻き込んじゃう2人とも考えたいって思って、勝手に決めつけてはいない」
「……なるほど……うーん。浬はどう…」
「え?あっきーまじ?それ訊く?あいめっちゃやりたいんだけど。どちゃくそ楽しそう」
そう、秋海を遮って浬が意見すると、少しだけ何か思ったように秋海があたしをみる。
「……ひとつ、言いたいんだけど」
「…何?」
秋海が真顔であたしに告げてきた。
「この3人でできることってなんだと思ってる?」
どうやら真剣だ。目線からは突き抜けるような意思力が見えた。
「……未来に……」
「うん」
「ぬ?」
「……未来に、一歩踏み出す。踏み出すときはつま先が先頭。そのきっかけになるようなつま先を、前に進ませる。そんなことっていうのは、想像にある。あたしは違うけど、夢持ってる2人ならできる。けど、一人だと辛いんじゃないかなって。折れた時に誰にも頼れなくて、一人で落ち込んで、折れていくぐらいなら、みんなでやろうって」
「もうひとつ質問」
「ん。いくつでも」
改めた秋海に、あたしは向き直る。
「なんで、あたしたち3人?さっき知り合ったばっかりじゃん?」
「そう。だからできることあると思うんだ。まだわからない。だからこそ決まってない。なら、それをみんなで探ることも2人の夢の糧になるんじゃないかなって」
「結可の夢の糧にはならないの?」
「なると思うよ、もちろん。でももう夢が具体的になってる2人より、あたしは何歩も後ろにいるわけだからさ。だからこういう機会を得て、自分のためにもしたいと思う。あと…」
「あと?」
「……夕日が好きな2人に、惹かれたから」
一瞬、空間から音が消える。
秋海は少し目線を落として考え込んでる様子。浬はあたしたち2人の様子を伺っているようだ。テンション高いキャラクターのくせに、しっかりと人は見ている。
ほんのちょっぴり気まずくなって、あたしは発した。
「浬は、今のあたしの話、どう?」
「めちゃいいと思う。スンバラしいスピーチ。ゆいかっちはあたまいいよなーって思った。それに、どうなっていくかわからないことって、物語の道筋探ってるみたい。あいは楽しいと思う……けどー……?」
「ねえ秋海。どう、かな」
あたしは、視線を落とした秋海に問いを投げる。
「……いや。うん。あまりにも結可が壮大なスピーチをするのでいうタイミング逃したな……」
「え?なに?」
「や、最初っから思ってたんだけどさ……それこそ部活作らない?ぐらいからね」
「……うん。何」
「けど、結可の話を聴きたいから仕掛けたところもあるけど……あのさ」
「うん」
「……最初っから大賛成。残りの高校生活2年ぐらいだけど、3人でめちゃくちゃに盛り上げよう!」
「………ありがとう」
「あっきー絶対小説書いたほうがいいよこの告白はずるー!絶対ずる!ダメでしょ!ほら!ゆいかっちグッときてるよ!泣いてはないけど!泣いてはないけど!」
ホッとして緩んだ顔が、浬にはそう見えたのだろう。
「…よし。じゃあ」
と、あたしは切り出してみた。
「明日からGW。みんな予定は?」
「妄想して書くだけーーーーーーーーー」
「私はちょいちょいレッスンあるけど」
「レッスン?」
「うん。ドラムとDTMの授業受けてて」
「すごいじゃん」
「すごくないよ。まだまだ。で?」
「ああ、創部届さ、人数が人数だから、同好会なんだろうけど、いずれにしろ書かなきゃいけなくて。それを連休明けに出したいんだよね」
「みんなで相談する?」
「できれば。予定どう?」
「あっしはいつでもOKっす姉御」
「……私は金曜日、連休三日目なら大丈夫かな」
「わかった。場所ここがいい?学校?」
「ゆいかっちがいいならここでいーんではー?」
「うん。私も結可がいいなら問題ない。家も遠くはないしね」
「浬も遠くない?」
「じぇんじぇん」
「じゃあ、時間とか決めちゃおう」
さあ、始めるぞ。未来へのつま先。
基本的に物語を作ることしか考えていないしがないアマチュアの文章書きです。(自分で小説書きとか作家とか言えません怖くて)どう届けたいという気持ちはもちろんありますけど、皆さんの受け取りたい形にフィットしてればいいなと。yogiboみたいにw