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【25日目】二ツ目の準備

令和四年四月一日。
私が二ツ目になることが落語協会から発表されてからというもの何かと
「二ツ目の準備大変でしょう?」
なんて言われた。

仕事をくれる人たち皆
「ごめんね、忙しい時期に頼んで」
と言ってくれた。

自分も、兄さん達が二ツ目になる時は
「忙しいですよね、任せてください」
なんて気を使ったりした。

ん? どういうこと?

何にも忙しくない

落語協会非公認雑誌『そろそろ』には「二ツ目の準備で忙しい時期に取材なんて〜」と皮肉めいたことを書かせてもらったが、二ツ目の準備なんてすぐに終わった。

  • 名前を決める

  • 手ぬぐいを発注する

  • 着物をこさえる

  • 出囃子を決める

  • 各所への挨拶

大体これぐらい。
自分でできること全てを終わらせるのに半月もかからなかったと思う。

じゃあ何故「大変でしょう?」と言われるのか。
内部は勿論、外部からも言われるので『二ツ目の準備は忙しいもの』という認識は相当古くから根付いているものと思われる。

「忙しい!」「大変!」と嘘をついて気を使ってもらおうとしている説

まず思ったのはこの説。
準備が大変だから、という理由で色々と楽させてもらえるからじゃないだろうか。
喚いていると誰かが「じゃあ手伝うよ」と言ってくれる。
「手ぬぐいデザインするよ」「費用は持つよ」なんて声をかけてくれる、そんな噂もある。
私は「あれ? 楽勝じゃん」と気づいたら全て自分で終わらせていた。
ちくしょう、喚けばよかった。

ちなみに「着物を作ったり手拭いを作ったりする費用が大変」という人に限って、前座とは思えないお金の使い方をしていたりするよ。

俗世から隔離されすぎたから説

この説が一番濃厚。
前座として毎日着物を着て寄席で働いているため、世の中とのコンタクトに相当の精神的負荷がかかっているんじゃないか? という説。
寄席での仕事は何年もやっているとルーティン化し、あとは師匠から言われたことをやる──そんな毎日を過ごしているからか事務作業のようなものが全くできない人が多い。
手ぬぐい製作ひとつとっても誰にどうデザインを頼めばいいか、どこで染めてもらうか、デザインをpdfで送る? はて? みたいな。
分からないことを調べながら進めていくという事が絶望的に苦手になっている状態のことを【噺家】と辞書に書いてもいいくらいだ。
生活が苦しいくせに給付金の申請が面倒くさいからやってないという仲間は何人もいた。
超受動的。
つまり、
面倒くさい→考えるのも嫌→でもやらなきゃ→忙しい
ということなのかもしれない。

まとめ

「準備が忙しい」と言っている前座がいたら、
「サボってるだけだろ!」と一喝してしていいと思います。
二ツ目の最初の方はご祝儀で仕事を頂戴することが多いけれど、それが終わったら自分主体で動かないといけないので少しは能動的になっておかないと。

おーい。
お前達に言っているぞ。


25/40 浅草演芸ホール 中日
【加賀の千代】
この芝居は夜席始まってすぐのお客さん厳しいんですけども。
心折れそうになるんですけども。
まあ頑張りました。

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