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【30日目】浅草演芸ホール十日間ありがとうございました

浅草演芸ホール、本当に大変な十日間で一際長く感じました。
毎日くたくた。
今回も振り返ります。
自分用の記録、みたいなもん。

初日【まんじゅう怖い】

前半思い切りふざけたところがワーッときたので、落語通のお客さんかな? と中盤以降は落語を聴き飽きてる人向けの変化を少し。
しかし判断を間違えたかもしれません。
どうやら落語初心者のお客さんが多かったらしい。
前半ふざけて、途中からちゃんとやるのが良かったと思います。
『浅草』という土地柄を考慮できてなかったかな? という。
これに気づくのは四日目くらい。

二日目【手紙無筆】

【二人旅】をやろうと稽古していたら夜席の洗礼。
昼に二人旅が出てしまい急遽【手紙無筆】。
出番まで急いで稽古。
落語初心者のお客さんが多く、結果手紙無筆で良かった。

そして馬石師匠から27日の『奮闘馬石の会』の出演依頼がある。
師匠のネタ出しが【万金丹】ということで【二人旅】とリレーできると思い、結果二人旅ができなくて良かった。

三日目【初天神】

新嘗祭。
【親子酒】をやる、これ以上ない日でしたが夜席の洗礼。
昼に親子酒が出てしまい急遽【初天神】。
出番まで急いで稽古。
二日連続しんどい。
ただよく笑うお子様がいらっしゃって、結果初天神で良かった。

四日目【新版三十石】

やりたいと思っていたネタを先にやられるのが怖すぎて珍しいネタで。
やってて気づいたのだけれど、どうやらこの芝居は落語初心者さんが多い。

いつも白酒のお客さんの前でばかり落語やっていることもあって『白酒と違う新版三十石』を目指してやってみた。
しかし落語初心者のお客さんには寄席向けに練られた【新版三十石】を覚えた通りにやる方が良かったかな。
ただ噺の中で「楽屋仕事なんて何の修行にもならん」と披露目の高座で言えたから結果良かった。

と、思うことにする。

中日【加賀の千代】

教えてくれた師匠曰く、
「変えていい噺と変えない方がいい噺」があって、これは変えていい噺。
後半なかなか良い感じ。
ただ前半部分がカッチリと言うことが決まっていて工夫ができない。
そこをどうするか悩んでいる。

六日目【親子酒】

土曜日で陽気なたくさんのお客さんの前で【親子酒】。
色々な工夫が入っているが全部笑っていただけて最高だった。
結果六日目に親子酒ができて良かったんじゃないだろうか。
出来の良い日はあまり振り返らない。

七日目【粗忽長屋】【二人旅】

この芝居は何か行動を起こすと「結果良かった」ことが多い気がするぞ──ということで朝の思い付きで『友達の熊さんをまともな人にする』ということをやってみた。
セリフが固まってなかったのでしどろもどろになったが結果良かった。

この噺は、抜かなきゃいけない白酒のくすぐりと後世にも伝えていきたい白酒の工夫がある。

浅草から急いで池袋へ移動して『奮闘馬石の会』で【二人旅】。
黒酒、初の助演。
馬石師匠から貰った羽織紐を付けて馬石師匠の会の世話人の方から貰った帯を締めました。

馬石師匠の演目は【ざるや】【野ざらし】【万金丹】。
私も【野ざらし】は持っているが、教わった時に「仕込みの部分がカッチリし過ぎていて工夫がしづらいんだよね」とその師匠には言われて「確かに」と思っていたのだけれど、馬石師匠は凄い工夫をしていた。
なるほどそうすればいいのか、と中日の悩みも解決した。

【万金丹】と【二人旅】のリレー。
自分でも粋なことしたと思っている。

八日目【茗荷宿】

またしても朝の思いつきで、宿屋の夫婦を老夫婦に設定変更。
セリフを大体言い換えてやってみました。
今まで2回ほど高座でかけたことがあるが、『ただ師匠の力を借りているだけ』みたいな感じで納得がいかなかったのだけれど、何となく黒く染められた気がする。
正直「こんなにウケる噺だったのか」と思った。

九日目【喧嘩長屋】

ネタおろし。
縁起を担ぐ時は【満員御礼長屋】と書きます。
もともと6分くらいの噺なので披露目じゃ無理かなと思っていたけれど、タテ前座の杏寿が「時間は気にしないでください。長くても短くても大丈夫です」というので、ひとまずサゲの仕込みと噺に繋がるマクラをサッと作って稽古して12分くらいにした。
そしたらこの日が2、3分押してて結果良かった。

しかし出来は大して良くない。
ここ数年、この噺は「お客さんが退いていくのがわかる」と白酒はやらなくなっている。(喧嘩長屋を知らない人は調べてみてね)
今なんて特に時代に合っていない。

で、こういう出来の悪い日に限って袖で色んな人が聴いている。

千穐楽【松竹梅】

本当にめでたい時にしかやらない噺。
ネタおろしは白酒の誕生日の会。
2回目が馬石師匠の文化庁芸術祭賞受賞直後の会。
3回目が自分の誕生日。
4回目がにぎわい座25周年記念雲助一門会。
5回目が今日。
長く大変な浅草を乗り越えた記念。
よく頑張りましたわ。

総括

この十日間を終えて学んだのは『工夫とは』でしょうか。

まずこんなにも落語が初めてのお客さんがいるんだということに驚きました。
で、大衆芸能である以上はそこに向けて落語をやらなきゃいけないんだろうなぁ、と思います。
二ツ目になって工夫の制限が無くなって、今まではなんとなく自分が面白がれる工夫を優先していたけどちょっと違うかも。
教わった師匠の工夫を残す、残さないについてもたくさん考えた。
馬石師匠の会でも工夫について学んだ。

だからこれはもう、成長したと思います。

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