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令和六年十二月廿一日『第十回 黒酒ひとり』於・なかの芸能小劇場
2024年1月から始めた黒酒ひとりも、ほぼ毎月開催で早くも第十回。
最初は右も左も分からない中、やる気だけで我武者羅に突っ走ってえらい目にあった。
隔月開催にしてしっかり準備して臨んだ方が良かったんじゃないか? とは思う。
ただのマイナスプロモーションみたいな回もあった。
ずっと何かに追われて評価の付いてこない苦しい一年だった。
◎つる
分かったことがある。
それは、『落語の良し悪しは体調に依るところが5割』ということ。
どんなに稽古をしても寝不足だとか食べ過ぎで苦しい時は上手くいかない。
黒酒ひとりは上手くいかない事が多くて、振り返るとやはり、
気合を入れ過ぎて夜遅くまで稽古をして、ストレスで暴飲暴食して、頭が働いてない。
というわけで今回は体調管理を第一に、噺に不安要素があっても稽古は早めに切り上げしっかり寝た。
その甲斐あって、本番はそこそこの体調。
不安要素なんて体調が良ければあっさり対処できる。
ここ最近、数回やった【つる】の中では一番良かった。
噺半分黒酒半分。
マクラも何も考えず勝手に口が回った。
◎加賀の千代
毎年暮れに一回だけやる噺。
朝早起きして、二回ぐらい台本読んで本番に臨んだ。
やってて、『つると似てる噺だなぁ』とは思いつつも、後半のしじみ売りの為に、
落語の楽しい暮れを喋っておきたかった。
まぁ、ちょいと頭でセリフを追って爆発力に欠けた。
◎しじみ売り
「2024年の集大成」とか「これだけ聴けば2024の黒酒がわかる」とか、
とりあえずハードルだけ上げまくった。
逃げ場を断つというか。
そうして臨んだ白鳥版しじみ売り。
何が大変って台本作り。
「みんなに言っていることだけど、俺の噺は俺と同じようにやらないでくれ」
と言われていたので、色々と本に手を加えさせていただいた。
頂戴した台本は結構自由で、年代は1700年前後で綱吉の時代。
だけど鼠小僧は1800年代の人物だったりする。
時代考証はあまり意味ないのだけれど、取り敢えずその辺りを正しくして、ギャグやカタカナを抜いて当時の言葉に変えて、噺の進行の仕方を所謂『世話物』に書き換えて、師匠のテンポで喋っても50分強あるのでこれを15分くらい短くして、書き換えるだけじゃ意味がないので要素も色々足して──とやっていたら、本番4日前の時点でまだ台本が完成しないという。
しかし、大変だったけど随分と勉強になった。
全ての噺にこのくらい手を加えてもいいかもしれない。
台本ができてからは3日で頭に叩き込んだ。
時間もないので「雲助師匠だったらこう喋るかな」をベースに稽古。
演ってみて、演出や演技プランをもうちょっと力入れれば良かったな、という感じ。
肚にも入り切っていないので、まだまだ伸び代がある噺だと思った。
2024年を走り切った。
準備をもっときっちり出来ていれば──とは思うが、我武者羅に走ったからこそ身についたものもあると思う。
まず、短い期間で毎回追い込まれていたこともあって、ずいぶん落語の基礎能力値が上がった。
明確に、『去年できなかったが今できるようになったモノ』が沢山ある。
落語体力もついたし手の抜き方も覚えた。
噺を覚える早さも異常なほど上がった。
これらは悠長に準備していたら身に付かなかったはずだ。
無駄じゃないし遠回りでもない。
来年以降は、会場の関係で毎月開催とはいかない。
なので必然的に準備期間も長くなる。
今年手に入れた物を無駄にせず、理想の高座を突き詰めていきたい。
ぶつくさ。