俳句 朝顔につるべとられてもらひ水
この俳句は加賀の千代女の作で、お気に入りの一句です。
加賀の千代女)は、1703年加賀国松任、現在の石川県白山市に表具屋の娘として生まれました。幼い頃から父が集めた書画に囲まれて育ち、6歳の頃にはすでに俳句を詠んでいたと伝わっています。17歳のときに松尾芭蕉の弟子であった各務支考に俳句の才能を認められ、千代女は俳句の創作に打ち込みます。1775年に73歳で亡くなる直前まで俳句の創作に励み、現在までに約1900句が確認されています。
この句の情景は、朝、井戸の前で水を汲もうとするとつるべの縄に朝顔のつるが巻き付いています。あらまあきれいとおもってお隣さんに水をもらいに行くことになった。といったところでしょうか。なんとも微笑ましい光景ですね。
さて、つるべと言えば笑福亭鶴瓶さんですが、つるべ(釣瓶)とは、井戸で水を汲み上げるために使われる道具のことで、桶を縄の先にとりつけたものを滑車に掛けて使用するものです。私などは釣瓶を使った最後の世代ではないでしょうか。畑に釣瓶がありました。水をくむときの縄さばきには意外とコツがいります。
この句には
朝顔につるべとられてもらひ水
のほかに
朝顔やつるべとられてもらひ水
となっているものがあります。
どうやら、千代女の直筆に「朝顔や」と書かれているものがあるようです。個人的には「や」の方が歯切れがいいように感じます。
さて、現在、朝顔と言えば夏の代名詞ですが、秋の季語になっています。このへんは新暦と旧暦のずれなのでしょうか。注意が必要です。
鈴木大拙は、『禅』のなかで
「彼女がいかに深く、いかに徹底して、この世のものならぬ花の美しさに打たれたかは、彼女が手桶から蔓をはずそうとしなかった事実によってうなずかれる」
と評価しているようです。
これも生活の中に生きる禅の一つなんですね。
もうすぐ九州も梅雨に入ります。
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