キミに伝うきっかけの、爪先。-2nd Act.Ver.1.1.7.01
=2nd Act.Ver.1.1.7.01======================
「行ってらっしゃーい」
と、職員室やら他の部活に向かう2人を送り出す。
1人になったぼくはPCの起動を確認して、テキストエディタに手元のポータブル用エディタで書いたものをコピーする。なんとWi-Fiまで完備されていたので通信は無線で可能な状態だ。至れり尽くせりだなぁこの部活。
少し時間がかかるようなインジケータが表示されたので、ぼくは順調に進むようにそれらを放置して、一回席を立ち窓際に向かって窓を開けた。そういえば休みも換気してなかった。てへぺろ。
「あーなまぬるーい」
頭の中で、次のシーンの構想を思い出す。苦手な告白シーンだ。最近はテンポを重視してあまり長くないお話に絞っているけど、それでもやっぱり重要なシーンは存在する。すれ違いまくった2人の告白シーン中は絶対必要だし。大体30000文字から70000文字くらいに収めるようにしていると、骨格みたいなものが明確で、長編を書くにも役に立つ気がしている。もう少し続けて、何かわかればまた長編を描きたいなぁと思うけど。今は修行のタイミングだ。長編癖が疼くけど。短編だと心理描写がなぁ、と、全開した窓から吹き込む少し温い5月の風を浴びながら思う。しばらくそうして外の風景を眺めながら見渡せる範囲のいろんな人や車、建物や植物を観察してみると意外と面白い。この風景をこの角度から眺めるのは初めてなこともあるんだろうな。
と、そんなふうにPCの作業完了を待っていると、部室の扉のドアがノックされた。
「失礼しまーす」
「はい?…あれま、空衣くん」
返事をしつつ反対側にある一口に向き直りそちらに向かうが、扉は来訪者によって開けられた。
「はい。あれ、浬さん1人ですか?」
「うん。2人は秋海さんの計画の件で吹奏楽部とか行ってるー。さっき出てって一時間くらいって言ってたから、5時過ぎには戻るんじゃないかなぁ?結可さんに用?」
「あ、いえ。まだちゃんと決まってないみたいですけど、一応体験入部状態みたいなので、一応部室に行こうかなぁと」
「ああ!そっかそっか。まあじゃ、遠慮なくどぞどぞー」
と、部員ヅラして招き入れた。
「失礼します。浬さん、書いてたんですか?」
「あ、今はPCと普段持ち歩いてるメモパッドデバイスの同期をさせてたのだ。もう少しで終わりそう。空衣くん何する?」
「浬さん書くなら、次のジオラマのラフスケッチでもやろうかなぁと」
といいながら、中央の円卓にカバンを置いて中から少し小さめのスケッチブックと何やら大量のペンが入っているように見えるペンケースを取り出した。
「お?スケッチから起こすんだもんね。この間部屋で見せてもらったみたいなやつか。ペンすごい量」
「そうです。ちょうど窓もあるし、どっか切り取ってみるのもありだなと。色も再現するとなるとこのくらいないと無理なんですよね」
「へぇ。すごいなぁ。そんじゃお話でもいいかなもって思ったけど、一回作業しよか!」
「え、お話でもいいんですか?」
「いいよ?書くだけなら家でもできるし。誰もいないから描こうかなーって。あ、でも構想とかまとめながらとかでもいいかもかも」
「じゃあ、自分の机じゃなくて円卓でぼんやり話しながらやりません?」
と、空衣くんが提案してきた。
「いいね!なんか部活って感じ」
「2人きりですけどね」
……ぬ。