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令和五年十一月廿三日 桃月庵黒酒落語会『土産噺』於・亀戸梅屋敷

お伊勢参りの話とお伊勢参り中に稽古した噺をやるという会。
たくさんご来場いただき本当に嬉しい限り。
ただこれは話題性一本勝負みたいなところが大いにあります。
いつかは実力で落語を聴いてもらえるように精進いたします。

◎二人旅
歩いて旅をしたんだし、これはやらないとなぁ、という二人旅。
本当はもっと味わい深くやりたかったんですが、お客さんがいっぱいで「笑ってもらいたい!」と思いすぎてしまいました。
この辺の不安定さは、やり慣れていないネタならではですね。
寄席でよくかけていれば、稽古通りにできるのではないでしょうか。
旅の成果は……うーん。

この噺を本格的にやるのであれば、歩いて旅をした人間ならではのやり取りを考えたいところですが、私の今の時期にそこまでやる意味はあるのか? という。
なので、これは歳をとってからの楽しみにしましょうかね。

しかし、昔は江戸からでも富士山が見られたんですね。
前座の頃にやっていた時は何も感じずやってました。

そして、煮売屋の婆さんが鯨汁を注文されて、買い出しの為、
「紀州の熊野の浦まで36里」
と言っていますね。
和歌山県の熊野まで約140キロかかるということは、二人は伊勢街道辺りにいるのでしょうか。
とすると、この旅は江戸からのお伊勢参りじゃないですね。
上方から移植された噺なので、大坂からお伊勢さんへの道中なのでしょう。

と、噺の事を深く考えるようになったのは旅の成果かもしれません。

◎くしゃみ講釈
お伊勢参りの旅の途中から稽古を始めて、11/22になんとなく「覚えられたか?」とXでネタ下ろし宣言。
出来はというと、まぁ、たっぷりお客さんに甘えた形です。
前半いくつか抜けて、後半の講釈はそっくり抜けました。
「八丁迷惑行き戻り」、好きなんですけどね。

言い訳をすると(するなよ)
旅日記での不満を発散させたくて、あれも言いたいこれも言いたいとやっているうちに稽古が疎かになってしまったからでしょうか。
なんかフツフツとたぎって集中できない。
「他人が言うことなんて気にしなきゃいいのに」
とは言われますが、若者がSNSの他人の言葉で命の火を消す時代です。
気にしない、で済む話ですかね。
やっぱり私は、何か言ってくる方が変だと思います。
『気にしない』まで持ってくのも結構なパワーがいりますし。
私は高座で発散できましたが、世間の若者はどうしているんだろう?

と、心配になるのは、旅の成果でしょうか。

◎黄金餅
お伊勢参り中に覚えた噺。
お伊勢参りをしながら、文字通り神も仏もないような噺を稽古するのが『芸人っぽい』と思ったんですよね。
いや『江戸っ子っぽい』かな。

また、「黄金餅なんて最近は『滅多に聴けない噺』じゃないか?」と、珍しさで勝負をしたところもあるんですが、調べてみると九月の後半あたりから色々な師匠が黄金餅を手掛けていて、『最近よく聴く噺』になってしまいました。(御利益ねぇな)
勿論、師匠方と自分の芸を比べるなんて馬鹿なことしませんが、でも聴く方には関係なくて、やはり比べられちゃいますね。
また、私なんかは教えてくれた師匠の色が結構残るので、
「白酒と比べて」「国宝と比べて」「教わったとされる○○師匠と比べて」
がすこぶる多いです。
まぁ、気にしなきゃいいんですけどね。
比べられないくらい個性があればなぁと思います。

今回、黄金餅をやるにあたって、黄金餅の『陽気バージョン』と『陰気バージョン』を用意しました。
で、お客さんの雰囲気を見てどっちをやるか決めようと思ったんですが、結果そんな器用な事できるわけもなく、両方が混ざって、金兵衛さんが多重人格みたいになってしまいました。
までも、それはそれでサイコパスっぽくて、突き詰めるのも面白いかなと思ったり。

あとアドリブが多めで、正式採用してもいいくすぐりが咄嗟に出てきて驚きました。



さて、全体を通して噺の出来はいつもより良くなかったんですが、
土産話のプレミアム感や、お客さんの暖かさもあって、結果的に上手く着地できた感じです。
ただただ噺を三席やる会でこの出来だったらと思うとゾッとします。

で、『土産噺』を終えて、少し仮眠をとって、それから今これを書いてるんですが、
何故だかわかりますかね?(現在11/24午前2:10)

達成感があるんですよ。
今。
ただ会を終えただけの達成感じゃないです。
旅の終わりは今日だったのかもしれません。
ぶつくさ。

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