"となりと、となり。"2-いつかから。
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あたしが太紀に初めて会ったのは高校一年生の時だった。
最初はお互いに対して印象に残るような間柄ではなかったのだけれど、あたしと同じ中学から進学した、対人能力の高い友人がやたらにクラスメイトに声をかけ、一定のグループができた時にその中に太紀もいた。
それからずっとグループもあって、友達で、偶然にも学部こそ違えど同じ大学への進学が決まり、進学。あたしは文学部で、太紀は工学部だった。そういえば、当時はブログとか小説を書いていたりもした。古着にハマったりもしたっけ。
もちろん県外に進学した友人もいたけれど、お盆とかお正月とか地元に帰省してくるといまだにメンバーほぼ変わらずに集まっている。結婚してる友人もいるし、子供がいる子だっている。けれど、そのグループ自体はなぜか解散していない。なかなか絆は強いのだろうと思う。
大学二年の時に、別にそんなに意識もしていなかったんだけれど、学内でも二人で会う機会が増えた。そうしたらなんとなくそんな雰囲気になってくるのは、自然だったのかもしれない。
そうしてある日夏休開始の前日、彼からの告白を受け入れた。
それから大学在学中は、なんて事のない普通の学生同士の恋愛だった。二人の学食を楽しんだり、遊びに行ったり、旅行に行ったりもした。そういえば二人でUSJにも行ったなぁ。
東京まで行ったこともあった。そこで彼は、東京に魅せられたようで、大学卒業と同時に彼は上京した。
あたしは地元で、観光系の会社の会社員をやりながら、時々芸能的ことをやっている。基本的には写真とか、ローカルCMとかだ。会社の人に見たよとか言われると、かなり恥ずかしい。ならやらなきゃいいのにね。けれど、何かしら、形に残ることがしたかった。それによって、誰かが何かを作ろうとか、感想を持ってくれることが嬉しかったのが本当のところだ。そこまで売れたいとかそういう野望があるわけじゃない。
だから思うけれど、このまま会社を続けて、誰かと結婚して家庭に入るのかな、という想定が出てきた。高校の時のグループの他にも、同級生に一旦結婚ラッシュ的なことも起こっている24歳になったばかりの10月も下旬。社会人としてはまだまだ未熟だけど、それでもそんなことは考えたりする。
そして、東京で働く彼に、それを願うのは難しい。夢をちゃんと持って上京した彼の、重荷になりたくないと思ったのだ。
あたしがいることで、彼の選択肢を減らしてしまうことが、恐怖でしかないんだもん。