マーケから人事になった自分が採用の改善を回す前に考えたこと
採用業務は、リードタイムが長く、属人的な判断が入りがちな業務ので、定量データを見て改善を回しづらい職能。
と、Webマーケティング職種から人事に来て感じている、株式会社プレックスの平井です。
ただし、改善を回しづらいとはいえ、経営層からは「早く良い人を採用してほしい」と言われ、現場メンバーからは「採用した人が活躍しない」など、採用競争の激化により、社内で板挟みになっている人事の方も多いかと思います。
迅速な採用の改善が求められる背景から、人事の方のお話を聞くと、具体的な施策や事例の話を求めている方が多い印象を受けます。
しかし、話を聞くと、そもそも改善を回すための前提の考え方が分からないケースが多いようにお見受けいたしました。
そこで今回は、採用の施策や改善を回す前に考えるべき、整えるべきことをまとめてみました。
※採用候補者のペルソナを作る的な内容は多く語られているところですので、そこは他の記事を参考にしてください
採用の改善が回らないときに不足している考え方
採用にも、データ分析的な文脈が浸透してきた気がしますが、そのデータを活かした改善まで進んでいる企業は少ない印象です。
改善が進められない理由は、下記の考え方が不足しているケースが多いです。
これら5つの観点を説明していきます。
どういう要因が採用に影響を与えるか
何かしらの結果は、ある結果に至るまで様々な要因によって揺れ動き、ある結果にたどり着きます。
採用や内定という結果も、1次面接のコミュニケーションやメールの返信スピード、オフィスの綺麗さ、受付の対応、社長の魅力、給与、オファー面談のメンバーとの会話などなど、採用過程における様々な要因によって引き起こされます。
例えに使われがちな恋愛で例えると、「意中の人と付き合う」という結果も、無数の要因の結果です。
上記以外にも、ここには書ききれない要因が絡み合い、連なり合い、付き合うという結果にたどり着きます。
もちろん、採用にも同じことが言えます。
「書類選考の通過率が下がった」、という結果は「書類通過の基準を厳しくした」「応募ハードルを下げた」など直接的な要因だけでなく、「エージェントが求職者への打ち出し方を変えた」とか「産業の成長性がメディアに取り上げられ、安定志向の応募者が増えた」とかが影響しているかもしれません。
この「要因を認識する」のが重要な理由は、「意思決定の精度を上げるため」です。
企業で何かしらの活動をするとコストがかかります。そのため、最小のコストで、最短で、最大の成果を得る道を選択し続けるのがベストです。
どこに人と金を投資するのか、という判断をするときの精度は、要因認識の広さと深さが大きく影響します。
そして、採用活動における要因について、最も詳しくあるべきが人事という役割です。
人事とは、「人事領域において、リソースを投下しリターンを得る意思決定をするために必要な情報を集め、経営陣や事業側に対して投資する意思決定の根拠を説明し、使えるリソースを投資し、投資以上の成果を出す責任を負っている」とも言えます。
そのため、採用のチャネルごと、施策ごと、面接官ごと、職種ごとなどそれぞれの要因を把握しておくと、「どこにリソースを投資すると、最もリターンを得られるか」を説明、実行出来るようになります。
要因ごとの、結果への影響力、起こる回数、コントロールする余地がどのくらいか
要因を深く考え始めると、無数な要因があり、何から手をつければ良いのか分からず動けなくなってしまいます。
そこで、それぞれの要因の結果への影響の大きさ(影響力)と起こる回数がどのくらい多いか(頻度)、自分でコントロール出来る余地がどのくらいあるのか(可変度)を考えます。
またまた恋愛のシチュエーションに例えると、
という、お相手と付き合いたいとしましょう。
先程上げた「付き合うまでの要因」は色々ありますが、この相手の場合、それぞれの要因の影響力と頻度と可変度は下記でしょうか。
表を見てみると、すぐにでも改善すると「付き合う」に近づきそうな要因と、後回しでもよさそうな要因があります。
この様に、要因(状況や相手も要因の1つ)によって頻度や可変度合いが変わります。それらを目的に応じて臨機応変に見極めて行く必要があります。
要因を洗い出した上で、重要度を理解すると、改善する優先度がわかってきます。
定量、定性データを取得する環境があるか
優先度が高い要因に対して施策を打つ前に用意して置かなければならないのは、それを検証する土台です。
何かしら施策を打っても振り返られないと、再現性がなく、引き続き投資すべきかどうかの意思決定が行なえません。
HRMOSやHERPなどのATSを導入していれば、定量に関しては基本的に見えます。ちなみに、自分はkintone推しです。
しかし、忘れられがちなのが定性の振り返りです。
数値上は向上したように見えても、質が下がっていては意味がありません。
例えば、書類通過率を20%上がりました!となっても、単純に採用ハードルを下げただけでは、1次面接の工数が増えてしまい、トータルでは人件費分マイナスになります。
採用における最終目標は「採用後、パフォーマンスを発揮すること」であるはずなので、部分的にKPIを最適化するのは悪手です。
特に採用は、「コミュニケーション」と「複数の人が関与する」という定性的な要因が、結果までの過程に多くに含まれます。
そのため、定性的な情報をメモで残す、定量で取れるようにするなどの事前設計が重要になります。
恋愛で例えるなら、「LINEを100回送った!」とか「50,000円のバッグ買った!」とかだけを意識していては、「ダメだったのは、LINEの回数が少なかったからだからLINEを200回送る」とか「100,000円のバッグを買う」などの目的達成からズレた改善に向かってしまいます。
実際は、送ったLINEのテンションや駆け引きだったり、どういうデザインや雰囲気のバッグなのかを把握するのも重要ですよね。
採用チャネルの特性は自社に合っているか
「定量、定性データの取得環境整備」と同じく、改善施策を打つ前にやっておきたいのが、採用チャネルの特性理解です。
リファラル、スカウト、媒体、エージェント、副業マッチング、SNSなど、採用を行うチャネルやプラットフォームは多数存在しています。
チャネルにはそれぞれ、下記の観点があります。
これを理解しないまま施策を進めると、少ない候補者を多数の企業で取り合ってしまったり、自社にマッチしない候補者の対応でコストがかさんだりしてしまいます。
流行っているから!といったように安直に採用チャネルを決めるのではなく、他社の情報を取り入れつつ、自社のリソースやビジネスモデルだったら...。と、アナロジー取れるところを取るようにするのが超重要です。
恋愛でも、運動している人が好みなら、運動系の社会人サークルに入ったり、マッチングアプリで趣味をスポーツにして検索するほうが、好みの人に巡り会える確率と頻度は高くなりそうですよね。
自社の転職市場における「採用力」の相対的な立ち位置はどうか
採用の要因を理解し、その影響の大きさを整理し、データを取得する環境を整備し、チャネルの特性も理解してきました。
あとは、「転職市場からみて自社がどう見ているのか」を整理していきます。
採用力というのは社内造語なんですが、「転職市場における、採用候補者から見たときに入社したいと思える魅力と、その魅力を伝達する能力」みたいなイメージです。
現在の転職は、優秀な人ほど引く手あまたで複数社から声がかかっていたり、自社でも重宝されていたり、独立/フリーランスを検討していたりと、何かしらの比較対象がいます。
仮に採用プロセスを改善する施策を思いついたとしても、自社の魅力が他と比較して圧倒的に劣っていたり、採用候補者に伝わらなければ、改善施策を打っても改善するのは難しいです。
そこで、採用候補者にとって自社の魅力はどういうポイントなのか、その魅力は他社と比較して強いのか、採用候補者に伝わっているのかなどを、ヒアリングやワークショップするなどして整理します。
ちなみに、自社の魅力は、入社歴が長くなると当たり前になって気づきづらいので、入社歴が浅い方や退職した人に聞くと良いインプットが入ります。
恋愛で考えてみると、歌が上手いが運動は得意じゃない人は、カラオケデートを選んで魅力を打ち出すべきですし、歌が下手で運動が得意な人は、一緒にスポーツをして魅力を打ち出す方が、他と比較されたときも自分の魅力が相対的に高く評価されそうですよね。
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まとめ
ここまでで紹介してきた、下記5つの観点がハッキリすると、どういうフィールドで、どういう戦い方を、どのくらいのリソースを投下するべきなのかが見えてきます。
採用の改善に悩んだら、この観点を文字や図に書き出して整理してみると、本来の課題や改善すべき点が見つかるかもしれません。
定量データの整備の仕方については、下記記事も参考になるかも知れません。
次の記事では、具体的に改善を回す時の考え方について執筆してきます。