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音楽家がショスタコーヴィチから学ぶ事5選!
はじめに
音楽史というのは「史実を正確に学ぶ」ことが目的ではありません。史実とされていることを受けて自分の音楽人生にどのように反映させるかが大切です。私達藝大生は複数の歴史書を暗記していますが、有名歴史書同士でそう反する内容もあるものです。ここを議論する人達はただの歴史好きであり、音楽家ではありませんし、私達音楽家が議論する相手ではありません。
音楽家の皆さん、歴史をご自身の音楽人生に取り入れてください。
以下は拙著からの抜粋です。この記事が気に入って頂けましたら是非本書を手に取ってお読み頂けますと嬉しいです。最下段にリンクをご用意します
ショスタコーヴィチから学ぶことの一つ目は「技術的な社会服従」です。
ショスタコーヴィチほど社会情勢や政治的背景のウンチクを書きたくなる作曲家はいません。ここをグッと抑えて結論だけを述べます。ソ連政府が政治的に都合の悪いオペラを批判して、作曲家のショスタコーヴィチまで批判したのです。これにより他の作曲家は他国に亡命したりしました。しかし、ショスタコーヴィチは「はいはい、政治に都合の良い音楽書けばいいのね。その都合の悪いオペラは封印しますね。今書いていた《交響曲第四番》もヤバそうなので演奏しませんからね。次の《交響曲第五番》を書きますからね」という感じで音楽技術で従ったのです。政治的に良い曲だという賞までゲットします。そして、その政治が崩壊したら「はい、もういいね」という感じで、封印していたオペラを名前を変えて演奏したり、演奏していなかった《交響曲第四番》を発表したりしました。国家単位でイジメの対象になっていた音楽家一人が「技術的な社会服従」により、人生単位で「実の勝利」を得ているのは勇気付けられます。
ショスタコーヴィチから学ぶことの二つ目は「モダニズムとリアリズム」です。
モダニズムの定義は難しいのですが、「当時の最新の感覚に合わせた音楽」というイメージで捉えてください。これがソ連的にまずいので批判対象になったのです。裏を返せばスターリンがビビってしまうほど、見事にモダニズムを音楽に取り入れていたということです。そして、批判されたらその真逆である社会主義リアリズムを音楽に取り入れた作品を作りました。対極にあるモダニズムとリアリズムが一人の作曲家から学べるのはショスタコーヴィチだけではないでしょうか。先述の《交響曲第四番》と《交響曲第五番》の比較はもちろんのこと、オペラ《鼻》とオラトリオ《森の歌》の比較をすると音楽に詳しくない人でも違いがわかると思います。
ショスタコーヴィチから学ぶことの三つ目は「名前の音楽的利用」です。
名前の音楽的利用はバッハの時代から多くの作曲家がやっています。自分の名前の一部をアルファベットで音名にしてそれを主題に使うという方法です。BACHは文字通りB音、A音、C音、H音になります。ショスタコーヴィチは自分の長い名前から都合の良いDSCHを取り、D音、E♭音、C音、H音の音型にしました。ドイツ語ではE♭をEsと書いて「エス」と読むため、SをE♭音にしたのです。読者の方もご自身の名前の音型を作ってみてはいかがでしょうか。
ショスタコーヴィチから学ぶことの四つ目は「他民族音楽の利用」です。
ショスタコーヴィチはロシア人ですが、ユダヤ音楽に傾倒し自身の音楽に取り入れています。他民族の文化や音楽への憧れはいつの時代のどの作曲家も持っているものです。時代は第二次世界大戦です。この時代の他民族の悲運を共感し、芸術に取り入れる姿勢は見習いたい部分です。
ショスタコーヴィチから学ぶことの五つ目は「探究心」です。
ロシアからソ連になり、スターリンからの批判対象になり、二回の世界大戦を経て還暦を過ぎた頃・・・・・・ 新しい音楽を探究したのです。「激動の時代が作った音楽家」と言われることが多いのですが、「激動の時代に探究心を失わなかった音楽家」としても見習うべきではないでしょうか。
まとめ
この記事が皆さんの音楽人生を変えるきっかけになれば嬉しいです。
津本幸司
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